怜奈の本音
うん、ダメ親で、マジごめんなさい。な、なんだよ、その顔は。素直に謝ってるのにさ――意義ありで不服申し立てますじゃねえよ。
ここはオッケー許しちゃいますだろ。
「怜奈ちゃん、ごめんなさいね」
「いえ、お気になさらないでください。
全部、この人が悪いんでますから」
「は……」
(俺かよ)
「は? じゃないわよ。
そもそもの原因、つくったのて、貴方でしょ」
確かにそうだけどさ――否定しない、あんたも悪いと思うんだけどな。
「た、たしかに。
上の空で返事していたのは、悪かったよ」
「ほら、みなさい」
「じ、自分だってそうじゃないか。
否定もしずに、愛想笑いていたのは、どこのどちら様でしたっけ」
「いうことかいて、私のせいにするんだ。
私だってね、あんな場所で、突然言われたら……」
言いかけて、怜奈は母さんを見て止まった。
「怜奈ちゃん、心配しなくて大丈夫よ。
逃がさないから」
『エヘヘ』と苦笑いする、怜奈に対して『アハハ』と返す母さんが怖い。
女の熾烈な争いを、目の当たりすると何も出来ない――出来る人がいるなら、対処の仕方を教えてほしいところだ。
(触らぬ神に祟りなし)
でも、母さんが怜奈に拘る理由が、さっぱりわからん。
(ここは聞くしかないか)
一触即発というのか――なんともいえない空気なんだよな。
(ええい、どうにでもなれ)
「――母さん。
そんなに怜奈の事、気に入ったの?」
あの母さん――黙らないで答えてくれませんか。五分の沈黙後、重い口を開いたが。
「理由ね……」
思わせ振りをちらつかせて、何も無いとかは愚行に等しいよ。
「そうね。
いままで地道にコツコツとやってきた事が、初めて形で現れたから、ちょっと舞い上がっちゃたのもあるし。
鍵となる怜奈ちゃんを逃がさない……じゃなくて、手放さいためにも、ね」
「私も崇める、まりな様の御子息と、あっては無下に出来ませんし、それに理由は解りませんけど。
和樹さんは、きっと私を大切にしてくれる人だと思います。
そうですよね、和樹さん」
ナニぶち負けてんだよ。間に挟まれる身にもなれよ――嫌だ、今直ぐここから逃亡したいが、逃れられないのが現実です。
(くそぉ~、なんだよ、これ)
あの怜奈さん、そんな、急に同意を求められても、困るのです。




