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2 ボクは勝利のポーズを決める!

というわけで第2話です。

「そしてボクとテレーズの真実の愛に道を譲るのだ!」 



 おお、テレーズ! その名を口にしただけでボクの鼓動は高まる!


 テレーズ! テレーズ! テレーズ!


 ボクの隣にいるべきひとは、彼女のように笑顔がうつくしい華やかな人だ!

 気の利かないグスタフは、側女にすればよろしいと言ったが、真実の愛を側女になどできぬ!

 テレーズ自身もそれでいいと言ってたけど、王妃がいいんだ彼女は。そうじゃなきゃダメなんだ。


 いつでも隣にいて欲しいんだっ!


 彼女は王都にある大きな仕立て屋さんの娘で、学園創設以来初めて入学を認められた平民のひとりだ。

 学園にはとやかく言うヤツが一杯いる。目の前のメガネもそのひとりだ。


 だけどそんなの関係ない!


 だってボクが真に愛しているのはテレーズだけなんだから。テレーズ。おお! テレーズ!

 君が世界に降臨してくれて、ボクは生まれ変わったのだ!


 坊やから立派な王太子にな!



「殿下。この場でそれを言ってはいけません」


 判ってるぞ判ってるぞ!


 いつもと同じつめたい声だが内心は焦りまくってるんだよな。


「ふふふ。それはそうだろう! お前にとっては致・命・的!」



 そうさっ。ボクは証拠を握っているのだ。バッチリとな!

 このメガネが不正不義をしたという証拠を! ガチンガチンに固めてあるぜ! 忠実な友たちよありがとう!


 灰色メガネよ! お前には心当たりがあるはずだ。


 この場で明かしてやってもいいんだが、腐りきっていても元婚約者、満座で恥をかかせるのは気の毒。

 出来るだけ穏便に済まして欲しい、こんなことを明かせばお前が一生嫁にもいけないだろうからと、テレーズが言ってたしな。


 ボクらの思いやりを察して引き下がるがいいっ!



 メガネがキラリと光ると、ボクが抱きしめているテレーズの方を向く。

 テレーズの華奢な肩がびくっと震えたのが伝わってくる。、

 彼女を怯えさせるんじゃなーい!


 メガネがボクの方を向いた。


「そこのテレーズ嬢こそが殿下の真実の愛の相手だという理解でよろしいでしょうか?」


「そうだ! なんだぶあついメガネをかけているくせに、そんなことも確認が必要なほど愚鈍なのか!」



 このメガネ、頭も悪かったとは!

 こんなメガネかけてるのに頭悪いとか終わってるな!


 それとも時間稼ぎか? あがいても逃げ道なんかないけどな。余裕余裕。


 ボクがやさしいうちに、さっさと引き下がっちゃえよ。

 そしたら勝利のポーズを決めて見送ってやるぜ!



「それはつまり、私という婚約者がありながら殿下は不義をしているという事ですね」


「なっ!? 言うに事欠いて不義だとぉ!! ボクらの真実の愛を侮辱するなぁっっ!」


 目をくわっと見開いて目力で圧迫してやる!


 だがヤツってば平気の平左でしゃらくさいことをほざく。


「それが殿下の錯覚であるか気の迷いであるか、はたまた真の真実の愛であるのかは私には判りかねますが」


「お前のようなハートが欠落した女に判るはずがなーい!」


「それは殿下とテレーズ嬢が男女の交際をしているという宣言であり、

 正当な婚約者である私がいながら、他の女との情に流されるままに、正当な契約を破ったという宣言でしかありません。

 王家が結んだ契約を破るといいうことは、王家への反逆とみなされます」


「なっっ」



 なにを言い出すんだこいつは!

 ボクが! このボクが悪いみたいじゃないかっ!


 悪いのはお前に決まっているのに!



「大法典によれば、王家に対する反逆は、その軽重によって、死罪、財産没収、追放と決まっております。

 殿下は王家の人間。先程までは後継者でもありましたから、死罪から罪一等を減じられて、廃嫡、追放といったところでしょう」



 ボクは激怒した。


 なんだこいつは! せっかくボクが王者のやさしさを示したというのに!

 こうなったらこいつの罪をぶちまけて破滅させてやるっ!


 うらむなよ! お前が悪いんだからな! 



「情けをかけてやればつけあがりおって! お前には罪がある――」


「私が不正不義をなしていたと告発するのはおやめになったほうがよろしいかと」


「お前にとっては不都合な事実だからな! だが、うらむなら自分を恨め! お前がそんなに駄々をこねなければ言う気はなかったのだからな!」


「殿下! お待ち下さい!」


 テレーズが必死にすがりついてきてボクの言葉を止めた。


「テレーズ怖がることはない。こいつは悪。ボクたちは正義なのだからなっ! 光は闇に勝つ! 悪即斬!」


「ゲルドリング伯爵令嬢様! お願いです。殿下が告発を初めてしまえば、貴女の将来が――」


「告発というのは、私が取り巻きに命じて、貴女のノートを破かせたとか、毎朝机を濡らさせたとか

 筆記用具を燃したとか、机の中にゴミクズを入れさせたとか、

 机に『王太子殿下に近づいたらコロス』と稚拙な字で書き殴らせたとか、着替えを隠して更衣室から出られなくしたとか、

 美術の時間にモデルに推薦させて無理矢理全裸にしようとしたとか、

 私の雇ったならずもの達に脅されたとか、それでも貴女が音をあげないので、自分の手で階段から突き落とした、という話ですね?」


「その通り! まさに悪! お前は悪役令嬢!


 って、なんでお前が自分で言う!? それはボクの言うことだろう!」



 なぜだっ!? なぜこいつは自分からペラペラと言うのだ。しかも淡々と冷静にっ!?

 その上、ボクが知らなかったことまで!

 こいつが裏で糸を引いてたんだから知ってるのは当然だが、なぜ言う!?


 わからぬっ。なんだこいつはっ。

 わからぬぞぉっ!?


 いっ、いや。なにを怯えているんだボクは!

 ボクはすでに勝利しているのだ!

 ということは自分で罪を認めて少しでも罰を軽くしようとしているのだな! くっ狡猾な奴め!



「なぜ、自分から!? 殿下は貴女に情を――」


 テレーズの悲痛な声を遮る冷たい声。ボクの大嫌いな声。


「その証拠と証言とやらはほぼ全て事実です。少なくとも表面的には事実です。ですが、いくつかの致命的な嘘が混じっております。

 ですから、私を告発する根拠にはなりません」


「わたしは嘘などついておりません! 日々いやがらせを受けているのです! 

 純潔さえ危うくなるほどの仕打ちまで!

 いくら伯爵令嬢という高貴な方でも、それを罪なしと言い切るとは!」

 

 テレーズの振り絞るような声。彼女にこんな声をあげさせおって許せん!


 断罪だっ!


「なにが根拠にならんだこのメガネ! ボクは証拠をきちんと集めてあるのだ! お前が背後でそそのかしたという証言もなっ。

 学生会室に取り巻きを集め、あれをやれこれをやれと命令――」


「私は彼女を階段から突き落とせないのですから」


「ふっ。十人以上が見ているのだぞ!」


「そうです! 後ろからだったのでわたしは見ていませんが、皆が確かに貴女だと」



 どうだぐうの音も出まい。


 勝った。


 でも、ぐうってなんだろう? わからん!



 メガネが冷たく光った。


「私がこの学園にやって来たのは、3年ぶりだからです」


予告!


渾身の告発を行おうとしたが不発。

弱点を突かれ、一気に不利な状況に追い込まれるボク!

だがそこで愛しのテレーズが立ち上がり、メガネに逆襲をしてくれるのだった!

頑張れテレーズ、負けるなテレーズ!


第3話『ボクはざまぁを返される!』


……え? 返されちゃうの?


誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。

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