7
まだ、勇者に敵わないのか。
マイケルは魔王を倒し、加齢で力に陰りが見えていた勇者にさえ勝てない現実を思い知らされるまま、勇者がやって来た日の朝を迎えた。
愛するジリアンとのささやかな生活がもうすぐ壊される。
純粋で一点の曇りもない明るい、このジリアンはもう二度と戻ってこない。
「俺はどんなことが遭っても、お前を愛している」
マイケルはジリアンを抱き締めた。
「何、言ってるのよ。あたしも愛しているわ」
これから起きることを何も知らないジリアン笑って、マイケルの背中に手を回す。
そして、ジリアンは絶望が待っている村長の家に向かった。
あとは前回の繰り返しだった。
勇者が旅立ってすぐにマイケルはジリアンと村を出た。村人たちは勇者の子どもが生まれて出ていく時と同様にホッとした様子だった。
前回と同じように冒険者生活をジリアンと過ごした。
やがて勇者の子どもが生まれた。
それでも、前回よりもマイケルとジリアンは幸せだった。
ジリアンは村人に迷惑そうな顔を向けられることも、嫌味を言われることもなかった。
マイケルは凄腕の冒険者で、ジリアンを守る力があった。
ジリアンと死に別れ、勇者の子どもも独り立ちしたマイケルは再度、勇者に挑んだ。
それでも、勇者は倒せなかった。
魔王を倒した勇者なのだから、勝てないのは当たり前かもしれない。
それでも、マイケルは諦めなかった。
時間が巻き戻されてジリアンと村を出た後は、名人や天才がいると聞いては弟子入りしに行って、スキルを磨き続けた。
ジリアンよりもマイケルの死ぬ時期が早いことがあったり、その逆もあったが、繰り返される日々の中で、とうとう勇者を倒せた。
そして、時間は冒頭に戻る。
勇者が村に来た日に巻き戻されたマイケルは、女衆が帰るのを見届け、村長の家に忍び込んだ。
今度こそ、勇者を倒すと。