プロローグ
※この話は胸糞です。
※胸糞が嫌いな人はこのページとエピローグだけ読んでください。
※繊細な人は鬱と人間不信になる可能性があります。
「マイケル! なんでだよ、マイケル?! なんでお前がこんな目に遭わないといけないんだよ?!」
一晩中燃え続けた家の残骸に向けて、煤で汚れた顔のミックは叫んだ。
彼と同じように夜明けまで消火活動をしていた村人たちの顔も煤けていて、疲労の色が濃い。それでも、心境は同じだった。
なんで、マイケルがこんな目に遭わないといけなかったのかと。
マイケルの親友だったミックは特に信じられなかった。
こんなことなら、マイケルの妻に勇者の相手をさせることを反対しておけばよかった。
そうしていたら、マイケルが勇者と争い、家ごと燃やされることもなかっただろう。
勇者に殺され、家ごと焼かれたのはオレのせいだとミックは自分を責めた。
勇者に殺されたあと、マイケルの死体を自分が運ばせてもらっていたなら、村の墓地に埋めることもできただろう。
これでは、墓に入れられるものは骨だけだ。
家も焼かれてしまったから、棺に入れられるものも実家に残されたガラクタだけだ。
魔王を倒す為に選ばれた勇者様が村に来た時は村中が歓喜に湧いた。
だが、マイケルが死ぬ――――殺されることになるのだったら、村総出で歓迎などしなかっただろう。
そんな彼らは知らない。
マイケルは村人たちよりも勇者を憎み、恨んでいた。何十倍、何百倍も。
そして、村人たちのことも。親友だったミックを含めて。