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9 ボクもついでにほめられる!

というわけで第9話です。

「そんなのイヤだっ! テレーズを側女にするなんて!


 ボクはテレーズじゃなくっちゃだめなのに!

 

 うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」



 ボクは泣いた!


 ボクらの愛のために!



「いいのです殿下。わたしはそれで。


 一瞬だけおぞましく醜い夢を見てしまったのです。見てはいけない夢を。


 殿下の側女でさえ、今のわたしには過分な地位なのです。


 本来なら、わたしは王家の方をたぶらかした罪人として女の身に生まれたのを後悔するような末路をたどる筈だったのです。


 それを許してくださると言うのですから……。


 ゲルドリング伯爵令嬢様の言葉に従いましょう」


「いやだぁぁ。ボクは、テレーズがいいのにぃぃぃぃ!」



 ボクだって判っていた。


 判ってしまってはいたんだ。


 こうしないと悪と化した弟が国をめちゃくちゃにする。


 それに、ボクもテレーズも一緒にいられる。


 テレーズがいてくれるなら、ボクはなんでもいいんだ。


 だけど、それでも―― 



「殿下。テレーズ嬢の地位は単なる側女ではありません。


 王妃に準ずる権威を持つ特別な地位を設けます。


 既に用意は出来ていますよね?」



 初老の男がマリアンヌの前にひざまずいた。



「テレーズ・ドモエンヌ嬢一代限りの地位を創設します。


 政治的な権力以外は王妃と同等の格を持つ、準王妃という新たな位です。


 王の裁可の証である玉璽を押せばすぐにでも発効します」



 政府のえらいひとっぽいけど、しらないひとですね。



「……だれ?」


 ボクが思わずつぶやいたのが聞こえてしまったのか、 


「王太子殿下。お初におめにかかります。宮内次官のミュラー・ダンメルン男爵でございます。


 王太子妃殿下に才を見いだされ、不肖のこの身を捧げさせていただいております」



 男爵かー。


 そりゃボクが知ってるわけないよね。


 ただでさえ人の顔を覚えるのって苦手なんだもの。



 とか考えてる間に、マリアンヌはドレスの襞の中に隠されたポケットから何かを取り出した。



「をいをいっ!? それって王家の玉璽じゃないよなっっ!?」


「王家の玉璽です」



 ぽん。


 いつのまにか運ばれてきた小机の上で、玉璽が無造作に押されちゃった。


 マジで父上、仕事してないんだなー。



「テレーズ嬢。これで貴女は将来の準王妃です。


 権力以外は、私と同等の存在となるのです」


 テレーズは倒れそうに真っ青になって。


「そ、そんな! ゲルドリング伯爵令嬢様とほとんど同じ地位なんて、お、おそれおおすぎます!


 わたしは単なる平民で――」


「だから可能だったのです。貴族でない貴女が王妃になったとしてもカドが立ちます。


 ですが、そこに準とついただけで、不思議なことに物事は解決するのです。


 一字違いなのに面白いものです」


「一字しか違わないのか! ならほとんど王妃だ!


 テレーズ! これからはずっと一緒だね♪」


 ボクは倒れそうなテレーズを励まそうと、そっと手を握った。


 強く握り返してくれる。


「……そうですね。ずっと一緒です」


 テレーズは顔をあげて、マリアンヌを見た。


「ゲルドリング伯爵令嬢。これでわたしは殿下のお側にいられるのですね?」



 その目には、なにか凄い覚悟があった。


 テレーズかっこいい!


 また惚れてしまうじゃないか!



「はいそうです。


 そのうち誰もが知るでしょう。貴女が実質的な王妃であると。


 ただし、貴女は表を全て取り仕切るので、


 礼儀作法、社交に関しては完璧に覚えてもらわねばなりません」


「……覚悟はできております」


「貴女ならやれます。私が保証しますよ。


 それに、貴女が準王妃となる頃には、名前を覚える必要のある貴族は、


 ずいぶんと減っていて楽になっているでしょうし」



 ん? どういう意味なんだろう?



「それから殿下」


「まかせろ! なんだか知らないが減るなら覚えられるかもしれない!」


「私は殿下を見誤っておりました?」


「え。そうなの?」


「テレーズ嬢が殿下を庇うようなことがあれば、


 彼女に全ての罪を押しつけて逃れようとすると予想していたのですが」


「ひどっ!


 そんなはやりの劇の『ざまぁ』される悪役みたいなことするはずないじゃないか!


 ボクは善なんだからなっ!」


「そうですね。確かに殿下は善でした。


 自ら責任を引き受けようとしましたし、テレーズ嬢だけでなく裏切った側近まで庇いました。


 その上、彼女を心の底から愛しているとしか説明できない行動の数々……」



 もしかして褒められてるのかっ!?


 まさか。


 このボクが、灰色メガネに!?


 夢じゃないよね?



「それに、私が懇切丁寧に説明すれば、


 本当に理解をしているかには、やや不安が残るものの、


 飲み込んで受け入れるだけの知性と度量はあるようですね」



 なんかわかりにくいが、褒められてる感じがする!


 うわー。褒めない人に褒められると、すごく褒められてる気がするぞっ!


 もりあがるぜ!



「殿下は為政者としては三流以下にしかなれないでしょうが、


 人間としては王家の中で一番まともです。


 王になるべきなのは殿下しかおりません」



 会場の誰かが叫んだ。


「我らの王太子殿下! 未来の準王妃殿下!


 我らの全身全霊は貴方方のために!」



 皆が一斉にボクらの方へ向いてひざまずいてくれたじゃないですかっ!?


 マジ!? マジなの!?


 ボクが王でテレーズが一字違いで王妃!?


 うひょー。すげー未来!



 ボクはびしり、と片手をあげて前髪をふわり。


 王者のポーズを決めっ!



 テレーズがそっとよりそって来て、耳元に口を近づけてくる。


「なにテレーズ?」


「殿下。わたしも殿下も忘れてはなりませんね。


 この忠誠も崇拝も尊敬も、全てゲルドリング伯爵令嬢に対するものだということを」


「……判ってるって」



 骨身にしみました。


 この世の中には敵に回しちゃいけない相手がいるってことをさ。 



 ちゃららちゃっちゃちゃ~~♪


 王太子オットーはひとまわり成長した!


予告!

『ざまぁ』されて一回り成長したボク!

そんなボクに驚愕の事実が告げられるのだ!


第10話『ボクはざまぁをされてない!』


え? バッチリざまぁされてたのに、どゆこと?


誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。

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