友達
第3話になります。
少しでも楽しめて頂けたなら嬉しく思います!!
「それで、何を忘れたの?」
下駄箱から靴を出しながら善くんに問いかける。
「俺が忘れ物をしたこと前提ですか!!」
なんだ、違うのか……
それじゃあ今度は何をやらかしたのだろう……
「なんか失礼なこと考えてない……?」
「まぁ、思い当たることが多すぎて……」
なぜ彼が生徒会役員なんて立場にいるのだろう……
「最近はまじめに生きてるっての!?」
ありえない……真面目に生きる善くんなんて俺の知っている彼ではない。
というか屋上に忍び込むとか何とか言ってなかったっけ?
半目になって、じっと善くんをにらんでみる。
ジト目ってこういう感じだろうか……
「そんな批難の目を向けるなよ~~。別に何もやらかしてないからさぁ~~」
どうやら俺の意図は伝わったようだ。
「じゃあ、なんで戻ってきたんだい?」
「なんつーかーーおまえを一人にすると危ない気がしまして……」
視線を逸らした善くんが、よくわからないことを言ってらっしゃる。
この後事故にあうぞーとか、悪いことが起こるぞーとか、そんな予言か何かだろうか……
なにを考えているのか、まったくわからん。
さっきより2割増しで暗い視線を彼に送ってみる。
つまりなにが言いたいのだろうか。
「そんな恐い顔すんなよ!! まぁ、紗枝に言われて戻ってきたんだけどな」
………
なんでここで紗枝ちゃんがでてくるんだろう。
それと、俺そんなに恐い顔はしてないと思うんだけれど……
「おまえ、やっぱり自覚なしかよ」
ええ、自覚なしです。
って、なんの話だろう……
「まぁ、とにかく今日は一緒に帰ろうぜ」
ケータイを見つめながら善くんが俺の背中を押して歩き出す。
「おされなくても歩くから!!」
それはそうと紗枝ちゃんはひとりで帰ったのだろうか……
外で待ってるのだと思ってたのだが。
「紗枝ちゃんはどうしたのかな?」
「ああ、先に帰ったよ」
なんで俺と善くんをふたりにしたんだろう。
「紗枝は友達と先に帰っちゃったみたいだし、こっちはこっちで仲良く帰りましょうか」
………
などと、気持ちの悪い証言をしております。
かと思えば、突然俺の正面に向き直って姿勢を正して、
「おまえはもう少し、周りに甘えてもいいんじゃないかな」
急にシリアスな空気をまとわれても……
ただ彼がこんな態度の時は、冗談なんかじゃなくて。
本当に必要だと思ったから言葉にしてくれているのだろう。
だから俺はこうも思うのだ。
言葉足らずで、善くんが何を言いたいのかわからない部分も多いけれど、
必要なことは、伝わっていると。
だから俺は、心の中でありがとうと呟く。
きっと彼も、感謝の言葉を求めているわけではないだろう。
さて、どんな風に恩返ししてやろう。
いや、まずはこの状況になった経緯と言うか、
ふたりにどう思われてるのか、そこを教えてもらいたいのだけれど……。
第三話、お読みいただきありがとうございます。
我がことながら一話ずつ話の進みが遅いような気がしますorz
今回は、友達っていいなというお話です。
雄二が善弘や紗枝、周りからどんな風に見えているのか、
それはおいおい描けたらいいなぁと思いながら……
あくまで、このお話は雄二の一人称なので、
雄二の視点で善弘の考えを予想していますが、
もしかしたら彼は全然違うことを考えているのかもしれません。
いやむしろ、ほとんど何も考えてないかもしれないです(笑)
雄二は基本的にひとりで強がってしまうタイプです。
寂しくても、そう言えずにみんなを送り出してしまうヤツなんです……きっと。
だから善弘も紗枝も気になってしまうのでしょう。
それでは、次回またお会いしましょう。