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1 ボクはビシッとぶちかます!

婚約破棄の話です。ざまぁされる立場の王子視点の話です。

全11話ですが、1話当たりは長くありませんので気軽に読んでもらえるとうれしいです。


出だしを見るだけでわかりますが、主人公はバカなので、あたたかい目で見守ってやってください。


では、はじまりはじまり。


 ボクはぶるっと震えた。武者震いだ!


 やるぞ、やってやるぞ!


 隣を歩くテレーズが、ボクを励ますように、手をそっと握ってくれる。


 ふたりのためにやるんだ! やってやるんだ!



 卒業パーティ会場に入ると、あいつを探す。


 どこだ!? あの灰色メガネ女は!? どこに隠れている!? 

 地味な女だから壁と一体化してても不思議じゃないが、それでも判るんだからな!

 あんなみっともないメガネをかけているのはあいつしかいないもんね!


 いた!


 ついにこの時が来た!

 奴へ突進だ! ビシッと言って引導を渡してやるぜ!


 ボクはコストレリアの王太子! 19才だからもう大人!

 やればできる男なんだからなっ!



「ガルドリング伯の娘マリアンヌよ!」


 尊大な感じに腰に手を当てて王者のポーズを決め、ズビシッとメガネ女を指さし、高らかに婚約破棄を――


「お待ち下さい殿下」


 妨害したのはメガネ女当人。いちいちカンに触るヤツだ。

 なんでこんなヤツがボクの婚約者なんだ。すぐ元婚約者になるけど。


「私の実家はガルドリングではなくゲルドリングです。

 ちなみにガルドリング家は男爵家で、娘は三人。長女でもまだ5才です。

 いささか速すぎるのでは」


 分厚いメガネの下の表情は読めない。


「うるさい! 誰でも間違いはあるのだ!」


 ガとゲのちがいなんてどうでもいいだろうに! そういうところだよ!


「それから殿下が告げようとしている台詞は言わないほうがよろしいと考えます。殿下の立場を危うくするものであり――」


「殿下! やはりやめたほうが!」


 メガネの言葉もテレーズの怯えた声も無視する。

 今いわないでいつ言うと言うのだ! 男はやるときにはやるのだっ!


 呼ぶぜ俺のターン!


「ゲルドリング伯の娘マリアンヌよ!」


 ボクはポーズを決め、ズビシリッ、とメガネ女を指さした!


「ここにっ! お前との婚約破棄をっ! 宣言するぅっっっ!」


 ついに、やった! やりました! ぶちかましてやった!



 メガネの下の表情は読めない。

 だが動揺している! そうに決まっているのだ! 泣いてもいいんだぞ!


 だってボクは王太子! こいつは今、将来の王妃、つまりこの国の一番の女性になる可能性を失ったのだから!



「言ってしまわれましたか……用意が無駄にならずによかったです」


「なぬっ!? どういう意味だっ!?」


 意味深台詞を言うんじゃない! 怖いだろう!


「それを今からご納得いくまで説明させていただきます。まず、その発言自体が無効です」


 ボクはくわっと目を開きヤツをにらみつけた。


「ボクは王太子だぞ! 王族だぞ! 王族の言葉は絶対――」


「殿下は一時的にお忘れなのでしょうが、このコストレリアには臣民と王家の間で契約された大法典が存在します。

 私と殿下の婚約は、大法典に定められた契約の元で結ばれたものです。何の根拠もなく破棄する事はできません」



 だから、こいつはっ嫌いなのだっ!


 なんでも理屈理屈理屈理屈! なんてつまらない女! ハートってものがない!

 心臓の代わりに歯車のかたまりでも入ってるんじゃないか?


 しかも地味! 飾りがほとんどない灰色のドレスしか着ない。アクセサリーもつけない。化粧すらしない。肌が不健康なまでに青白いからまるで幽霊だっ。

 婚約した頃はまだマシだったが、それ以降加速度的に地味かつ青白くなるばかり。

 メガネまでかけるようになりやがって。しかも年々ぶあつくなるとかどんな罰ゲームだ。


 今ではその表情を読むのはほぼ不可能。


 だが読んだところで不愉快なのをボクは知っている! 知っているのだっ!

 ボクを値踏みするような目。冷たく、動かず、蛇のような目。

 こんな女がいいとかいう奴がいるはずがない! もちろんボクもイヤだ!


「根拠はある! あるぞっ! お前が屁理屈を持ち出すことなど予測のうちだぁっっ」



 ボクは胸をそらした!


 ふふ。マリアンヌよ! いつもボクをバカにしていたのだろうが、今日のボクは昨日のボクではないっ!


 一年前より一ヶ月前、一ヶ月前より一週間前! 一週間前より昨日! どんどんかしこくなっているのだ! 


 今日のボクは今までのボクの中での賢さチャンピオン!


 法律だって心得ているっ! お前との婚約破棄に必要なとこだけはなっ!


 お前と婚約破棄してテレーズと結ばれるためなら、眠くなる本だって読むのだっ!

 自分で自分の太ももをつねりながらな!



「大法典は屁理屈ではありません。正式に定められた法です。それを変えるには、それ相応の手続きがいります」


「くどいっくどおいっっ! あると言ったのが聞こえなかったのかぁっ!」


 ボクはドンと足を踏みならし胸をさらにそらし、キラキラ輝く前髪を、ふわり、とかきあげて、ポーズを決めっ!

 鏡の前で何度も練習したのだ! 我ながらほれぼれする、まさに高貴な貴公子っ!

 イケメンぶりは瞬間最大風速では弟ローゼンクランツにも負けていないぜ!


「婚約はっ、どちらかが不正不義をした場合に破棄できるのだっっ! 大法典はボクらの味方なのだっっ!

 さっさと婚約破棄に同意するがぁいいっ!」


 決まった! 泣けてくるほど決まったぜ!


 ボクはテレーズを抱き寄せながら高らかに告げた!


「そしてボクとテレーズの真実の愛に道を譲るのだ!」 




予告!


渾身の婚約破棄をかましたボク!

これで愛しのテレーズと婚約できると思ったのだが、メガネは引き下がってくれない。

引き下がればお前の罪は告発しないつもりだったのに!


ボクはメガネを告発する! これで完璧な婚約破棄だ!


第2話『ボクは勝利のポーズを決める!』


正義と愛がタッグを組めば勝利まちがいなし!


誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。

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