店内
(などと、言っているばあいじゃね)
敏一と宏明を無視して攻めてくる、しかし無意味な壁だった。少しでも塞き止められたら、と配置はしてみたが、だだ漏れじゃねぇか、ほんとに役に立たん二人だ。
連れ二人を、おばさん避けに使おうとした俺が悪いんだ。これは当然の結果であって決して敏一と宏明の正ではない。
(すまん、二人供)
質問攻めかと思いきや。
結果で攻めてきたよ。
強しオバタリヤン。
「あら、和樹君。
おめでとう」
「…… いえ」
(しかし、彼奴ら一番遠い席に座りやがったな)
「じゃもう、プロポーズは済ませたの?」
「はい。
そう、です……」
チラチラ、二人が向かう場所を見ていたが。
(まさかあんな遠くに座るとは!)
「あら、じゃ式はいつなの?」
「今日…… 出会った」
こちらが確認できる位置に陣取ったな。
(やべぇ)
適応に返事をしてしまった。
(なに? この沈黙は)
「「「「「まぁ、今日ですって!」」」」」
(え?!)
怜奈の顔がミルミル青ざめていく、あんぐり口を開けて数秒硬直したが、直ぐに肩からプルプル震え始めた。青ざめていた顔が、赤身掛かった顔へと変貌を遂げた瞬間、口パクで何かを言い始めた。
(え? なんだって)
『あ、なたは、お馬鹿、な、んですか!』いやいや、さっきまでノリノリで、彼女面していた奴が、ここにきて手の平返しやがった。
話に乗っかてくると思っていたが、敵に回り寄ったぞ。あ、違うか! 俺の味方ってことだよな、じゃあ女神の加護という心強い味方ができたじゃないか、やったぜ!。一事はどうなるかと焦ったが、これで一安心。
俺は考えが甘かった。それは女神の強制力を!。
「それじゃ。
皆様、準備しないと行けませんね」
(オバサン突然、ビックリするじゃないですか!)
「「「「はい」」」」
(なんだ、なんだ、このおばさん連中は)
「奥様方。
宜しくお願いします」
ニヤリと笑う母親に、背筋にゾっと悪寒が走る。怜奈は早足に駆け寄り俺の服の裾を引っ張り呟いた。
「あの和樹さん。
私、なにかとっもて、嫌な予感がするのですが」
「ああ、俺もそう思う」
怜奈さん、貴女もしかして付き合うのには承諾しているぽいけど、結婚する考えはなかったみたいだな。住む家を失って、手っ取り早く俺の家に転がりこんだ方がいいて、いう判断だったのだろうな。きっと、だってこいつ。
「結婚するなら、好きな人がいいですから」
などと、ほざきやっがたからな。
(巫山戯んな!)
と心の中で叫んでしまった。
最初と言っている事と違うじゃねえか、怜奈!。俺を好きな振りをした挙げ句に、虚実をするか普通よ。
一つ目は、付き合うことは婚約者、つまり結婚を前提にしたお付き合いをしなくてはいけないが、真っ赤な嘘。
二つ目が俺の事を心から愛しています。
「別に嫌いってわけじゃありませんからね。
落ち込まないで下さいよ」
だ、そうだ。
喜びに満ちた俺の心を返せ! タイプの女の子から好きですてっ言われて喜ばない男はいないんだぞ!。
(マジ凹むわ!)
「嘘をついていて、ごめんなさい」
素直に謝ってくる怜奈。
「今更、謝られてもな。
もう手遅れかもしれないぞ」
「なんで手遅れのんですか」
近いんだよ、もう少し警戒心を持ってくれ!。
(やべぇ、すげぇいい香りがする)
悩殺されそうになりながらも。
「思い出したんだよ。
準備しましょうって、言ったおばさんな。
結婚式とかの司会をよくやっている人なんだよ。
それに、回りのおばさんたちも。右の人からケーキ屋さんに花屋さんで、その隣人が結婚式場のコックさん。
最後の人な、フルーツパティシエ」
何かの陰謀を思わせる、このメンバーはありえんだろ。しかし都合よく、この場に居合わせたもんだよな。
「あなた達、これ二階で書いてきなさい」
母親が手に持って、ヒラヒラさせている紙。B五サイズくらい大きさだ。言われるままに取りに行った。
手渡されたその紙は……。その紙がここに在るのは、非常に都合がよすぎるものだった。
婚姻届って、誰が持っていたんだよ。
「あの、和樹さん。
それはなんですか?」
(怜奈には、分からないよな)
「ここじゃなんだから、二階で説明するよ」
二階の自室に向かった。