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 食事で休んだときに、デオが地図を広げて一つの街を指差した。山岳地帯のきわにある小さな町だ。


「二、三日のうちに、わたしの友人の方も町に到着する手筈てはずになってるわ」


「道が険しそうだな」


「あの車なら、町までなら問題ないわよ」


 そうかと俺は納得したが、このときもっと注意深く、町まで「なら」という部分について気がついておくべきだった。たしかに町までは、途中で一泊して簡単に到着することができたのだけれど。




 途中の小さな町で小ざっぱりとしたホテルに泊まる。真っ白くてパリッとしたシーツは久しぶりだ。


 部屋には五ヶ国語のリーフレットが置いてあった。それによると、町はその外縁を三つの大きな寺院に囲まれているということだった。


 寺院の僧侶たちは早朝に揃いの僧衣で町を托鉢して回るらしい。オレンジ色の鮮やかな格好をした坊主頭の人たちが、列を成して朝の霧の町を歩く写真が載っていた。




 デオは調べ物があると言って部屋に篭ったままだった。俺は一人で食事をして眠った。明け方の夢の中で、俺は僧侶たちが裸足で町の路地を歩き回る音なき気配を感じたような気がした。


 しっかりと目覚めた時には、もう太陽が町の路面や壁をジリジリと焼いていて、町の人々は簡易食堂や屋台での朝食のために動き回っていた。


 そこにはついさっきまであったはずの、三つの寺院から吹き出た厳粛な気配は隅々の薄暗い影に取り残されているように思えた。この町を踏みしめる者は、住民と通りすがりの放浪者だけではない。


 俺たちは車に乗り込み、そんな町を後にした。




 森林を縫うように走る道には、身体にコブのできた蛇のように、所々に空き地があった。それはバスの待合のための場所だ。張り巡らされたバスの路線網を使い、様々な人々が行き交っているらしい。


 俺たちは何度も、そのようなバスとすれ違った。車体はどれもオンボロだ。開いた窓からズンチャズンチャとけたたましい音楽がこぼれ出て、「陽気なおっさん号」のステレオのブルーズと混じった。


 それから時々、鳥や猿や得体の知れない生き物が鋭く鳴く声が上がった。俺とデオは上着を放り出し、彼女は時々タバコを吸った。俺はデオに聞いた。


「窓を閉めてエアコンにするか?」


「できればこのままの方がいいわ。あなたは?」


「⋯⋯俺もこれくらいなら、まだ窓の風でいいや」


 デオは満足そうにうなずくと、また物騒なライターでタバコに火を点けた。

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