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転生管理士  作者:
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1話-①

改札を抜けたすぐ先にある信号を渡ると細い路地があって、少し歩くとこじんまりしたビルが見えてくる。そのビルの2階に事務所は構えていた。今日は初出勤日。若干の緊張を押し殺して、ゆっくりと扉を開ける。


「おはようございます」

「あ、おはよう森嶋くん」


部屋の奥から声をかけてくれたのは、「転生管理士」の女性、丸山さんだ。


私たちの世界では、日々さまざまな「次元」が作成されている。人間は初め何もない空間に存在するのだが、彼らは偶然、言語や風貌のような何らかの共通点を見つけることがある。すると彼らはそれを必然のものと空想して、自然環境や物理法則、国家体制といった諸要素を内包する「次元」を構築する。私たちの世界もそうした次元の1つというわけだ。このとき、次元が世界として駆動するためには、「主人公」という存在が必要不可欠となる。各次元の人々は他の次元の人間を召喚するか、あるいは同次元の人間を選定しなければならない。そのため、主人公が定着してくれるような快適な次元の構築は、世界を運営するために非常に重要な工程といえる。ここで、その工程の調整を図っているのが「転生管理士」と呼ばれる職業だ。主人公がどのような世界を求めているのか、それに対して次元の要素をどのように設定すべきか。そういった事柄を顧客と話し合い、顧客の要望を踏まえた世界像を提案する。新しい次元を始める方々にいくらかは貢献できる仕事だと期待している。


簡単な挨拶を済ませた後、仕事についての確認をする。自身の緊張とは裏腹に、雰囲気は穏やかで少し安心することができた。


「まずは仕事場の紹介をします 」


丸山さんと他愛のない世間話をしつつ、給湯室や本棚、仮眠室、打ち合わせ用の部屋といった事務所内の設備について教えてもらった。


「…だいたいこんな感じかな。じゃあ、12時からお客さんとの打ち合わせだからよろしくね」

「分かりました。いきなり僕がいても大丈夫ですか?」


一般的な事務所ではしばらく見習い扱いで働かされることが多いと聞いていたので、早速打ち合わせを体験できるというのは嬉しい誤算だった。


「うん、大丈夫。むしろいきなり手伝わせちゃってごめんなさい」

「いえ、いろいろと学べたらと思います」


この事務所では丸山さんのほかに、あと2人管理士の方が働いている。ただ仕事が多すぎててんてこまいになることはあまりないらしい。のんびりできるところもこの仕事の魅力の一つだ。

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