表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大好きだった前世の夫を発見したけれど、私といたら不幸になるので徹底的に避ける……つもりが、捕まってしまいました!  作者: 江本マシメサ
第二章 モンテッキ家嫡男との再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/55

届いた手紙

 医者の診断を受けたが、数日療養していれば心配いらないという。

 置いていった大量の薬を見て、うんざりしてしまった。

 横になったものの、眠れそうにない。はてさてどうしようか、と考えていたところに、寝室に両親が駆けつけてきた。


「ああ、ジュリエッタ、目覚めたのだな」

「よかった!」


 なんでも私はあのあと高熱を出し、屋敷へ運ばれたらしい。

 それから三日間、意識が朦朧もうろうとした状態で過ごしていたようだ。

 この病弱な体が憎い……。

 ここ最近、特に酷くなっているような気がする。私の体はいったいどうしてしまったのか。

 母は健康な体に産んでやれず、申し訳がないと涙していたが、そんなことはない。

 私の体調不良は、単なる不摂生が原因だろう。


 父はイラーリオに対し、怒っていた。


「それにしても、イラーリオの奴、ジュリエッタにちょっかいを出すな、とあれほど言っていたのに」

「よほど、ジュリエッタのことが気になっていたのですね」


 父は私が熱を出したのは、イラーリオに絡まれたせいだと決めつけていた。

 本人に抗議の手紙を送り、今後この屋敷及び私への接近は禁じたと言う。


「ジュリエッタ、これからは安心するといい。もしもイラーリオが付きまとうようならば、騎士隊に突き出すつもりだ」

「お父様、ありがとう」


 母はイラーリオのことを気に入っていたようだが、今回の件で評価を変えたという。


「教皇疔に入って、心を入れ替えたと思っていたのですが……。人間はそう簡単に変わらないものなのですね」


 イラーリオに関しては、心配しなくてもいいと励ましてくれた。


「それはそうと、ジュリエッタを医務室まで運んでくれた、親切な紳士について、何か聞いているだろうか?」

「お名前くらい、伺っておりますよね?」

「……」


 私を医務室まで運んでくれた親切な紳士とは、バルトロマイのことである。

 モンテッキ家の嫡男で、次期当主である彼が助けたと知ったら、両親はどんな反応を示すのだろうか。

 感情が高ぶっている両親に、打ち明けられるわけもなかった。


「あの、意識が朦朧としておりまして、お名前など、聞き出せませんでしたわ」

「おお、そうだったのか。可哀想に」

「名乗らずに去っていかれたのですね。なんて親切なお方なのでしょう」


 父はにっこり微笑みながら、「恩人については、探しておくから安心してほしい」と言って去って行く。

 母も「何も心配することはありませんからね」と言って頬を撫で、寝室から出て行った。


 残ったばあやが、オートミール粥を食べさせてくれる。食後はリンゴを剥いてくれた。


「ばあや、ありがとう。もう下がってもよろしくってよ」

「今晩も、お傍にいようと思っていたのですが」

「先生のお薬を飲んだから大丈夫。ばあやはもう休んで」

「はあ」


 去り際に、何か思いだしたのか、ポンと手を打つ。


「ああ、そうだ。今日、ジュリエッタお嬢様にお手紙が届いていたのです」

「わたくしに?」


 ばあやが差し出してくれた手紙を受け取る。差出人には、見覚えのないご令嬢の名が書かれていた。


「彼女は――ああ!」


 そういえば、バルトロマイが偽名で手紙を送ると宣言していた。彼は本当に行動に移したようだ。


「ジュリエッタお嬢様、初めて見るお名前のようですが」

「え、ええ、そうですの。ル・バル・デビュタントで知り合いになりまして」

「そうでしたか」


 私があまり友達付き合いをしないからか、ばあやは嬉しそうに頷いている。

 騙してごめんなさい、と心の中で謝りつつ、感謝の気持ちを伝えた。


「ジュリエッタお嬢様、何かありましたら、このばあやを呼ぶのですよ」

「ありがとう」


 ばあやと別れたあと、手紙を開封する。

 便箋に書かれていたのは、バルトロマイの文字だった。

 丁寧に書き綴られた文字は、前世とまったく同じである。懐かしい文字を前に、涙が滲んでしまった。


 手紙に書かれてあったのは、私の容態を気遣う内容と、元気になったら会って話をしたい、というものだった。


 なぜ、彼は私に会いたいと思ったのか。

 それは、直接彼から聞き出すしかないのだろう。

 もうバルトロマイとは会うべきではないのかもしれない。

 けれども、この前のお礼だけでもしなければならないだろう。


『なんだかんだと心の中で理由を付けて、あの男に会うつもりだな?』


 耳元からアヴァリツィアの声が聞こえ、ぎょっとする。

 いつの間にか私の肩に乗り、手紙を読んでいたようだ。


「あなたは、いつもそうやって突然現れて!! 心臓に悪いですわ!!」

『おお、おお、元気そうだな』

「おかげさまで!」


 本当に嫌なタイミングで出てくるものだ。

 肩から追い払うと、寝台の上にぴょこんと着地した。


『それで、どうするんだ?』

「会います」


 だって、彼がそう望んでいるのだから。

 きっと最初で最後だろう。その一回で、未練をきっちり断ち切るのだ。


『はてさて、上手くいくのかな?』

「わたくし、もう何年も彼との接触を避けていたんです。これでも、意志は強いほうですので!」


 なんだか悔しいので、そう宣言しておく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ