除幕 語るのみには虫が良すぎるか
『泣き虫』
その意はと言うと、すこしのことにもすぐ泣いてしまう人のこと。また、その性質を嘲って言う語のこと。
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建前じみた説明を披露致しましたところで、拙著をお読みの皆様におかれましては、このような言葉の意味など百も承知、二百も合点でしょう。
世に言う自明の理、というものでしょうか。
然しながら、御存知なかったという御方がいらっしゃったとしても、それを恥じることは一切ありません。
いっその事、
「そういうことだったのか!」
といった具合に、読後の人生の糧にすべく留意して頂けると至極幸いです。
――否。本題はそこではなくて。
“何故、このような話を書き綴っているのか”
私には先の言葉に纏わる皆様にどうしても、どうしても読んで――聞いて頂きたい不可思議な話があるのです。
閑人閑話と思って頂けると有難いかぎりです。
ずばり、
“一般に人々は『泣き虫』と耳にした時、一体どのような想像をするものなのか”
です。
それでは、私の狂おしいほどの知識欲――というか探究心というか、ありとあらゆるそれらが本領を離れ、入り乱れ、狂い咲いた愚直な欲望群――を満たす為、皆様にはしばし想いの深淵にある像に馳せることで御力添えをば。
馳せられましたか?
誰の意見も気にすることなく、御一人で、御自身だけでなされましたか?
きっと、皆様の思い馳せ、巡らせ着地されたものは――そうでなく、どのような身分の、どのような年代の者に聞いたとしても――「木偶の坊」で「脆弱」で、モンスターと比較するなら「スライム以下」と言ったところでしょう。
そういうものが最も正常な、世情を知り得た真っ当な意見だと私も思います。
――本来であれば。
然し然し、だが然し。
私の知っている『泣き虫』はそのどれにも当てはまらないのです。
当てはめることができない、と言うべきでしょうか。
彼は「才覚者」で「強靭」で「ドラゴン以上」と言っても全くもって過言などではありません。
これら幾分かの文字の羅列で易々と計り、著すことも躊躇いが抜け切らないほどに。
いや、寧ろこれ以外にどのように表現すればいいのやら。
ものを良く知り得、教えてくださるという方が若しもいらっしゃるのであれば、是非に御享受賜りたく存じます。
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――閑話休題。
それでも、本質的に、生物の根幹としては『泣き虫』に変わりない――というか異様なまでの『泣き虫』、なのですが……
十五と言えども物凄く小柄なところと、稀有ではあるものの垣間見える――見せてくれる童子らしきところなどは、まさしく! なのですが……
ではなくて。
このままでは、あれこれ話すうちに拙著が与太だけでいみじく長い駄作となってしまいそうです。
詰まるところ、要するに、私が何を言いたいかと言うと――この新米泣き虫冒険者が稀代の異常者で最強だということです!!