望まない結果
「あの、お母様。
私、和樹さんから正式な申し出を、お受けしていません」
言うに事かて、なんつうことを口走るんだ、君は!。あの怜奈さん、さっき『好きな人と結婚したい』とか、吐かしたよな。
な! 吐かしたよな。どの口ぶら下げて言ってんだよ。俺も終いにゃあ、怒るぞ!。
「……」
(イヤに背中が寒いな)
冷気を帯びた、母の形相が変わった。般若のお出ましだ。
「和樹さん」
「はい」
「……」
(母さん、無言で、ね! はないよ)
ねって、皆の前でプロポーズしろと。
なんだ、この公開処刑は。
お! お! 期待に満ち溢れた友人に対し。ルーナ、イアラ、リナの冷やかな目線。それに対して、隣の怜奈は……。
ウェルカム、て。
お前のその態度が一番信用ならんわ。
(後で何を企んでいるか、吐かせてやるからな)
最後の足掻きをしてみた。
「言わないとダメ?」
「言わないと駄目ですね」
期待通りの回答がきたよ、これで八方塞がりだ。
そんな嬉しそうにするなよ。はぁ、諦めるしかないのか。
「ここで?」
「はい、ここで」
生殺しだな。本気の公開処刑きたぞ、これ。一秒が凄ぇ長ぇな。
(逃げたい)
…… やっぱ、可愛いんだよな。いやいや、騙されちゃ駄目だ。くぅ~でもな……。怜奈の顔に絆される、俺って。
普通さ、ムードがある場所とかさ。食事中とか、色々あるでしょに。なんで皆の前で、しかも親の前でだなんて嫌すぎだよ。
他人事だと思いやがって、ニヤニヤしてんじゃねえぞ、お前ら。勿論、連れ三人である。
ルーナ達は複雑な表情だな、それほど、怜奈と俺が付き合うのは嫌なのか?。理由が、さっぱり分からんが。
あの怜奈さん、微笑んでせがむのやめて。
「……」
覚悟を決めるしかないのか。くそ!。なるようになれ……。
「怜奈……。
お、おれと結婚してください」
「はい。
浮気したら離婚ですからね」
それが狙いか!。