1/7
本編
俺は安定を好む。
お酒やタバコを許される年になったからと言って飲み会で朝帰りなんかした事もないし、ましてやタバコを吸ってみたいなんて思った事もない。
大学に入学して、自分とはまるで世界が違う人達に出会うことも多かったが、バンドしてお酒飲んで毎日パーリーみたいな派手な友人も一人も作る事はなかった。
久しぶりに会う高校の同級生で派手に遊ぶようになった奴もいたけれど、まぁ、自分はこのまま変わらず、若気の至りみたいな事も特にないまま社会に出ていくのだろうと思っていたのだ。
それなのに…
「あの~、ちょっとそこのお兄さん。警察なんだけどね、ちょっとご協力お願い出来るかな?」
人が行き交う東京の街。
警察のおじさんは怪しむような目を向けながら俺の方に近づいてくる。しかしこの場合正確に言うと、俺の方にではなく、"俺の横を歩く男の方に"だ。
もう一度言おう。
俺は安定を好む。
それなのに……!
俺は一体なぜ、真昼間から警察の職務質問にあうような人と一緒に行動しているのだろうか。