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プロローグ


「シャーロット・ローゼンベルク侯爵令嬢、初めて会った時から一目惚れでした。どうか私と結婚してください。」


 今私は、私が愛してやまないこの国の王太子であるニコラス・グランツライヒ殿下にダンスホールの真ん中で結婚を申し込まれています。


 さぁてお返事はどういたしましょうか。


 私はただ静かにゆっくりと平和に図書館で本を読みたかっただけなのですが…………。

 まぁ、何があってもそんな人生はもう送れないのですが。


 ひとまず、こうなった経緯をゆっくりと振り返ってみましょう。


▫︎◇▫︎


 私の名前はシャーロット・ローゼンベルク、歴史のある侯爵家の長女です。

 学園での私は、婚約者の命令で長い琥珀色に染めた髪を下ろして瞳を隠しているせいで陰キャだと思われていますが、実際の髪色は銀色ですし、明るい性格です。みなさんは私が不義の子で瞳の色が髪の色同様、両親のどちらの色も受け継いでいないから隠していると思っているようですが、私の本来の容姿はお兄様とお母様と同じ銀髪に、お兄様とお父様と同じアメジストの瞳です。お父様達は私への婚約者の仕打ちに激怒していますが、私が自分で制裁を与えたいと我儘を言って我慢していただいています。


 そして、今日は私の通っている魔法学園の卒業パーティーがあるのですが、エスコートをするはずの婚約者が一向にきません。それに、今回はドレスすら送ってきませんでした。全く礼儀がなっていません。


 思えばこの11年とても長かったですわね。今日こそあちらに婚約破棄していただいて、それを倍以上にしてプラス今までの鬱憤を加えてお返しすると致しましょう。あら、口の端を自然に上がってしまいますわね。


 さぁ、お覚悟なさい!!


▫︎◇▫︎


「シャーロット・ローゼンベルク貴様との婚約は破棄する!」


 彼は私の婚約者いえ、破棄されたので元婚約者ですね。えっと、元婚約者のアイザック・アストレア様は、輝かんばかりの真っ直ぐな金髪を肩上で切り揃え、王家の証である青色の瞳、甘いマスクが堪らない学園の王子様らしいです。まぁ、実際は王子ではなく、王弟殿下の長男でアストレア公爵家の次期当主です。さっきの続きですが“らしい”というのは私にはアイザック様のイケメンっぷりというのがまったくもって分からないからです。


「おい、聞いているのか!」


 あ、返事をするのを忘れてしまいました。この荒っぽい彼の何がいいのかさっぱり分かりません。今も元婚約者に向けて卒業パーティーのダンスホールの真ん中で断罪しようとしているのですよ?誰でもいいから教えてください…。

 それにしても11年もこんなのに付き合って差し上げていたなんて、私がとても可哀想に思えてくるわね…。


 あら、そういえばお返事忘れてましたわね。


「えぇ、婚約を破棄するのでしょう?」


「あぁ!私は真実の愛を見つけた!やっと、地味で陰気臭い貴様から解放される!」


 そう言ってチェリー・マゼンタ男爵令嬢の肩を抱きます。肩上ボブのストロベリーブロンドに空色の瞳の可愛らしい小動物令嬢です。一部の令嬢からは娼婦とも呼ばれています。ですが、初めて2人が並んでいるのを見て、「あ、髪型お揃いだ~。」と無駄な事が頭に浮かびました。 お似合いではないですか~。2人の噂はずっと前から聞いていましたので、物語の中の悪役令嬢にならない様に絶対に1人で行動しない様にしていました。

 さぁ、断罪イベントがあるか分かりませんができるものならしてみなさいな~。


 倍返しにしてお返しして差し上げますから。


「貴様何でそんなに平気そうなんだ?まぁ、いい。貴様はどの道この後私に悪事の数々を暴露されてまともに立つ事すらできなくなるんだからな!」


 あぁー、うざい。うざすぎるわ。彼の事まだ王子様って思っている人は私にその良さを理解できるようにここで熱弁してくれないかしら?


「はぁー、うざい…。」


 あらいけない、ぽろっと本音が。


「シャーロット様あんまりですわぁ~。アイザック様はこんなにかっこいいのにうざいだなんて…。あと、チェリーの何が気に入らないのですか?いっつもいっつもチェリーの事いじめて何が楽しいのですかぁ~?」


 許可もなくファーストネームを呼ぶとは常識知らずな上に不愉快ですね。


「いじめるとは何の事でしょう?私には身に覚えがありません。」


「えぇーっと、教科書を隠したり破ったりとかぁ、お水をかけてきたり階段からつき落としてきたりとかですぅ。酷いですよねぇ?」


 可愛らしい小動物の様な庇護欲を掻き立てるおっきな瞳いっぱいの涙を溜めた表情でパーティー会場にいる人達に訴えます。

 これだけでお馬鹿な令息達は何人かころんと恋に落ちてしまったみたいですね…。婚約者がいる方は婚約破棄されなければいいですね。

 まぁこの位なら問題ありませんね。断罪の仕返しもしっかりして彼らを恐怖のどん底にでも落として差し上げましょう。

 まぁ、その為にはこのチェリー・マゼンタ嬢改めピンク頭の掛けてきている濡れ衣が真っ赤な嘘だと周りに理解して頂く必要がありますね。まぁでもその心配もありませんね。それ程彼らは愚かですから。


「証拠はお有りで?」


「はぁー?」


 あら、予想外の事が起きたとでもで言いたげな表情ですわね。そんな表情をしたら、さっきの同情を誘う表情をした意味が皆無ですわよ。

 話を戻しますが、断罪しようとするのなら証拠を出すなんて簡単でしょう?だって証拠を準備しておくのが当然の礼儀だもの。そんな簡単な事すらできませんの?本当に愚かな人達。まぁお情けでもう1回位は聞いておいて差し上げましょう。


「聞き取れなかった様なのでもう1度言わせていただきますわ。証拠はお有りで?」


 この時ふんわり優しく微笑んで差し上げるのがポイントです。と言っても私はアイザック・アストレア様改めお馬鹿俺様王子様の命令で前髪を伸ばして目を隠しているので表情はあまり見えないかもしれませんが…。


「はぁー?」


 あら?愚かな上に貴方達は礼儀知らずなのですね。これ以上いくと救いようがありませんわよ。


「貴方達も全く証拠を持って来ずに私を断罪するなどという馬鹿げたことをしようなどとは流石に考えていないでしょう?ですから、証拠の書類を見せて欲しいと私は言っているのです。」


「えっと、あの、その、そんなもの持ってないわぁ。シャーロット様、どうかご自分の罪から逃げないでください~。チェリーは本当はこんな事したくないんですぅ。でもそうしたらシャーロット様の為にならないってアイザック様が教えてくださったからぁ。必死に頑張ってるんですぅ。」


 涙目の訴えもここまでくると気持ち悪いですね。ってことでさっさとくたばれピンク頭。

 もうピンク頭を見るのも疲れてきましたわ。話しが通じない人と話すのは大変と言いますが、本当に大変ですわね。金輪際このピンク頭に付き合うのはやめにしましょう。


「じゃあせめていつ、何処で、何を、どうされたか教えてください。ピンク頭…ではなく、マゼンタ男爵令嬢の言った事の真偽は私達の話し合いでは並行線になるでしょうから、このパーティー会場にいる人達に決めてもらうと言うことでいかがでしょう。」


「いいわよ!」


 あらぁ、強気に出てきましたわね。って言うか口調も気持ち悪くなくなりましたね。何か作戦がありそうですからここはパーティー会場にいる皆様が納得する様な形で私が不利になる可能性が低いものにしましょうか。


「では、真偽はここにいる全員で嘘をついていないと思う方に拍手をして貰い、拍手の大きさで決めましょう。簡単に言えば拍手が大きかった方が正しいということになります。」


「え、そんなの不公平よ。」


 ピンク頭がムッとした表情で言います。

 馬鹿じゃないの?って言わなかった私を誰か褒めて欲しいですわ。特定の人を選んでしまっては尚の事公平性がなくなる事は赤子でも分かるでしょうに…。ですが、私は優しいですから理由やどうするべきかをを聞くだけ聞いてあげましょう。


「では、どうするべきだと?」


「ユアン様とカイル様とイザナ様に決めてもらいましょう!その方が公平よ!」


 馬鹿すぎて物が言えません。先程出てきた3人は皆、公爵または侯爵位の親を持つ子息達で、娼婦ことお馬鹿ピンク頭に惚れたと有名な馬鹿4人組の人達です。ちなみにお気づきでしょうが、もう1人はお馬鹿俺様王子様です。


「言い分は分かりました。ですが、私はその審議方法に納得しません。ですので、その審議方法で良いかは先程私が申し上げた方法で決定しても構いませんか?そうすれば、私は納得できます。それに、貴方が正しいのであれば、審議の方法なんてどうでもよいでしょう?」


「良いだろう!全ておまえが悪いんだから、こっちに譲歩して貰う必要などない!おまえの言った審議方法で決定にする!なぁ、チェリー!!」


「え、えぇ~。当たり前ですわぁ、アイザック様~。でも、チェリー怖いんですぅ。もし、ここに居る人全員シャーロット様の手駒だったらとおもうとぉ~。」


 お馬鹿ピンク頭の言葉使いがまた気持ち悪くなりましたね…。

 はぁー、もう嫌…うざいわこいつら…。


「その様な事はしておりませんのでご安心を。なんなら魔術契約をしましょうか?」


「うむ、それなら安心だ。良いだろう、それに決定だ!」


 お馬鹿俺様王子様がおだてに乗りやすくて本当に良かった。

 お馬鹿ピンク頭さん、そんなに青くなって震えてももう遅いですわよ?私やられたら10倍にして返す主義なんです。せいぜい頑張ってくださいね?

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