訪問者
扉を開けたら精霊王国と化していた。
「「「「オカエリ」」」」
元気いっぱいに挨拶をさせた。
「…… あなた達」
「ア、レイナダ」
「ウン、レイナダネ」
「レイナ」
怜奈、少しは驚こうよ、俺だけ動揺しまくりでなんか情けない。
(俺は無視かよ)
羽も無いのにプカプカ浮いているし、こいつらどうやって飛んでんだ?。
フィギュア位の大きさで、体長十五センチ前後ってところか。基本精霊達には性別はないが。個体によっては男女に見えなくもない。
「レイナ、コッチ」
「ココ」
半強制的に座るところを指定される怜奈対し俺にはなにもない。寂しいものである。
怜奈はそんな俺を察したのか隣へと引っ張り座らされた。
(いや、これは違うな!)
「和樹さん。
先程の用紙なのですが」
(ほら、やっぱり同情の欠片もねぇな、こいつは。
この状況でよく冷静でいられるよな)
「…… あ、ああ。
今説明する。
これはさぁ。
婚姻届っと言って、こちら側の世界で、君達は夫婦になりましたよて、認められる書類なんだよ」
「私達、アルダだと神殿で誓いの言葉を言って、夫婦の……」
言いかけて止まった。
怜奈の表情が『あ』終ったと焦り。
因みにアルダとは、怜奈が住んでいる街の名前だ。正式名称アルダ共和国、大陸イムアに存在する小さな小国だが、怜奈の話だと地球で例えるなら日本とほぼ変わらない国にあたるらしい。
十年かけて大陸の三分の一を回れれば良い方だと、言われるくらい広いみたいだから、余り目安にはならないと思うし、それは他国への移動に二~三年を要するからだ。
精霊達が騒ぎ始め。
「「「「レイナ!、ケッコン」」」」
祝福し始めた。
「これは……」
確かにゲーム時代に何故か怜奈が精霊達に囲ませることがよくあったが、それにしても、この慌てブリはなんなんだ?。
「レイナガ。
ケッコン」
「だから……」
(だから、少しは冷静になろうよ)
右へ左へ、オロオロする怜奈は面白いが、動きが尋常じゃない。
「ケッコン、オメデトォ」
「まって、違うのよ」
「レイナ、シアワセ」
崖から飛び降りろと縁に追いやられた人か?。血の気が引いて青褪めたぞ。
(そんなに絶望しなくてもいいんじゃないかな、俺との結婚は、それほど嫌か!)
俺の心は改心の一撃をくらい音を立てて崩れ去っていく。
「あの…… 怜奈」
(いや、別にさ、俺は怜奈と決して結婚したいわけじゃないが、ダメージが半端ない)
突然、激しくドアをノックする音が鳴り響く。
「もう、後戻りは出来ません」
なにかを吹っ切る様に言い放った怜奈。
(何に踏ん切りを付けたんだ? さっぱり分からん)
立上がり物置へと向かう怜奈。
意を決して扉を開けた。
「怜奈、結婚するってどういうことなのか!
説明しなさい!」
開ける同時に詰め寄られた。
相手は誰なんだろう。
荒ぶってはいるが、可愛い声の持ち主だって事だけは分かる。
ドアの向こうは外だ、自と訪問者は土足で部屋に入ってくる。
因みに怜奈の部屋だった部分は扉のみ残して、跡形もなく消え去っているから俺の家に居候する形を取ったわけだ。
咄嗟に思い付いた、付き合う案を出してみたら呆気なく怜奈が承諾したってだけで。どうせ、熱りが覚めたら別れればいいとか思っていたんだろうな、この様子だと。
「ちょっと、まってルーナ」
(ルーナ?)
え! 白髪ロン毛で、いつもポニーテールしている、超可愛いダークエルフのルーナ?。小麦色の美肌で、いつも魔法使いを想わせるローブを着て、男共を誘惑させているナイスバディーの持ち主のルーナ?。
確認したいが、怜奈と扉が邪魔で俺の位置からは全く見えないし。
「そうだよ、怜奈」
(ん? もう一人いるのか)
「外は精霊達が騒いで大変よ、怜奈」
(三人いるのか)
「リナに、イアラまで」
(お、三大美女じゃないか)
あ、これ、あくまでゲーム場の設定だ。受け答えするボイス有りの変わったノンプレイヤー達。目の保養には文句無いし、喋って一日過ごした奴も居るらしいが、俺はない。ま、話したことはある程度だ……。
古林ルーナに張り合えるのはエルフである、イアラを置いて他にはいない。金髪ロン毛で透き通った白い美肌に、凹凸ラインで男を悩殺してしまうほどだ。確か名前は…… 速水イアラだったかな? 後で自己紹介してくれるだろ。
最後の一人は、ミューズ族の寿リナ。
アルダ共和国、三大美女の一人だけあって、ルーナとイアラに挟まれても見劣りしない魅力の持ち主。桜色の透き通った髪色は、毛先いくほどに白く薄いピンクに染めあげて神秘てきな色合いを醸し出し、人々を魅了している。
それに加え猫耳と尻尾が彼女の愛くるしさに薄謝をかけて高みへと押し上げる。
一般的な種族名だと、獣人に当てはまるけど。
「あんな毛むくじゃらと一緒にしないで!」
と、不機嫌になるし、しばらく口を利いてもらえなくなるので、要注意だ。
悩殺間違いなしの三人に会えるのだ、しかもリアルで。怜奈がそれを立証しているのだから間違いなく当たりだ、大当たりだ。そんな三大美女に御目に掛かれるのだから、心弾まないわけがない。俺は出迎えようと立ち上がる前に部屋の中に押し掛けられた、またも土足で。
「貴方ですか、怜奈をたぶらかした不届き者は」
(うお、ちか!)
ルーナが至近距離だ。
「その前に靴を脱げ!。
話はそれからだ!」
「貴様!」
グイっと胸倉を捕まれ持ち上げられた。
「ちょっと!」
(だがあえて言おう、俺は無実だ!)