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決意

 ここで焦ったら負けだ、冷静に対応しなくては……。

 小一時間、話し合った結果、婚姻届けにサインするのは保留にすることに成功した。心の片隅で。

(ヨッシャ)と想いつつ。

 問題が一つ解決した。


 ふぅ、と胸を撫で下ろし安堵に浸りたいが、そうも言っていられない。

 それは母さんが物置を、開けても異世界に繋がることもわかったのだ。これは大きく進展しそうな予感がする。それにもう一つの手懸かりも見付けられたのが大きい。


「ほら、彼処に見えるのが、私の産まれた故郷。

 浮遊大陸グリーンランドよ」

 母が指し示した先に、浮かび上がる巨大な大陸は、ゲーム時にはなかった風景だ。


 俺の知らない世界が彼処には在るんだ。なんともいえない高揚感に包まれた――が、こんな状況かで胸、弾む俺ってどうなのよ。


 本音を言うと、夢にまで見た望む世界が目の前にあるんだ。これで胸踊らない方がどうかしている。


 未知の世界、見たこともない建物や動物に植物、新たな発見が待っているのだ。


「あの、和樹さん。

 大丈夫ですか」

「いや……うん、大丈夫」

 今直ぐ飛び込んでいきたいが不用意な行動はよくないと怜奈に叱られたばかりじゃないか――先ずは、こちらの生活に怜奈がなれてからだよな。


「さ、やることが増えたわね。

 先ず二階の改築して、お客様を集めないと。

 その人達から情報を集めて、準備して出発。

 これから、めまぐるしくなるわよ、二人供」

 満面の笑みで答える母さんは、そう言い残して一階へと降りていった。


 ◆◇◆


 怜奈と俺は、母さんに宛てられて、しばらく呆けていた。


「怜奈。

 大丈夫だよな」

「はい、大丈夫ですよ。

 和樹さんのお母様は凄い人だと、改めて想いしらされました」


「別に凄くはないと思うぞ」

「え、だって。

 あんな所に住んでいらっしゃたですよ」

 何度も指さなくてもわかるわ!。


「まぁ、そうだけどさ」

「雲の上に人なんて、凄くないですか」


 確かに怜奈がハシャグ気持ちもわからなくはないが。俺的には喜べない。異世界人と地球人のハーフなのが確定してまったのだ。二十二才にして真実を知らされた俺の身にもなれよ。

(この、能天気娘よ)


「喜ばしいことじゃないですか」

 他人事だと思いやがって――いい気なもんだよ、怜奈さんよ。


 怜奈に見とれた瞬間。ある仮説に気が付いてしまった。『俺って魔法が使えるんじゃねえの』という仮説が頭を過った。クヨクヨ悩んでても仕方がない。メガティブな俺よ、さようなら~。生まれ変わった俺よ此処に降臨。

(なん(つう)てな)


 そうだよな、そうなんだよ。母さんが魔法が使えるんなら、息子の俺が使えて当然なんだよ。

(ヨッシャ! 俺の時代がきたぞ)


 あの怜奈さん、哀れむ瞳で見るの、やめて。


 決して中二病じゃないから、俺は正常だよ、ね、ほら。

「馬鹿じゃないんですか」

 冷や汗が止まりません……。


 突然立ち上がって変なポーズを取り始めた俺が悪い、ああ、悪いさ。あの、無表情で遠くの方を見詰めて細めなくてもさ。こんな至近距離にいるんだからさ。みえるだろ、見えてんでしょ。

 米粒クラスのチッコイ人じゃない。俺は蟻ンコかミジンコじゃねえ。


 確かに右手を突き出し『火よ出でよ、チャカマン』手を突き上げ『唸れ雷鳴、電撃スパーク』ひらりと腕を靡かせ『蓮風舞い散れ、そよ風ウェーブ』指を突き上げ『透けよあの娘よ、スコールシャワー』のポーズを立て続けでしましたよ。

 夢中でしましたよ。

(何も起きませんでしたが)

 そこまで冷たい目線を呉れなくてもさ、いいと思うんだ。


 あの怜奈さん、無言で脇腹に拳打ち込むのやめて。

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