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 ゆっくりと音楽を聴いるうちに、俺は眠たくなってしまった。ずいぶんたくさんの話をしたような気がするし、ずいぶんたくさんの酒も飲んだ。‬


「なあ、俺はそろそろ休むよ」‬


 悪魔たちは時間の流れを思い出したようにふと気がつき、愉快な時間だったと満足して互いに頷いたようだった。‬


「そうね。もう休みましょうか」‬


「明日もあるしの」‬


 長い時間飲み食いしていた割には、汚れ物や片付けなくてはならないものの量は少なかった。俺たちはそれらをザッとまとめるだけまとめ、マットと寝袋を用意しに掛かった。‬


 ムスフォトから借りた寝具を持って広い部屋の中に立つと、一体どの位置に横になったら‬いいのか分からなくてすこしおかしくなった。人間たちはほとんどどんな旅行をしてても、その見当がまったくつかない場面にはなかなか遭遇しないものだ。‬


 デオとムスフォトはごく自然に位置を定めて寝支度をしていた。彼らのなりの目印とか基準があって、こういうことで迷わなくていいようにできているのかもしれない。


 俺は彼ら二人と大体等距離になるように寝場所を定めた。広い空間に正三角形が生まれて不自然な感じがしたが、もっと近づいて眠るのが自然なものなのか、もっと遠ざかって眠るのが自然なものなのか、その判断は付かなかった。


 酔いの引き潮に運ばれてゆったりとした波の上をゆくように、俺は眠りについた。‬


 ふと目を覚ます。酒をよく飲んだので自然が呼んでいた。月の光が屈折しながら入り込んでいて、ぼんやりとだけ周りが見えた。


 悪魔たちはさっきと同じ格好で寝袋に潜り込んで眠っている。俺は出しっ放しになっていたランプにライターで火を点け、それを持って外まで出た。‬




 頬に時々感じるくらいの強さの風が吹いていた。途切れた電話の回線から鳴るような音で虫が鳴いている。


 草木も眠るという言葉があるが、俺には周囲の草木が、しっかりと覚醒しながら気配を殺しているように見えた。風が吹くと、ゆっくりとした呼吸のようにわずかに葉を持ち上げては下ろした。


 静かだ。そしてたくさんの星が見える。それは見慣れた「粒の連続の」ような形ではなく、光と黒の二色の絵の具が水の上に垂らされて交じり合おうとしているところのように見えた。


 無数に浮かんでいるはずの人工衛星の姿は見えず、また宇宙を満たしている暗黒物質の姿も見えなかった。光を反射しないからだ。


 俺は済ませることを済ませ、また虫の声に見送られながら寺院の中に戻った。‬




 広い部屋に戻ると、そこには二人の悪魔の他に何かの気配が漂っているような気がした。


 俺はアルコールの霧の中から意識の集中を紡ぎ出す。一体、この違和感の出どころは何だろう。

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