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生まれ変わってしまった私達

 街を二分するほどの政敵だった家に生まれた私と元夫は、反対された挙げ句、自ら命を絶った。

 天国に行ったら、幸せになれる。

 そう信じていたのに、私達は百年後の世界に生まれ変わってしまった。

 どうしてこうなってしまったのか。

 神様に問いかけても、答えがあるわけもなく。


「ジュリエッタお嬢様、モンテッキ家のバルトロマイです! お隠れになって!」


 今日も、元夫であるバルトロマイと異常接近ニアミスしそうになる。

 黒く短い髪に、燃えるような真っ赤な瞳、皇帝陛下の深紅の騎士服がよく似合う美丈夫。彼は前世と同じ容貌で生まれ変わった。


 だから、すぐに〝彼〟だと気づいたのだ。


 一方、私も前世と同じグレージュの髪に、似たような顔立ちで生まれる。

 カプレーティ家が持つ青い瞳もそのまま、驚くほどそっくりだった。

 

 ばあやと共に路地に入り、バルトロマイに見つからないようにする。

 政敵なので、問題を起こしたら大変だからだ。


 そっとバルトロマイが通り過ぎる姿を盗み見る。

 今日も眉間に深い皺が刻まれ、表情は不機嫌そのもの。本人にその気はないのに、周囲の人達を威圧してしまうのだ。


 大通りは人の通りが多いのに、まるで猛獣から遠ざかるように皆が皆、バルトロマイに道を譲っていた。

 背が高く、体も大きいので、遠目で見たら熊そのものである。


 今日も素敵。

 なんて言葉は、喉から出る前にごくんと呑み込んだ。


 バルトロマイが通り過ぎ、姿が見えなくなると、ばあやが盛大なため息を吐く。


「はあ。なんて恐ろしい男なんでしょうか。深紅の制服に身を包んでいるのでわかりませんが、あれはきっと、二、三人は人を殺したあとですよ」

「ばあや、そんなことしているわけがないでしょう」

「ジュリエッタお嬢様は、喋ったこともない男を庇うのですか?」

「そういうわけではないのですが……」


 前世と変わっていないバルトロマイの様子に、私は歓喜していた。

 けれども、一度だって会ったり、言葉を交わしたりしたことなんてない。

 私とかかわったら、バルトロマイは災難に巻き込まれてしまうだろうから。

 彼については、今でも愛している。

 けれども愛は時として不幸を招く。

 周囲の賛同を得られなかった愛を貫いたらどうなるのか、考えただけでも身震いしてしまう。


 だからこの愛には蓋をして、秘めておくのだ。

 それが、バルトロマイの幸せにも繋がる。

 だって私達は、今世も敵対関係にある家に生まれてしまったのだから――。

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