晩秋
秋から冬へ。山の彩りも寂しくなり、本格的に冷え込む季節がまたやってきた。
寒い中、日課の散歩をしながらぽつぽつと話す。
「お前と冬を過ごすのも、もう何度目かわかんねえな」
「ええ、もう長いこと一緒にいますから」
「どうだよ、体調の方は? もうそろそろ死にそうか?」
「最近、ようやく自分の中の灯火が揺らいでいるのを感じました」
「……そうか」
もうすぐこいつは死ぬ。
あと何年生きるのか分からないが、ちゃんとオレの呪いが効いてるんだ。
「イツキ」
「なんだよ」
「私は、ずっと死にたいと思っていました。早く死にたいと思うばかりだった。それが、同じ時を過ごせるようになったことで、あなたの手を、ずっとこの先も温めていきたいと思えるようになりました」
「突然いい話にでもする気か? それなら今から決心変えて死ぬのやめるか?」
「いいえ、あなたの命は私と違ってひどく短い。あなたがいなくなれば、私はまたもとの絶望に戻ることになる。だから本当に、わがままだけれど、このまま私を殺すまで、この手を離さないでください」
「わかったよ」
「それまでは、温めていますから」
アサヒの手を、確かめるように少し強く握った。