きみは夏めく
詩集というものを編むとき
わたしは或る人を思い浮かべている
それはきみであり、あなたであり、わたしである
それは快楽であり、不快でもあり、胡散臭くもある
切実な詩情への肉薄が
夏という人生の幕間において
なにかひとつきみという存在が美しく
または醜く 滑稽でいて繊細な
純粋にあたらしい生命への昇華となる
そのような妄想をしている
詩集を編むということは
わたしの生命の積極的な昇華である
と、同時に
わたしの生命への必然的で痛烈な非難である
詩集を編むということは
幸福でもあり 絶望でもある
詩を書くということは
わたしが生きようとすることであり
わたしが死のうとすることである
わたしは詩を書くごとに今日を生き延び
また明日の死を用意している
季節を愛し 恨んでいる
この人生の幕間でしかない刹那の夏に
重たい翳をもちだしている
だのに
だのに
きみが夏めくとき
詩はひとつの愛になった!
きみが夏めくとき
詩は恋の白痴になりはてた!
きみが夏めくとき
詩はみずからを忘れた!
わたしがきみの夏めくさまをただ思い描くとき
そこには恋しかなかった!
わたしはいま
詩を書き、詩集を編んでいる
生命というものを綴じている
すると生命はなぜか
ひたすらに夏を欲しているのである