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作戦会議

 これから何をすべきなのか、考えないといけない。


「院長がおっしゃっていた、根本の問題、とやらが気になるところですが」

「建国から皇帝の傍付きだったモンテッキ家はいいとして、教皇側についたカプレーティ家について、気になるところだな」

「たしかに、わたくしもそう思います」


 教皇は神の代弁者として地上に存在し、各国にある教会の長として、世界の皇帝や国王からも一目置かれる存在である。

 総本山であるクレシェンテ大聖宮は、ヴィアラッテア帝国の西方に位置し、教皇の影響も大きいのだ。


「一度、クレシェンテ大聖堂にカプレーティ家との関わりを、調べに行こうかな、と考えております」

「可能なのか?」

「ええ」


 クレシェンテ大聖宮は招かれた者しか、立ち入ることができない。

 けれども、私は父に頼んだら、中に入ることができるだろう。


「クレシェンテ大聖堂は、個人的に一度調査したい、と思っていたところだ」

「バルトロマイ様も?」

 

 彼は腕組みした状態で、大きく頷いた。


「一応、侵入ルートについての情報は入手している」

「ちょっと、お待ちになってくださいませ! 侵入ルートって、そんな物があるのですか!?」

「ああ。信頼している密偵が調べたものだから間違いないし、この情報を漏洩ろうえいさせるつもりはないから安心してほしい」


 ふたりで侵入したら、協力し合えるかもしれない。なんて提案されたが、待ったをかける。


「あの、クレシェンテ大聖宮への入宮は、許可がある者であれば、一名だけに限定して同行が許されております。ですので、調査をするときは、正規ルートから入りましょう」

「いいのか?」

「ええ、もちろんです」


 カプレーティ家の娘と、モンテッキ家の嫡男が揃って入宮したら、怪しまれるだろう。

 私はともかくとして、バルトロマイは変装する必要がある。


「変装ならば、儀仗騎士に扮するから心配いらない」


 なんでも儀仗騎士が着用する板金鎧をモンテッキ家は所有しているらしい。今はしていないようだが、クレシェンテ大聖宮に間諜かんちょうを送り込んでいた時代があったと言う。


「クレシェンテ大聖宮の管理体制は鉄壁で、熟達した間諜でも情報は持ち帰れなかったらしい」


 ただ、カプレーティ家の娘である私がいたら、何か得ることができるのではないか、とバルトロマイは期待しているようだ。


「わかりました。ではさっそく、父に頼んでみます」

「申請にどれくらいかかる?」

「早くても一ヶ月後くらいかと」


 クレシェンテ大聖宮は世界各地にある教会の総本山である。毎日各国から、たくさんの人達が押しかけているのだ。

 いくらカプレーティ家の娘と言えど、最優先というわけではない。


「申請している一ヶ月もの間に、何か調査できたらいいのですが」

「だったら、うちに来て、紛れ込んだネズミ探しでもするか?」

「ネズミ、ですか?」

「俺の命をしつこく狙う、暗殺者だ」


 なんでもバルトロマイは一週間に最低一回は、命を狙われているのだと言う。

 布団の中に毒蛇が仕込まれていたり、寝室の天井裏から暗殺者に襲われたり、寝巻きに毒針が仕込まれていたり。


「お茶に毒が仕込まれていただけではなかったのですね」

「ああ、そうだ」


 騎士隊が調査したり、警備を強化したりと、さまざまな策に出ているものの、解決には至っていないようだ。


「暗殺者は俺以外の命は狙わない。だから、安心して調査しに来るといい」

「しかし、カプレーティ家の者であるわたくしが、モンテッキ家に足を踏み入れてもいいのでしょうか?」

「それこそ、変装すればいいだけの話だろう」


 目の色だけは隠せないが、色眼鏡でもかけたら、バレないだろうとバルトロマイは言う。


「問題は、どうやってうちに紛れ込ませるか、だな」


 バルトロマイの暗殺騒動の影響で、モンテッキ家はお茶会すら開けないような状態らしい。

そうでなくても、 通常、屋敷で雇う使用人は紹介状が必要になる。人事権を持っているのも、執事や家令といった使用人達をまとめる存在なのだ。


「同性の使用人ならまだしも、異性の使用人を働かせてくれと口利きするのは、変な目で見られそうだな」

「それですわ!!」


 バルトロマイはピンときていないのか、胡乱うろんな瞳で私を見つめる。


「ジュリエッタ嬢をメイドや侍女として働かせるよう、俺から家令に頼みこめ、と言うのか?」

「いいえ、違います。もっと手っ取り早く、怪しまれずにモンテッキ家へ侵入する手段を思いつきました」

「なんだ、それは?」

「わたくしが、バルトロマイ様の愛人になればよいのです!」


 まさかの作戦だったようで、バルトロマイは目を見開く。


「愛人であれば常に一緒にいても不思議ではありませんし、使用人達にも怪しまれずに済みますから」


 他に作戦があるのであれば、提案してほしい。そう伝えたところ、バルトロマイは眉間に皺を寄せ、何やら深く考え込んでいる。


「……たしかに、愛人として入ってもらうのが、一番いいような気がする」

「でしたら決まりですわね!」


 そんなわけで、私はバルトロマイの愛人として、モンテッキ家に居候することになった。 

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