恐怖の帝王
首が締まるかのスン止め。
苦しくはないのですが、この体制は非常に辛い。ルーナの顔が、胸が、ちょっと前に倒れればキスが出来る距離感で、それにムチャクチャ良い香りがする。
女性に免疫がない俺には刺激が強すぎて、もうね、限界なんです!。
(早く解放されたい)
「あのさ。
ちょ~と落ち着こうか。
事情を説明するから放してくれると有難い」
(堪えろ俺!)
怜奈の冷たい目線か突き刺さる。やめて、そんな目で俺を見ないで。
「ルーナ……」
右手を肩に置いて、首を振る怜奈に感化されたルーナは冷静さを取り戻して俺を解放してくれた。
(フゥ、これで一安心)
あの怜奈さん、然りげ無く脇腹を抓るのやめて下さい、地味に痛い。
ルーナ、イアラ、リナは靴を脱いで扉の片隅に並べると。小さな卓袱台を囲んで座った。怜奈が俺に寄り添って座っているのがお気に召さない御様子の三人だが。
この状況は非常に不味い、不味いぞ。密着状態は俺の脳意に生息する、男の本能を呼び覚まして死活問題になりそうだ。ルーナより、怜奈の柔か感触は爆弾です。
怜奈、俺に対する警戒心ゼロだな!。
先程まで俺を毛嫌いしていたのに拍子抜けしてしまうよ。
ん~ これは婚姻届にサインするのが嫌だった、だけかもしれないが、しかし態度が豹変しすぎて付いていけない、なんだろう嫉妬なのか?
(まさか…… いやぁ、ないだろ)
「怜奈。
皆にお茶をさ、持ってきてあげて。
分からなかったらお袋に聞けばいい」
「うん、わかった」
素直だが、その笑顔は怖いぞ。
(浮気したら殺すてきな雰囲気出すの、やめて)
おい! そこの三人!怜奈が出て行った途端に凶暴化しないでくれませんか。獲物を狙うハンターか! あんたらは。俺は食糧じゃありませんよ。違う意味で……。
殺意放って俺を殺す気なんですか!
ドタドタ、お! 誰か来た、これぞ正しく天の助け……。
ガチャ。
(ノックくらいしろよ!)
「和樹!。
紹介の話は……」
(敏一、開けて第一声がそれなんかい!)
「何時紹介……」
(宏明、お前もか!)
女のことしか頭にないのか、こやつらは。
「二人から話は聞いたぞ。
お前だけいい思いしやがって、俺にも紹介しろ」
(一人増殖したぞ)
あ! すまんバイ菌呼ばわりは連れに対して失礼だよな。
ごめんなさい。こいつは佐江沼清十郎、道場の跡取り息子。
剣術の鍛練を日課している剣術バカ。日々の鍛練を怠る事なかれ、が家訓だそうだ。『面倒臭い』言っているわりには、律儀に守っている。
そんな真面目な清十郎の違った一面を垣間見てしまった。
さ! お前ら御望みの女の子達が目の前にいるぞ!
――
――――
――――――
止まった。
俺以外機能停止したよ。
(なに、この人達……)
互いに見詰め合う事数十秒……。ルーナ、イアラ、リナが動いた。貞操を整えだし。遅れて敏一、宏明、清十郎が身嗜みを直し始め。
「今更、遅い気が……」
『ああ!』睨まれても困るし。
鬼の形相と嫉妬剥き出しだったじゃんか、今先まで。目で話しかけんの、やめて。
『『『うるせぇ黙ってろ!』』』男性陣は俺に訴えてますが。
女性陣『『『うっさい汚い口を開くな』』』酷くないか!。
泣くぞ!。俺は生ゴミじゃない!。
(クソ!やってられねぇよ)
六人の無言の重圧に押し潰されそうで、耐えられません。
(誰か助けて下さい)
願いが届いたのが扉が空いた。
ガチャ。
怜奈が戻ってきた母を連れて……。
(何故? 親同伴なの)
「「「お邪魔してます」」」
迅速な対応で頭を下げる男三人に釣られて、ルーナ達も一礼した。俺のお袋は国のお偉いさんか!。
直立不動で両サイドに並んだ、連れ三人とルーナ達。
(騎士かお前らは!)
母さん、普段友達にどんな風に接してんの。部下と上司いや、それ以上か平と社長じゃんか、こんなの。
「あなた達、さっきの書類は書いたの」
両サイドに眼を配るも無視ししたな、これ、あからさまなスルーだ。
なにか言ってあげてよ、可哀想だろ。
「いや、まだだけど」
「書きなさい」
有無を言わさない重圧はなんだ。