表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第三話 あの子の名前は。

第三話


「え、あのーすみません。 俺って貴方に会ったことありましたっけ。」

こう聞くのも当たり前だ。

突然あったこともない人に俺の名前を平然と呼ばれることはあるだろうか。

いや、ないない。

果たして、何なんだろうかこの女は。

「そっかー。やっぱり知らないかー。」

「ん?やっぱり?」

やっぱりとは何だろうか。

ますます気になってくる。

「てか、貴方のお名前は?」

すっかり忘れていた。

「しりたい???」

からかうように聞いてくる。

こっちはまじめに聞いているんだ。

「私の名前はね、岸森莢。っていうんだー」

きしもりあや?

なんか聞いたことがある気がしないでもないけど、よくわからん。

俺の名前を知っているということは、何かしら接点があったのだろう。

「あの、すみません。 俺たちって昔何か接点でもありましたか?」

一応聞いてみる。

「それは自分で考えてみなさい!」

やはり、期待していた返事は、帰ってこなかった。

でも、否定はしないということは、何かしらあったのだろう。

「まあいっか。」

今はそれどころではない。

涼葉のことでいっぱいいっぱいなのだ。

「それじゃあ、俺はもう行きますね。 暗くなってきたし。」

これ以上遅くなると、親に怒られそうだ。

「しょうがない。帰っていいぞ。 またな、少年。」

「はーい 失礼しまーす」

そこから歩き、バスに乗り込んだ。

「一体、何だったんだろう。」

そこから数十分、バスに揺られ、箱根湯本駅に帰ってきた。

涼葉のことは、だんだん薄れていって、切り替えることができそうな気がしていた。

改札を通り、数分前から止まっていた電車に乗り込む。

「ふひぁあ~」

ついあくびが出てしまう

「電車でちょっと寝るか。」

{この電車は、各駅停車 新宿行です。}

電車が発車したと同時に、俺は寝てしまった。


私は目を疑った。

そこには、勇馬君がいたから。

もしかしたら覚えているかもしれない。

と、おもって声をかけたんだけど、な。

「やっぱり覚えてなかったか。」

さすがにもう治ってると思った。

「人は忘れるのは簡単だけど、思い出すっていうのは難しいのかな。

あの頃みたいにまた一緒に遊びたいな。。。」

気づいたら涙が出ていた。

泣く気はなかったのに、なぜか涙が出てしまった。


「ゆうま何だこれ! なにこのストラップ きーっもちわりぃーーー!」

「うわぁーーたしかになにこれぇーーー!」

「みんなーゆうまがこんな気持ちわりいものもってまーす!」

「べ、べつにいいだろ! 俺がなに付けてようが!」

「なんだおまえ ゆうまのくせに生意気な!」

ストラップが教室の窓を超え、宙に舞っていく。

重力に逆らえずに地面へと落ちていく。

勇馬はストラップがこなごなになっていたのが見えた。

「おまえ! よくもやったな」

「お?なんだゆうま やるか?」

ゆうまは投げた本人の顔を思いっきり殴った。

まだ小学生だったため、あまり強くなく、地面にうずくまっている。

教室の地面に赤い液体がついているのが見えた。

それから数分後

先生がやってきた。

おそらく誰かが言ったのだろう。

「ゆうま!こっちにきなさい! あとそこの男子たちも!」

勇馬は先生に従ってついていく。

後ろの男子たちもめんどくさそうにしていたが、ついてきた。」

殴られた本人はというと、みんなや他の先生に大丈夫??

とか言われている。

ゆうまたちは、先生に連れられ、教材室に向かった。

そこで男子たちは、口裏を合わせていたのか、みんなで嘘をつき、ゆうまが悪いということになった。

もちろん、モノを投げたりだとかは、言っていない。

なぜ、そこにいなかった人が、どっちが悪いとか、「それは嘘だろ」、とかを決めつけるのだろうか。

なぜほんとのことを信じてもらえないのか。

ゆうまはもうこの人生が嫌になっていった。

後日、相手の親も呼ばれ、話すそうだが、

「どうせ俺の言うことなんて信じてもらえないだろ。」

と思っていた。

その日、学校はやっと終わった。

放課後、呼び出されたので帰りが遅くなった。

そこでも、勇馬の言うことは信じてもらえなかった。


河川敷に腰を下ろしているとき、猫がこっちによって来た。

「にゃーーー」

可愛らしく鳴いている。

「お前は気ままで良いよな」

「にゃあ」

返事をしてくれたが、たぶん伝わってないだろう。

今は猫と会話できるようになって、話を聞いてもらいたい気分だ。

「にゃああーー」

猫はそう言うと、そこから去っていった。

「はあー。」

そこには再び静けさが戻る。

すると突然。

「世の中って不思議だよね。」

と、隣から聞こえた。

勇馬が相手の顔を見ても、横顔しか見えなかった。

凄く、綺麗な横顔だった。

「明らかに相手が悪くても、嘘を言ってても、人数が多いほうのことを信じるんだもんね。 そんなのおかしいよ。 うん おかしいに決まってる。」

勇馬の世界に、一本の光が見えたように感じた。

「あんた 誰?」

「えぇー!私のこと知らないのー!」

初めて会ったんだから知らないのは当たり前だ。

何言っているんだろうかこの女は。

それともなんかの有名人だろうか。

いや、やっぱり違う。こんな人見たことがない。

「しらない で、誰?」

「私はね、実は、」

勇馬がごくりと息をのむ。

「君を救うために、この世界にやってきたんだ。!」

何を言っているんだこの人は。

「うそつけ、何言ってるんだよ」

そんなこと、あるわけがない。

「うん!うそだよぉ」

「は?」

謎の女は漫勉の笑みでこっちを見てくる。

その表情は、とても可愛らしかった。

ほんとに何なんだろうか。

この人は。

「でもね。 君を救うために今ここにいるのは、ほんとだよ」

そう言って、彼女は立ち上がった。

その時の彼女の表情は、さっきの笑みとは違く、真剣な顔だった。

「ゆうま君だっけ?」

突然そう聞いてくる。

一瞬戸惑ったが、適当に返した。

「あ。はい。」

俺も名前を聞こうと思ったが、あまり興味がなかったので、聞かなかった。

「私は、一学年上だから、困ったらいつでも来てね!」

そういって彼女は立ち去って行った。

「ほんとに何だったんだ」


「おーーーいゆうまくーーーん!」

それからというもの、登下校時に、見つけてはこうやって声をかけてくるようになった。

休日に一緒に遊んだり、家に行ったり、今まで暗闇だった俺の人生が、明るくなったように感じた。

その彼女の表情は、とてもきれいで、可愛らしかった。


でも、その楽しい日々は突然終わりを告げた。

「おーーーーーい! ゆうまくーーーーん!」

私はいつも通り、そう声をかけた。

だが、彼の反応は、いつも通りではなかった。

「だれ? あんた」

最初は彼の言っている意味が分からなかった。

彼が私をからかうために冗談で言っているのだと思った。

「なにいってるのゆうまくんー」

私はそう言った。

でも、帰ってきた返事は、私の思い描いていたモノではなかった。

「いやいや、本当に誰ですか。 要件がないなら行きますね」

「ゆうま、くん。。? 本当に、ゆうまくん、なの?」

この人は偽物!と思っていた。 

いや、偽物であって。と、思いたかった。

違うのは知っていた。 そんなはずないのだから。

「はい、そうですけど何ですか?」

うん。分かっていた。

「ごめんなさい。 人違いでした。」

そういうしかなかった。

もっと長い時間今みたいなことを話していたら、私が耐えられなくなるから。。

「あ、そうですか。 では。」

ゆうまくんが回れ右をして去っていく。

そこにいるのは私の知っているゆうまくんなのに、

私の知っているゆうまくんではなかった。

気づけば私は泣いていた。 泣いていたと同時に、疑問が浮かび上がってきた。

なんで、この短時間で、ゆうま君は私のことを忘れてしまったの、と。


「寝ちゃってたな~」

そこはバスの中だった。

目が乾いているのを感じる。

「あれ、私」

もう涙は止まっていたが泣いていた。

夢で泣いてしまったのだろう。

ゆうまくんとの昔の夢。

「あんまり変わってなかったなぁー」

一人で頬が緩んでしまう。

「外見も、性格も、私のことを知らないことも。 覚えてて、欲しかったな。 そういえば、勇馬君。なんで泣いてたんだろう。」

私には所詮関係のないもの。

そうだとしても、気になった。

「まあいっか。」

このまま考えていても、きりがないので考えるのをやめた。

「次は、勇馬君の夢をみませんように」

そう思いながら、私は再び眠りについた。


「次はー〇〇〇〇です」

そんなアナウンスとともに、俺は目が覚めた。

「ああ、つい寝ちゃってた。」

電車のドアの上にあるモニターに目を移す。

「やべ!降りる駅だ!」

もうドアが開いてから数秒経っている。

結構やばい。

「まにあええ!」

「ドアが閉まります。ご注意ください」

「はあ。はあ。」

「ぎりぎり間に合った。――」

あと数秒遅れていたらきっと間に合わなかっただろう。

急に激しく動いたので、足が痛い。

俺は少し早い呼吸をしながら、ほかの路線へと乗り換える。

「そういえばさっき、なんか夢見てたな」

誰の夢かはわからない。

「俺の昔の頃か?」

いや。違うだろう。

あの夢のことなんて、現実では起こってない。

では、果たして誰の夢だったのだろうか。

はたまた、俺の単なる妄想なのだろうか。

さっぱりわからない。

でもなぜか、あの夢が頭から離れなかった。

鮮明に、俺の脳に焼き付いていた。

「あの夢は一体何だったんだろう」

そして、あの出てきた女は誰だったのか。

あのなれなれしくいた女は。

「まるでさっきの女みたいだな」

そういって鼻で笑う。

「さっきの女、」

名前は何だっただろうか。

岸森、、、碧? 葵?

「もしかしたら、あの女があの夢に出できた女かもな」

俺はまたもや鼻で笑う。

その瞬間、あたり一面が真っ暗闇になった。

俺は周囲を見回す。

何もない。

これが{無の世界}というものだろうか。

「ゆうまくん!」

誰かが俺の名前を呼んでいる。

「こっちだよゆうまくん!」

周りに何もないので、方向が分かりにくい。

「こっちだってば!」

誰かがそう言って笑っている。

まるで、さっきの夢に出できたあの女のように。

いや、

そこにはあの女がいた。

「おまえ。夢に出できた」

「おお、あったりー!」

にこにこと笑っている。 とても、楽しそうだ。

「なんで夢にいたやつがここにいるんだよ」

俺はよくわからなかった。

普通、そんなことができるだろうか。

「お前、名前なんて言う?」

気づけばそう口にしていた。

これは聞かなければいけないと思った。

「え?? なに急に」

「いいから教えてくれ、」

なんでかわからないが、すごく名前が知りたい。

「やっと聞いてくれたね。

私の名前は、岸森 葵って言います!」

そう言って、彼女は凄く笑っていた。

綺麗な顔で、笑っていた。

その瞬間、俺の脳裏に、小さい頃の彼女との記憶が思い出される。

細かく、鮮明に思い出される。

大切な人の無くなってしまった記憶が、今、思い出される。

「あれ、何だこれ。。」

ずっと忘れていた。忘れてしまっていた。彼女との記憶が。

忘れてはいけないのに、忘れてしまっていた、彼女の記憶が。

「やっと思い出してくれたね! ゆうまくん!」

その彼女の声は、先ほど展望台で会った女の声と、重なって聞こえた。

そして、思い出される。

彼女が必死に話しかけても、誰かわからずに対応する、俺の記憶も。

そして、絶望の顔をしていた、彼女の顔も。

しかし、忘れてしまう前日と、忘れてしまった日の間の、空白の時間は、


思い出されることは無かった。

かくの楽しい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ