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7 ボクはサインだけはする!

そういうわけで第7話です。

「テレーズ! メガネ! 愚かなボクは償いようのないことをしてしまった!


 この国に悪を栄えさせる手助けをしてしまったのだっ!


 うぉぉぉぉぉうぉぉぉぉぉぉ」



 涙があふれた。


 ボクは国のために泣く! 泣くしかできないのだ!



「殿下! 殿下! しっかりしてください! 泣くのはまだ早いです!」


 あたたかい腕がボクを抱きしめてくれた。


「だってボクはボクはぁ」


「ゲルドリング伯爵令嬢様がここまで話してくださったのですから、


 なにか打つ手があるということです!」


「え、そうなの?」


 マリアンヌは溜息をついた。


「先程、わたしは言いましたよね。ローゼンクランツ殿下が嫌いだと。


 その理由は既に述べました。


 ですから、あんなのと結婚する気はありません」


「でも、ボクが王太子じゃなくなったら、あいつが――」


「そもそも、あのバカは大いに勘違いしております。


 私が、王太子妃の位ほしさに、あの小才子と結婚する?


 はっ。ばかばかしい。おとといきやがれです!」



 怒ってる。


 あのマリアンヌが怒っている!


 おとといきやがれとか言ってる!


 あ・り・え・な・い!



「で、ですが、王太子の求婚をそでにするなんて出来るはずが」


 マリアンヌはビシッと言い放った。


「私は決めました。オットー殿下。貴方を王にすると」



 ボクは、ポカンとした顔でメガネを見上げた。


 コノメガネハナニヲイッテイルンダ?


 ボクは絶賛『ざまぁ』の最中ですよ?



「私には出来るのです。なぜなら今、この国の政を仕切っているのは私なのですから」


「どゆこと?」「どういうことなんですか?」


 マリアンヌは咳払いをすると


「自分で言うのもなんですが、私は凄く有能なのです。


 殿下だけでなく、


 国王陛下も王妃殿下も全ての政務を私に丸投げしてるくらいなのですよ」


「ええええええっっ、ボクだけじゃないのっっ!?」



 びっくり。


 ボクのとこに来た書類の山だけでも目が回りそうなのに。


 父上や母上の分まで……きっとすごい書類の山なんだろう!


 どれくらいすごいかはわからんが、とにかくすいごい!


 書類の洪水だ。いや大洪水だ。


 それじゃ学園に通えるわけがない。



「私が処理する方が万事速く正確で優れているので、いつのまにかこうなっていました。


 大臣達や役人達も私に聞いたほうが話が早いので、私に相談して万事を決めております。


 もちろん、いくら私が有能でも一人では無理なので、抜擢した役人や軍人に手伝って貰っております。


 それでも人手が足りないので、庶民からもどしどし集めてます。


 国をよくする素敵な仕事! 笑顔が絶えない職場です!


 老若男女まったく区別しません! 給金よし! 休暇あり! 新年には特別手当も出します!


 今や、私が与えられた離宮は王国の頭脳になっているのです。


 ですから正確さを重んじて申せば、この国の政を仕切っているのは私達です。


 今ここにいるのは、皆、私の同志と呼べる方々ばかりです」



 ボクはあらためて周りを見た。


 卒業パーティの会場に集まっているのは、見たことがない人ばかり。


 ボクがいくらバカだと言っても、上のほうの貴族ならおぼろげに判るはずだなのに。


 とすれば貴族だとしても下の方。大部分はきっと貴族ですらない。


 少しだけど女までいる。


 もしかして、この女達も政を手伝ってるのかな?


 すごい! あんなものを読んでしかも片付けられるなんて!



「王の玉璽すら私が管理している始末です。


 今や王宮の大臣達やゴクツブシども以外の官吏から下働きにいたるまで、


 全てを私たちは動かすことが出来るのです」



 会場の誰かが叫んだ。


「我らの王太子妃殿下! 我らの全身全霊は妃殿下のために!」


 皆が一斉にマリアンヌの方へ向いてひざまずいた。


 偉大な王を褒め称えるように。


 メガネの身長が一気に伸びて、全てを従えてるみたいだ。



「やめなさい。私は王ではありません。単なる王太子妃です。


 やるべき仕事をしているだけの人間です。


 オットー殿下。貴方まで頭を下げてどうするのですか?


 私は貴方を王にするのです。ですから貴方が王です」


「いや、でも、メガネじゃなかったマリアンヌのほうが、ボクより適任だと思うんだけど……」


「で、殿下!」 


 テレーズがボクの袖をつかんで、小声で耳元に


「それではゲルドリング伯爵令嬢様に、簒奪を勧めているのと同じです」 



 メガネの光がボクとテレーズを見た。


「一昨年創設された国民軍を掌握しておりますので、簒奪は可能だと思います。


 装備練度士気から考えて、旧態依然の貴族の私兵など破るのはたやすいでしょう。


 ですが私は女王になるつもりはありません。


 メガネでチビでちんちくりん、余りにも見栄えが悪いからです。


 他国に侮られますし、肖像画家が泣いてしまいます」


「ならなぜ、そのような、そのみすぼ――地味なおめしものを?


 それだけの権力があれば、もっとそれに相応しいお姿に」


「最低限の礼儀にかない、かつ動きやすいからです。


 アクセサリーなどはどこかに引っかかったら危ないですしね。


 本当は北天ポラールの民のようにズボンを履きたいのですが宮中なので」


「なんということだ! そんなわけがあったなんて!


 メガネとかチビとか幽霊とか陰口をたたいていたボクはなんてバカだったんだ!」



 このメガネは、もとい、ボクの婚約者はなんてけなげなんだ!


 ひとりで国を背負い、自分の服装も顧みず激務をこなしている。


 ボクと同じ19才で、しかも女の子なのに!


 メガネがどんどんぶあつくなって行ったのもそのせいなのか!



 ボクはマリアンヌの足元に土下座っ!


 今度は決まった!


 王子にふさわしいスペシャル土下座だ!



「済まないっ! ボクはサインくらいしか出来ないけど、


 明日からでもサインだけはするから! モリモリする!」


「しなくて結構です。殿下の字は余りにも個性的すぎるので」


「そうか……残念……」


「それに殿下が仕事をなさらないことを責めているわけではないのです。

 

 殿下がこういう方だったからこそ、私は楽しませてもらっているのですから。


 もし殿下が有能か、有能でなくても仕事をこなそうと精一杯励む方であったら、


 私はこの天職に巡り会えませんでしたよ」


「そうなの?」


「はい。殿下のおかげです」


「そうか! そうだったのか!」



 気が晴れ晴れした。


 気づかないうちにボクはいいことをしていたらしい!



「ですから殿下のお相手をしている暇などないのです。


 ですが殿下のお相手は必要です。殿下は王になるのですから」


 テレーズが恐る恐るという感じで、


「あの……よろしいでしょうか?」


「なんでしょうかテレーズ嬢」


「ゲルドリング伯爵令嬢様が殿下の相手をなさらないというなら、


 殿下のお相手は誰がするのですか? 


 今の殿下は勢いで納得しかねませんが、


 それは殿下に対して余りにも寂しすぎる仕打ちではありませんか」


「テレーズ! ボクの相手は君だけだ!」


「……わたしは罪を犯した身。もう殿下のお側には――」


 いきなりマリアンヌは膝をつき、テレーズの手をとった。


「テレーズ嬢。貴女こそがそのひとです。


 私は確信しました。殿下のお側にいるべきなのは貴女です」


予告!


マリアンヌは、テレーズをほめたたえてくれる!

当然だよね、だってボクの愛する人なんだから!

テレーズ最高!


なのに、テレーズはボクの奥さんにはなれないって言うんだ! いやだー。


第8話『ボクの彼女はほめられる!』


ほめるくらいなら、テレーズをボクの奥さんにしてよ!


誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。

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