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再会編16話 炎壁VS剣狼



第8試合が終わった時点でハーフタイムショーが始まった。


オレはサクヤの様子を見に、医務室へ行ってみるコトにする。


医務室から出て来たシグレさんが、オレの姿を見て歩み寄ってきた。


「サクヤの怪我は心配ない。倒れたのは疲労と念真力の消耗が激しかったせいだ。さほど時間をかけずに元気になる。」


「そうですか。オレも少し様子を…」


「顔は見せなくていい。同情されるのが嫌いなのはカナタだけではないのだ。」


「……そうですね。"優勝したぞ、ざまあみろ"ってデカい顔で報告しに来るコトにします。」


「うむ、それでいい。だがパイソンは強敵だぞ。」


「その前にダニーを倒さないといけませんけどね。手元がお留守になってりゃ勝てると思いますが、ダミアンがアドバイスしてる可能性がある。」


「それはない。部隊長はアドバイスを禁じられている。おっと、これもアドバイスになりかねんな。」


「いえ、気付いていればいたで、手は考えてあります。結果に変わりはありません。」


「フフッ、頼もしくなってきたな。」


たこ焼き女は大丈夫みたいだ。控室に戻って集中を高め、ダニー戦のイメージトレーニングでもするか。


──────────────────────────────────


ハーフタイムショーが終わり、二回戦第一試合が始まる。オレの出番だ。


一回戦同様、軍楽隊の演奏をBGMに闘技場へ歩み、ダニーを待つ。


ハードロックをBGMに悪友ダニーも入場してきた。やる気満々の顔だ。策は練ってきたようだな。


「カナタ、穴馬狙いの連中の期待に応えて、ここで沈めてやるぜ? 悪く思うな。」


「無理だと思うが頑張れ。」


闘技場の真ん中でオレとダニーは拳を合わせ、開始線まで下がる。


オレとダニーの間に立ったストリンガー教官は教え子同士の対決を開始させるべく、右手を上げた。


「3、2,1、……始めぇ!!」


振り下ろされた腕、戦闘開始だ!


オレが刀を抜くと同時にダニーも背中の両手剣を構えた。オレはズームアップ機能を使ってダニーの手元を確認する。


……やっぱり手元がお留守だったな。ならば持久戦ではなく急戦で決める。


オレは眼前に横向きの刀を構え、殺戮の力をチャージする。


それをみたダニーは炎槍を飛ばして牽制してきたが、ランス少尉ほどの精度も速さもない。


シオンの氷槍相手に訓練しているオレは、余裕を持って躱す。


下手(したて)に両手剣を構えたまま、ダニーは距離を詰めてきた。天狼眼での牽制は、炎の盾で視界を遮って防御。その死角は飛ばしたインセクターでカバーか。考えてるな!


殺戮の力をチャージしたオレは納刀し、腰を落とした。


咬龍を予期したダニーは両手剣をかざして防御の構え、オレは一歩踏み込みながら居合の一撃を放つ。


繰り出された黄金の刃をダニーは分厚い障壁を纏わせた両手剣で防御、だが剣に纏わせた念真障壁は切り裂いたぞ? お返しの一撃はバックステップで躱し、最速、渾身の突きをお見舞いする。


ダニーは両手剣の平で突きを受けたが、オレの刀の切っ先にはまだ狼眼の力が残っている。


……オレはおまえを狙ってたんじゃない。最初から剣の平を狙っていたんだ。ランス少尉の突進攻撃を受けた部分をな!


オレの突きはダニーの両手剣を根元から破壊し、ダニーの鎖骨に命中した。


後ろ向きに転倒したダニーが立ち上がる前に、オレの刃がダニーの喉元に突き付けられていた。


「勝負あり!勝者、天掛カナタ!」


ダニーは呆然とした顔で折れた両手剣の根元を見直し、苦笑いしながら立ち上がった。


「……やられたぜ。ランス少尉の突進攻撃で武器が傷んでいたのか。いつも使ってる愛剣と訓練用のナマクラを一緒にしちゃいけねえよなぁ。」


ああ、愛用の業物と訓練用の武器の差を見落としていたのが致命的だった。一点への過度な集中、それは俯瞰する視点の欠如でもある。戦いは全体像を見なくてはならない。準備の段階では特にな。


「武器を交換しておくべきだったな。一番いいのは交換してないフリをするコトだったが。」


「交換してないフリ?」


「オレなら交換した剣が、傷んだ剣と同じように見える細工を施しておいた。折れるはずの剣が折れない、その計算違いの隙を突こうって画策しただろう。」


細工する時間は十分あったんだからな。やらない手はない。


「マジで性格悪いなぁ。ま、いい教訓になったぜ。……カナタ、俺に勝ったんだから絶対優勝してくれよ? そうすりゃちったぁ慰めになろうってモンだ。」


「そのつもりだ。」


予定通り、消耗ナシでダニーを倒せた。……だが次はパイソンさんが相手、苦戦は必至だな。


──────────────────────────────────


次の試合、ツバキさんとパイソンさんの戦いはスタジアムを沸かせたが、オレの目には凡戦に映った。


パイソンさんはナックルダスターを装備した拳でツバキさんの刀を叩いて弾き、懐に入ってボディ打ち。


ツバキさんも円流得意の払い斬りでそれなりのダメージを負わせはしてるが、パイソンさんのゲームメイクに嵌まっているコトに変化はない。


積み重ねたボディ打ちでツバキさんの足が止まってからは、華麗なサークリングからの念真ジャブで瞼を潰しにかかる。じっくり獲物を仕留めにかかる蛇の術中、それでもツバキさんは愚直に円流の技で応戦してる。


……おいおい、パイソンさん相手に無策で真っ向勝負かよ……


掴ませないのは流石だけど、パイソンさんは打撃も一流なんだぜ? 絞め技だけで戦果を上げてきた訳ないじゃんかよ。


片目が腫れて遠近感がなくなったツバキさんの喉笛に狙い澄ましたパイソンさんの右手が絡み、ツバキさんは脇差しで絡む手を払おうとする。だがパイソンさんは瞬時にツバキさんの体を闘技場の床に叩きつけ、軽々と同じ動作を繰り返した。


6度床に叩きつけられた時点でクランド中佐が勝負ありを宣言、蛇は獲物を離し、口笛を吹いて凱歌を上げた。


……パイソンさんが勝つのはわかってた。だけどツバキさんが全くの無策で臨むとは思わなかった。剣の腕前は確かに中隊長級なんだが、工夫がなさすぎる。剣腕に自信があってのコトだろうけど、4番隊を甘く見過ぎだ。


……この敗戦で考えを改めてくれるといいんだが……


───────────────────────────────────


反対ブロックの二回戦第三試合、アシリレラ少尉とセイウンさんの対決は激戦の末、セイウンさんが勝利した。


アシリレラ少尉も食い下がったが、やはり初戦のフィネル少尉との戦いで消耗していたのが痛かった。セイウンさんは保安官を相手に消耗ゼロ、同じ大きさのダムが水量を比べ合えば、放水してないダムが勝つのが道理だ。


二回戦第四試合はMr.Xことキーナム中尉がマットを下した。


マットの敗因はキーナム中尉のレスリング技術を甘く見ていたコトだ。連節棍をオトリに、突如繰り出されたヘッドシザーズホイップにマットは反応出来ず、投げられてしまった。そして伸ばした棍を使った棒高跳びで高く舞ったMr.Xのムーンサルトプレスで轟沈。


覆面レスラーらしいプロレス技でのKO劇を見せたMr.Xが準決勝へと駒を進めた。




さて、オレの準決勝の相手は予想通り、パイソンさんだ。……覚悟が必要な相手だな。




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