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出張編16話 鉄分塩分より大事な栄養素

カナタには大事な栄養素があるようです。



さてコトミさんとやらのご招待はお受けするとしてだ、約束の23:00までは結構時間があるな。


リリスに会いにいってみるか。そろそろ寂しがってそうだし。


嘘だな、オレが寂しいんだ。ちょっと会ってないだけなのに、もうリリス成分が枯渇しかけてる。


オレにとって鉄分や塩分より大事な栄養素だからな、リリス成分は。


オレはシャワーを浴びて着替えてから、最上階のペントハウスへ向かった。


ペントハウスの女性コンシェルに用件を伝えると、すんなり中に入れてくれた。


「こんにちわ~!児童相談所の者ですが、ここで児童虐待が行われているとの通報があり、調査にきました。」


「にゃ~!准尉ぃぃ!」


オレの声を聞きつけたリリスが奥の扉を開けて、ネコ耳を生やしながらダッシュしてくる。


猫まっしぐらですね、リリスさん。


オレはネコ耳リリスを抱き上げ、かいぐりかいぐりして愛でる。


同じ扉から、咥え煙草でビジネススーツ姿の司令が出てきて嘆息する。


「カナタもリリスもどれだけ寂しがり屋なんだ。相互依存にも程があるだろう。」


オレの腕の中のリリスが髪を逆立てながら抗議する。


「昼はグループ企業巡り、夜は書類と缶詰、オマケに食事はルームサービス、児童虐待もいいトコじゃない!」


締め切り前の漫画家みたいな生活してたか、そりゃストレスも溜まるよなぁ。


「わかったわかった、カナタとお茶でもしに外へ行ってこい。続きは明日にしよう。」


「いえ、リリスの淹れてくれる珈琲が飲みたくて来ただけです。リリス、頼めるか?」


「いいわよ、准尉の好きなブレンドレシピを知ってるのは私だけだもんね。」


「………カナタはリリスが16になったら本当に結婚しそうだな。」


そこまで生きてりゃそうなりそうですね。




司令のお許しが出たので、プールサイドで珈琲ブレイクにするコトにした。


オレとリリスは近況報告などしながら、珈琲に生チョコを楽しむ。


なにより楽しいのはリリスと交わす、たわいもないお喋りだけどな。


会話の合間にリリスさんのオリジナルブレンドの珈琲を啜る。


ん~、やっぱりリリスのブレンドしてくれた珈琲は最高にオレの好みに合うなあ。


「このホテルのカフェの珈琲も旨いけど、やっぱリリスの淹れてくれる珈琲が一番だな。」


「私の愛もブレンドしてあるから当然でしょ。」


深く苦く濃い味の珈琲だけど、濃さの秘訣はリリスさんの愛がブレンドしてあるからですか。


ん? テーブルの上にパンフレットが置いてあるな。


………エターナルコーポレーション? なんの会社だろ。


「ああ、それ? 御堂グループもコールドスリープビジネスに参入するんだって。」


「コールドスリープ技術が開発されたのは知ってるけど、そんなのビジネスになんのか?」


「なるに決まってんじゃない。例えば現在は治療法がない難病の人間とか。」


「なるほどなぁ。でもニッチな市場なんじゃないか、それ?」


「メインの客層は平和な時代に生きたいって金持ち連中よ。この戦争が終わったら目覚めさせる契約で、もう予約が殺到してるわ。」


「………金持ちって大抵は権力者でもあるんだから、自分でこの戦争を終わらせる努力をしろや。」


リリスはチッチッチと指を左右に振りながら、


「金持ちって大抵は自己中でもあるのよ。自分が良ければそれでいいの。」


………世界が歪むワケだ。………待てよ? オレが六年間コールドスリープに入れば………


「准尉が考えたコトを当ててあげるわね。オレが六年間コールドスリープに入れば、目覚めて直ぐに私と結婚出来るんだよな、でしょ?」


司令の持ってる人の心を映す鏡を譲ってもらったのかよ。


「そ、そ、そんなコト考えてないから!」


「ふぅん、そうなの。ま、いいわ。そういう事にしといてあげる。」


そういうコトにしといてください。


魅力的な誘惑ではあるんだけど、六年間も眠ってたらこの世界がどうなってるやら分かったもんじゃない。


それにアスラ部隊の仲間が今の時代を戦って生きてるってのに、オレだけお休みなんかできねえしな。


リリスと珈琲を楽しんで心の栄養は補給できたし、そろそろコトミさんのお顔を拝見しに行ってみますか!





22:50にオレはD-11ブロック第二倉庫の前でタクシーを降りた。


万一に備えてスーペリアにマリカさん宛ての置き手紙を残しておいた、準備はそれだけで十分だろう。


第二倉庫前に黒服がいて、オレの姿を確認すると黙って倉庫脇の通用口のドアを開けてくれた。


100m四方はありそうな倉庫内に入ると、空っぽの倉庫内に一台の豪華絢爛なキャンピングカーが停車していた。


車の周囲には護衛らしき5人の黒服がいて、油断なくオレを警戒している。


オレがキャンピングカーに近づくと、護衛のリーダーらしいグラサン女が歩み出てきて冷淡な声でのたまう。


「腰のモノと懐の銃を預かろう。その後にボディチェックも受けてもらう。」


ま、そうくるでしょうね。でも呼びつけといて、いきなり武装解除って失礼じゃないか?


上からの物言いは許しますけどね、このグラサン女は胸元の露出が極めて高い出で立ちだから。


周りの護衛達はカイジの黒服みたいな恰好なのに、ノーブラ白シャツとか一人別世界でしょ。


「イヤだと言ったらどうなんの?」


大方の予想はついてんだけど、丸腰で得体のしれない相手と談笑出来るほど太い神経してねえんだ。


「実力行使で武装解除する事になるな。そうしてみるか?」


その宣言を受けて、残りの黒服4人がリーダーの後ろについて臨戦態勢をとる。


椿(つばき)(わたくし)の招いた客人に無礼は許しません!カナタさん、武器はそのままで大丈夫、お入り下さいませ。」


スピーカーからの優美な声の命令に、ツバキと呼ばれたグラサン女は食い下がる。


「お言葉ですが、得体のしれない男を武装させたまま面会させる訳にはまいりません。」


「よいのです。私はカナタさんと二人きりでお話がしたいが故に、ご足労願ったのですから。」


グラサン女のグラサンがズレた。うん、いいリアクションですよ。


「なりません、出来ません、認められません!御身に万一の事あらば、私の首一つで済む話ではないのです!当然、私も同席させて………」


「首をかける覚悟あらば問題ないでしょう? 大丈夫、カナタさんは私に危害を加えたりはしませんから。ツバキ、私の言葉が信じられないのですか?」


不承不承って感じでグラサン女はキャンピングカーのドアを開け、オレを促す。


オレはタラップを上がってキャンピングカーの中に入った。


そして呼び出し主のコトミさんのご尊顔を拝し、一礼する。


「あら、全然驚いてくださらないのですね。がっかりです。」


「驚かせたいならあんな簡単なアナグラムを使うべきではないですよ、ミコト様。」


キャンピングカーの中にしつらえられたソファーに優雅に腰掛けられていたのは予想通り、照京の姫君ミコト様だった。


「うふふ、そうですわね。でも警戒されても困りますので。ツバキ、ドアを閉めて。それからこの車に誰も近寄らせてはなりません。内々のお話ですから。」


「承知致しました。」


グラサン女のツバキさんとやらがドアを静かに閉めると、完全に外から遮断された空間が完成する。


オレもソファーに腰掛けるよう手で合図されたので、遠慮なく座らせてもらうコトにした。


………パーティーで見た時の和服っぽい装いと違って、ドレス姿のミコト姫は胸元の露出もスッゲーぞ。


護衛のツバキさんはノーブラ白シャツだし、セクシー路線のファッションが照京で流行ってんのかね?


ミコト姫がソファーに座って瞑目されてるのをいいコトに、オレは貴人のおっぱいを思う様に堪能する。


おっと、カメラ機能を使って画像も撮影しとこう。


ヤバッ!ミコト姫が瞼を開かれた!残念ながらおっぱい鑑賞タイムはここまでだな。


「この車は特別製の防音機能を備えています。外の誰かが指向性聴覚機能を使おうと、話を聞かれる心配はありませんから安心して下さいね。飲み物は紅茶でよろしいですか?」


オレが頷くとミコト様はしなやかな指で、テーブルの上のティーポットから用意されていたカップに紅茶を注いでくれた。


オレは珈琲党だけど、この場で我を通すほどのこだわりはない。


「ありがとうございます。………それでオレにどんなお話があるんでしょうか?」


話の内容も予想出来てるけどな。ミコト姫はオレを八熾宗家の生き残りだと思ってるハズだ。


それに関する話で間違いないだろう。


だけど、ミコト姫の台詞はオレの意表をついたモノだった。






「カナタさん、単刀直入に申し上げますけれど、…………貴方の本当のお名前は、()()()()と仰るのではありませんか?」





起きて投稿したらすぐ寝る、簡単なお仕事ですね(笑)

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