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第五話 少女の笑顔。

「貴方の、お名前を教えてもらうことは、できますか?」


なぜか、それが気になった。


彼の名前が、彼が誰なのか。


「俺の名前は、神田山勇馬。 お前の幼馴染だよ!」


そういって、彼はとても笑顔で答えてくれた。


その笑顔が、なぜか心地よく感じた。


「実はね、涼葉。 お前は、大切な人と過ごした時間。記憶。 そしてその大切な人自身を忘れてしまったんだよ」


「何言ってるの。 ぱぱ・・・」


「これは本当のことだ・・」


「そんなことって、実際にあり得るの??」


「あり得るって、今お前が証明してるだろ・」


「何でよ! 神田山勇馬? って人とあったことないし!」


本当に誰なのだろうか。 それが全く分からない。


さっき「お前の幼馴染だよ!」と言っていたが、私には幼馴染は居なかったはずだ。


「本当に、忘れてしまっているのね・・・」


母が、悲しそうな目をして、うつむいている。


なぜうつむいているのか。 そしてその目は、先ほど神田山勇馬が一瞬だけ見せた目と、そっくりだった。


外からカーテン越しに明るい光を感じる。


「朝、か、」


ベッドから体を起こし、カーテンを開ける。


開けたとたんに、太陽の光が私の体全身を覆ってくる。


「うう、 眩しい、、、」


今日は快晴だ。雲一つない快晴だ。


外でスズメ二羽が朝日に照らされながら、楽しそうにリズムを刻んで鳴いている。


「あの子たちは恋人同士なのか、な?」


と、自分は分りもしないことを、自分自身に問いかける。


「いいな、彼氏がいて」


そう、質問してきた自分に、質問の答えになってない答えを、言う。


「朝日が、今日もきれいだな」


ここの病院は、立地がほかのところよりも高い分、太陽の光や、景色とかがとてもよく見える。


今、私が起きた瞬間に、どれだけの人が起きただろうか。


どれだけの人が寝てるだろうか


そんなことを思い、細い目をかく。


そのあとは、あまりおいしいとは言えない病院食を食べ、歯磨きをして、病内にある自動販売機へと向かった。


私とは反対のほうからも、歩いてくる少女を見つけた。


小学5,6年生くらいだろうか。


顔立ちは幼く、とてもかわいらしい容姿をしている。


自動販売機の前で、私は足を止める。


すると、自動販売機の前にもう一人の人物も足を止めたのを感じた。


「お先どうぞ」


私が手で促しながらそう、少女に言うと、


そのかわいらしい少女は、


「ありがとうございます!」


と、私の目をまっすぐ見て、とてもかわいらしい笑顔で、お礼を言ってきた。


いえいえ と、少女に返しながらつい笑顔になってしまう。


女の私でも、見とれてしまうものがあったな。。。


その少女は並べられている飲み物などを見ながら、 ん~~  と言いながら


少し迷っていた。


とてもかわいらしい。


ついに何にするか決めたのか、お金を入れ、その缶の冷たいココアを押した。


とても満足そうだ。


「譲ってくれて、ありがとうございました!」


またもや私の目をまっすぐと見て、笑顔でお礼を言ってくる。


小学校で言われたのだろうか、 人にお礼するときはきちんと相手の目を見て


お礼してください、と。


とても良い心がけだな。 いい子なんだろうな、と思いながら私は、少女と入れ替わるような形で自動販売機の前に立つ。


「どういたしまして」


そう言うと、彼女はさらに笑顔になった。


私は500円自動販売機に入れ、かる〇すと、この自販機は飲み物のほかにお菓子も売っているので、タブンカットを購入する。


音を立て、商品が落ちてくる。


落ちてきた商品を手に取ると同時に顔を上げると、助けを求めるかのような顔でこちらを見てくる、少女の姿があった。


「どうしたの?」


すると少女は、恥ずかしそうに、


「蓋が硬くて開けられないので、開けてもらっても良いですか?」


子猫のようにくりくりとした目で、助けを求めている。


もちろん、「いいですよ~」  と言って、開けてあげた。


プシュッと良い音を立て、飲み口が開いていく。


またもやありがとうございますと、笑顔で言ってから、すぐそばのベンチへと歩いて行く。


「君、名前なんて言うの? あ、隣良いかな?」


座ってココアを飲んでいる少女にそう尋ねる。


少し戸惑った様子を見せながら、 「あ、どうぞ!」  と言ってくれたので、少女の隣に座る。


「名前は、一ノ宮彩と言います!あ、上総一ノ宮駅の一ノ宮に、彩るでさいです!」


「かわいい名前だね。 私は佐々木涼葉。 佐々木はよくある佐々木と、涼しい葉っぱで涼葉ね」


「よろしくお願いします!」


相変わらずこの子は元気が良いな~。


「涼葉さんはどうしてこの病院にいるんですか?」


「なんかよくわからないんだよね。 なんで入院しているのか」


「体は元気なんですか?」


「うん! 見ての通りめっちゃ元気なのにね~」


そういって、私は腕をぐるんぐるん回す。


「不思議ですね~」


そう言って、彩ちゃんは顎に手を当て、悩んでいた。


「そんなに悩む?(笑)」


「はい!とても気になります!」


自分が気になったことをちゃんと自分で考えて答えを導きだそうとしている。


うん。 この子は良い子だ。


「彩ちゃんはなんでここにいるの~?」


そう聞くと、彩ちゃんの目が一瞬元気な目じゃなくなったのを、私は見逃さなかった。


「そうですね、、、、   涼葉さんになら言ってもいいですか、、」


私はゴクリと唾をのむ。


「私、片腕が事故で無くなってしまったんですよね~」


少女は無理やり笑っていた。


きっと心配してほしくないからだろう。


だから、笑顔を作っていた。


でも、


少女の目は、一ミリたりとも笑っていなかった。

えへへ

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