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第二話 君と行きたかった。

「すず? 今、お前なんて言った?」

もしかしたら幻聴かもしれない。

「いや、だから、貴方どちら様ですか?」

今度ははっきりと聞こえた。

俺の胸の鼓動が高まるのを感じた。

そこには涼葉がいるのだ。

俺の知っている涼葉が。

あの可愛らしくて、優しくて、でもちょっとおちゃめな。

涼葉がいる。

               はずだった。

「俺のことわからないのか。?」

「だからわからないです。 すみません。」

涼葉の目が怯えている。

こんな涼葉の目を見たことがない。

まるでそこには、別人がいるような感覚だった。

「明日の約束、覚えてないのか。?」

気づけば俺は、そう口にしていた。

「何ですか、明日って。 そんな約束何もしていませんけど。」

そんなこと、聞かなくても分かっていた。

すごく楽しみにしていた分、悲しみが多かった。

「昨日楽しそうに約束したじゃないか!!」

つい大声をあげてしまう。

なぜか悲しみの気持ちやりも、イライラの気持ちが芽生えてくるのを感じた。

「今日だって、何食べようとか、何話そうとか、考えていたのによ!」

涼葉のほうに目線を上げる。

涼葉の目はとても。怯えていた。

本当に俺がだれか、分からないらしい。

「ごめん、なさい」

涼葉をこんな目にしたのは自分だと、今気が付いた。

「こっちもごめん。 急にいろいろ言っちゃって、 怖かったよな

じゃ、じゃあ、俺帰るわ!}

そういって病室の扉に手をかけた時、

「待ってください。」

涼葉が呼び止めてきた。

「貴方の、お名前を教えてもらうことは、出来ますか?」

もう来ないで下さいとか、そういったことを言われるかと思った。

でも俺は即座に答えた。

「俺の名前は神田山勇馬 お前の幼馴染だよ!」

涼葉は少し考える様子をしていた。

そんな涼葉に覚えてくれたらいいな、と思いながら、病室を出た。


                *



「神田山勇馬、か。。」

果たして、そんな幼なじみがいただろうか。

「いやいや。いないよ。」

誰かに話しかけるように、私は言葉を発していた。


「涼葉? 起きたか?」

目の前に男性と女性が居る。

「ぱぱとまま?」

目の前にいるのは両親だ。

「ねえ。神田山勇馬?って誰か知ってる?」

考えるよりも先に、そう言葉を発していた。

私がそう聞くと、二人は顔を合わせて、目を見開いていた。

少しの間があった後、最初に口を開いたのは、母だった。

「涼葉、ほんとに覚えてないの。。?」

「まさか、先生の言っていた通りだとはな。」

二人は何を言っているのだろうか。

さっぱりわからない。

「ねえ、なに?? ちゃんと言ってよ!」

両親が顔を合わせてうなずく。

「実はね。涼葉。 お前は。・・・」



                   *


「そんなことがあったんだっけ。」

あの後、何も考えずに家に帰ってきて、何も考えずにベットに直行したようだった。

俺は服を着替え、お風呂に入り、ご飯を食べ、着替えて、家を出た。

気づいたら俺は駅にいた。

今から箱根に向かうのだ。

本当だったら涼葉と一緒に行くはずだった箱根。

俺は改札を抜け、下り列車に乗りこんだ。

途中、電車を乗り換え、電車に乗った。

行く途中でも、涼葉のことが頭から離れたことはなかった。

「終点 箱根湯本です。 お出口は右側です。」

男性の方がアナウンスをしている。

今時、自動放送ではないのは、珍しい。

休日だけあって、人が多い。

俺も、人の流れに乗って、改札を出た。

涼葉と行くはずだった箱根。

また今度一緒に行けばいいだろう。というのも、いまは無理だろう。


「かつ丼を一つ、お願いします。」

俺は、涼葉と行くはずだったお店に来ている。

涼葉はここで、何を頼んでいただろうか。

そんな考えが、何度も頭をよぎる。

お昼時を過ぎた店内は、意外と空いていた。

店内には、ほかにいた客の声と、テレビの音で満たされていた。

「ありがとね~」

「ごちそうさまでした。 おいしかったです。」

そう言って、店を出る。

俺は、少し歩いた後、バスに乗り込んだ。

バスに50分ほど揺られ、ようやくついた。

「きれいだなあ。」

そこには、大きな湖が広がっていた。

日本で一番高い山、富士山も見えていた。

しかし、求めていたものは少し違った気がした。

少し経った後、もう一度歩き始め、バス停へと向かう。

前から可愛いぬを連れている、60代くらいの夫婦がやってきた。

この時、涼葉が居たらどうするだろうか。

「かわいいですね!」とか、

「いぬだあ!」とか、言っているのだろうか。

そんなことばかり、考えてしまう。

考えないようにしても、どうしても頭の中に出てきてしまう。

楽しそうな涼葉の顔が。


再びバスに乗り込み、体を揺らされていた。

バスの中では、子供連れの家族や、運動部っぽい同じ年くらいの男子たち、お年寄りの夫婦、仲がよさそうなカップル。

様々な会話の声で盛り上がっていた

20分くらい揺らされて、到着した。

「うおお。。」

思わず声が漏れてしまった。

そこには、{大観山展望台}と書かれた木の像と、

薄く赤くなり始めた空と、緑の山々。芦ノ湖。そして富士山の絶景が広がっていた。

そこに着いた一瞬、涼葉のことを忘れていた。

「ここだ。 ここだよ! 求めていたのは!」

思わず声が漏れてしまう。

それほど、綺麗だった。

俺はそこに、数分、いや、数十分ほど突っ立っていたかもしれない。

涼葉と来ていたらどんな気持ちになっただろう。

そんなことばかり考えていた。。

「ん?」

手に何かが垂れるのを、感じた。

「あれ、俺なんで。。。」

その正体は、すぐに分かった。

いつの間にか、俺は泣いていた。

「泣くなんて、十年ぶりぐらいだな。」

それほど、涼葉の存在は大きかったのだ。

普段全く泣かなくても、泣いてしまうほど。。。


そこから、数十分が経った。


「芦ノ湖って上から見たらなんかの動物に見えるんですよ。」

外見は結構整っている女性がそう話している。

「ちょっと、無視ですか?!」

誰かに無視されているのだろう。

かわいそうな女性だ。

「ちょっと?君に言ってるんですよ?」

「ん?」

声が隣からした。

「ああ!やっと振り向きましたね」

どうやら、俺に言っていたらしい。

「どうしたんですか?そんな泣いた後みたいな顔して」

泣いた後、拭くのを忘れていた。

「な、泣いてないですよ。」

嘘だ。 さっきがっつり泣いた。

なんか、恥ずかしくなってきた。

「嘘ですよね。ばればれですよぉ」

ばればれだったらしい。

嘘をつき続けても、らちが明かないので、認めることにした。

「で?なんですか?トイレですか? トイレはあっちですよ?」

正直、うっとうしかった。

今、ちょうどいい感じだったのに。。

「ち、違いますよ!」

「じゃあ何ですか?」

「いやあ、泣いてたから、どうしたのかな~って。」

「どうもしてないですよ。」

ほんとか~?っていう顔を向けてくる。

「てか、貴方こそなんですか?」

初対面の相手にここまでぐいぐい来るのは凄い。

「私のことは良いんだよっ!」

ぷいっと顔を背ける。

一体なんなんだこの女は。

「本当はなんかあったんでしょ。 このお姉さんに言ってごらん。 

       



       勇馬くん・・・。」



その瞬間、俺は動揺を隠せなかった。

「なぜ、俺の名前、を・・?」


初めての作品第二弾です!

ぜひ、次も読んでくれると、幸いです!

これからも、よろしくお願いします。

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