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出張編26話 ニブすぎですよ、同志!

カナタのソウルメイト、アクセルはニブチンなようです。



内緒話を終えたオレ達は海賊酒場に戻って、ヒンクリー師団の兵士達と宴を楽しんだ。


宴の主賓はマリカさんで、オレは添え物みたいなモンだったけど。


「そろそろ帰るか。迎えがきたようだし。」


「迎えがきたって誰が?」


「アクセルとタチアナさ。だからアルコールは抜かないでいい。」


緋眼の女王の退場を師団の皆さんは残念がったが、夜通し付き合う訳にもいかない。


パイレーツネストの駐車場にはクラシカルなオープンカーが止まっていて、同志とタチアナさんが乗っていた。


「おっぱいぱい、宴は楽しめたか、同志?」


「おっぱいぱい、おかげさまで。超過勤務ご苦労さまです、同志。」


半分諦めたっぽい顔のタチアナさんは、諦めてない半分の意志を総動員してマリカさんに訴える。


「マリカさん、コイツらのアホな挨拶をやめさせてくんない?」


完全に諦めてるマリカさんの返事は素っ気ない。


「無理だ。癌の特効薬はあっても、アホにつける薬だけはない。」


「アホ二人が乗った車に同乗なんかしたくないし、私がバイクを運転して帰るわね。」


「タチアナさん、ありがと。」


「同志、礼なんざ言わなくていい。タチアナはそのバイクに乗りたいんだよ。」


同志アクセルが助手席に置いてあったヘルメットをタチアナさんにパスする。


「バレたか。カナタ、コイツはアレス重工製のスコーピオンⅡってレア物バイクさ。しかもリミテッドエディション、結構なお値打ち品なんだから大事に乗んなよ。」


高そうなバイクだと思ったけど、そんなお値打ちバイクだったか。


「了解。しばらくタチアナさんに預けますんで、慣らし運転をお願いします。」


タチアナさんは颯爽とバイクに跨がりながら、


「オッケー、ついでにカナタに合うようにセッティングとチューニングもしといてあげるわ。」


そう言うと滑るようにスコーピオンⅡを発進させる。


「出しますぜ、マム。離されないようについて行きますかね。」


同志アクセルがハンドルを握るオープンカーが、タチアナさんのバイクの後を追って夜道を駆けていく。


「タチアナさん、バイクの運転も上手いんですね。」


「メカニックなら一流だが、リガーもそこそこいけんだろ。俺には及ばないにしてもな。」


後部座席にどっかり座って煙草を吹かしてるマリカさんがツッコミをいれる。


「リガーなら一流だが、メカニックもそこそこいける、タチアナはアクセルの事をそう言ってたよ。」


ププッ。仲がよろしいコトで。


「ああん? 俺はメカニックとしても超一流だっちゅーの!タチアナめ、いっかい勝負しなきゃなんねえみてえだな!」


「仲良く喧嘩すんだよ。ああ、タチアナは最後に一言付け加えてたな。人格は三流だって。」


手厳しいですね、タチアナさん。


オープンカーで走る海岸沿いの道路もいいモンだな。バイクとは違った趣がある。


元の世界じゃ車なんか走ればいいって考えだったけど、モータースポーツの楽しさも今なら理解出来そうだ。


生粋のリガーである同志アクセルもクラシックなオープンカーは気に入ったみたいで、


「性能よりもスタイル重視の車も悪かないねえ、オープンならなおさらな。」


「ガーデンじゃオープンカーって訳にはいきませんもんね、砂埃だらけで。」


「こういうクラシックカーってのは舗装された道じゃなきゃ、じきぶっ壊れるしな。俺らは軍用車両(ハンヴィー)に乗るしかない定めって訳だ。」


俺は軍用車両も好きですけどね。


独特の美しさがある、機能美って言うべきかな。


深夜のツーリング&ドライブを楽しんだオレ達は、常宿であるシャングリラホテルの地下駐車場へ帰ってきた。


「さて、カナタ。良い子はお休みのお時間だよ。明日はカリキュラムがないからって、フラフラせずに部屋へ帰んな。」


「もう休むつもりでしたけど、子供扱いされんのは面白くないです。」


一応二十歳なんだぜ、これでも。大人げない性格してるけどな。


「おうおう、言うようになってきたな、坊や。じゃ、お休み。」


まるで聞いちゃいねえ。畜生、いつか大人、いや男扱いしてもらうかんね!


マリカさんはオレを坊や扱いしたまま、スィート専用エレベーターに乗り込んでいった。


「同志を誘って夜遊びに行こうかと思ってたんだが、釘を刺されちまったな。悪い子の俺はどうすっかなぁ。」


悪い子の自覚はあるんですね、同志。


む、タチアナさんがモジモジモードに突入してるぞ。ここは気の利くナイスガイであるところを見せるか。


「同志、暇ならスコーピオンに乗ってみて下さいよ。チューニングするならリガーの意見も取り入れてもらいたいんで。」


「いいぜ、ヴィンテージバイクに乗るのも久しぶりだしな。」


「ガーデン周りの舗装されてない道を走れる仕様にして欲しいんです。ロックタウンに行く時に乗れるようにね。それとサイドカーを付けるコトもあるんで、そこを考慮してバランス取りをお願いします。」


「リリス様専用座席だな。了解だ。」


「タチアナさんを背中に乗っけて試乗会に行ったらどうです? チューニングはタチアナさんがやってくれるみたいですから。」


待ってましたと間髪入れずに食い付いてくるタチアナさん。


「仕方ないねえ!チューニングはしてあげるって言っちゃったから仕方ない!アクセル、サッサと乗んなよ!ハンドルを握ったら一流ってところを見せてもらおうじゃない!」


「なんでそんなにテンションたけーんだよ。じゃな、同志。」


「いい夜を、同志。」


タチアナさんを背中に乗っけて、同志は駐車場から再び夜の街へと走り出していく。


タンデムシートに跨がったタチアナさんが、オレに向かって親指を立ててくれた。


ネオンの眩しい大都会の夜、バイクに相乗りする男女二人か。………うまく進展するといいですね。


同志アクセルはニブチンだから、タチアナさんも苦労するよなぁ。




ホテルのロビーを通った時に、フロントマネージャーから声をかけられる。


「天掛様、ペンデュラム社の百道(ももち)様からのお荷物をお預かりしております。試供品のサンプルだそうですが、お心当たりが御座いますか?」


もうサンプルが出来上がってきたのか。仕事が早いな。


「はい、必要なモノなので今すぐ用意してください。」


「畏まりました。」


フロントマネージャーが合図すると、アタッシュケースを持ったポーターがすぐにやって来た。


「お部屋までお運びします。」


「アタッシュケースぐらい自分で運びますよ。ありがとう。」


オレはポーターにチップを渡してアタッシュケースを受け取り、スーペリアに戻った。




ベッドの上でアタッシュケースを開けると、中には三丁の銃が入っていた。


サンプルA、B、Cと銘打たれていて、プラスチックで出来ている。


ケース内にあったモモチさんからの手紙によると、設計された銃を3Dプリンターで削り出したモノだそうだ。


重量のバランスは金型を造ってからとれるので、形状、特にグリップ周りのフィット感を確かめて欲しいとのコトだった。


グリップの素材としてゴムや木材のサンプルも入っている、実際のグリップを造る際のサンプルか。


………今日は慌ただしい一日だったから疲れてる、明日起きてから考えよう。




カリキュラムは休みだが、いつも通り起床し、日課を済ませる。


それから部屋で銃のサンプルの選別を開始、いろいろ試して考えたがサンプルBがいいと思った。


なので早速、モモチさんに連絡を取ってみる。


週末だろうと構わず連絡が欲しいと書いてあったから、遠慮せずともいいだろう。


電話をかけると2コールもしない間にモモチさんが出てくれた。


オレはサンプルBが気に入った旨を伝える。


「なるほど、Bが一番フィットしましたか。」


「ええ、55口径となると握りやすさ重視でいいと思いました。44口径のマンイーターとは反動も違うでしょうし。」


「でしょうな。サンプルBは若干グリップ部分が小さめですから、銃底の素材を工夫して重さのバランスを取る必要がありそうだ。電話ではなく実際に打ち合わせする必要がありますね。カナタさん、お時間はいつ取れそうですか?」


「今からでも大丈夫ですよ。」


冗談のつもりだったのだが、モモチさんは仕事中毒(ワーカホリック)だったらしい。


「おお、では今からシャングリラホテルへ向かいますね。私は支社におりますので。」


「いえ、オレがペンデ社に向かいますよ。今日はペンデ社の近くのSBCでアプリのインストがあるんです。その前に打ち合わせをしておきましょう。」


「そうですか、それは助かります。では社でお待ちしておりますので。」


オレはタクシーを拾ってペンデ社に行き、モモチさんと細かい打ち合わせを済ませてから、SBCのリグリット支社へ向かった。


ミコト様からの贈り物、零式バイオメタルユニットを受け取るためだ。




楽しみだな。戦闘細胞の開発者自らが造った零式は、どんなポテンシャルを秘めてるんだろう。




アメフトも大詰めになってきました。スーパボールを見に米国へ行くのが夢ですね。

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