真夜中の・・・・
本日2話目!
「…‥‥なんだこの状況?」
リューは少々戸惑っていた。
ここは夢の中、そうリューは感じていた。
‥‥‥土下座懺悔事件から2日後の夜、確かに自分は自室で寝ていたはずなのだが、この状況はおかしい。
現実とは明らかに体の感覚は異なるし、はっきりと夢だと認識できる明晰夢のようなものであろう。
けれども、その自身の夢の中とは言え、その状態に戸惑っていたのである。
夢の中なのだが、辺りはものすごく薄い桃色であり、あるのはドア一つ。
夢なら夢で、もう少し夢見心地な雰囲気が欲しいのに、なんだこの微妙艦たっぷりな夢は。
とにもかくにも、目の前にドアがあるなら開けるべきなのかもしれない。
けれども、夢だけにどこか変なところにつながっていそう…‥‥しかも、周囲は薄いピンク色ってなんかどう考えてもろくな予感はしない。
だが、や肺ここで開けなければ意味がないという事で、ドアをリューは開けてみて、その中に入った。
何があるのかちょっと警戒してはいたが…‥‥あったのは大きなベッドだけである。
…‥‥寝て夢を見ているのに、さらに寝て夢を見ろと?無限ループが起きそうだな。
しかも、キングサイズというか、かなり大きなベッドで寝相が悪くても落ちない安心感はある。
けど、ここで寝てどうしろと?
そうリューは思いつつも、とりあえず寝転がってみた。
「‥‥‥なにこれ、すっごい弾力性に富むというか、低反発高級ベッド!?」
夢だから感覚とかがあやふやになってい沿うものだが、物凄いこのベッドは‥‥‥寝心地が良い。
柔らかな反発で、寝る際の体への負担を最大限和らげて、そして用意されている枕は頭にピッタリフィットのひんやりとして、それでいて膝枕をされているかのような安心感。
そう、まるで全人類が夢見る最高級の寝具と言う物を再現したかのような、まさに夢だからこそ実現できたものであろう。
‥‥‥現実に、本当にこういうベッドは欲しい。そう、実家に帰ったかのような安心感というか、小森美がさす中、晴れやかな草原でのお昼寝気分というか、とにもかくにも語彙がないのが悔やまれるけど、物凄い心地いいベッドである。
「夢の中だけど、これでも眠れそう‥‥‥」
寝転がっているだけで、夢の中だと分かっているのに、睡魔が襲い掛かってくる。
‥‥‥寝心地良く、程よい安心感と柔らかさで包まれ、リューがあと少しで夢の中なのにベッドで寝ようとした時であった。
ギィッ・・・・・・
(ん?)
瞼がとろんとしてきて、だいぶ頭がぼんやりしてきたところで、なにかドアが開くような音が聞こえた。
音をよく聞くと、誰かが入って来たようだが…‥‥夢の中のこの部屋に、誰が入ってくるのだろうか?
その入って来た者は、リューの目がだいぶ眠くなってきてはっきり見えなくなってきたが、人形っぽくは見えた。
【‥‥‥よし、何とか寝たようなのだよ】
その声は、どこか安心したかのような声ではあるが、なにかを企んでいたかのような感じもする。
「‥‥‥っ、な、何者なんだ‥‥‥」
眠気にまどろみつつも、リューはそう尋ねた。
すると、流石にまだギリギリ起きていると思っていなかったのか、びくっとその声の主は体を震わせた。
【あれ!?まだ寝ていなかったのだよ?‥‥‥あ、でももうすぐ寝る感じだし、大丈夫なのだよ】
驚いた声を出しつつも、その者はリューがあと一歩のところで寝そうなことを分かり、ほっと息を吐いた。
【安心するのだよ。心配しなくとも危害は加えない…‥‥ただ、うちの消滅を逃れるために、暴れずに協力してもらうためにこの寝具を再現したのだよ‥‥‥‥】
殺気もなく、本当にただリューを寝かせることが目的のようにそう話しかけてきた。
徐々に抵抗する気力もリューは無くなり、夢の中だけど寝そうになる。
【さぁ、ゆっくりと夢の中だけど寝るのだよ。快楽がちょっと襲い掛かるかもしれないけど、それでも安心して寝るのだよ‥‥‥‥】
だんだん声が聞こえなくなり、リューが夢の中で、眠りにつこうとしたその瞬間である。
ぷ~~~ん!
「ぐっつ!?」
物凄い激臭がしたかと思うと、気が付けばリューは起きていた。
『お、流石に気付け薬はよく聞きますネ。目覚めたでしょうかご主人様』
「わ、ワゼ!?」
目覚めると、ワゼが何やら瓶を開けており、その臭いをかがせて起こしたようである。
気付け薬というか、アンモニアの瓶のようだが…‥ああ、確かに激臭がすれば目覚めるけど、そのおこしかたはだめじゃないか?
「なんでいきなり起こして・・・・・って、何この状況?」
【あ、リュー様安心してください。不審者はすでに捕縛しましたよ】
【ピキ~ッ、寝ているときに何をやろうとしたの?】
【全く、起こされる身にもなって見ろカナ】
見れば、部屋の隅っこの方でハクロたちが不機嫌そうな顔でいた。
どうやら全員、ぐっすり眠っていた時にワゼにリュー同様起こされたようで、不機嫌Maxのようである。
そして、そのハクロたちの中心というか、天井から網で何かが吊るされていた。
【きゅ~~~~~~】
目を完全に回し、気絶しているその中身は…‥‥
『ご主人様を夢の中でたぶらかそうとしていた‥‥‥『サキュバス』、いえ、どうやらその亜種というべきモンスターのようデス』
そうワゼは説明し、網からその中身を取り出して、丁寧に手足や‥‥‥その背中などに生えていた羽や、尻尾もまとめて縛り上げ、抵抗できないようにした。
見た目は褐色の肌を持ち、金髪の長い髪を着て、露出の高い服を着ている。
だがしかし、サキュバスにしては‥‥‥どこがとは言わないが、一応あることはあるようだけど、やや平たくて、イメージ的には物足りないというか‥‥‥モデル体型とか、スレンダーとか言えば聞こえはいいだろうけど、残念さはあった。
というか、よくそれでその服を着ようと思ったな‥‥‥なんかこっちが悲しくなるんだが。
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『サキュバス』
別名「淫魔」。その別名の通り、色欲にまみれた夢を見せたり、もしくは現実世界で情事を行い、相手が徹底的に干からびるまで絞りつくすという恐るべきモンスターである。
ただし、見境がないわけではなく、どうやら趣向にあった相手でないと絶対に出現せず、中にはそんな生活が嫌だと、むしろ清廉潔白を目指す代わり者が出たりするようである。
また、夢追い人ドリーマー達によって討伐対象とされるのを避けるため、娼館に努めるという者たちがいたりして、たまに屑のような者を再起不能にしたりして役に立っていたりする。
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『おそらく亜種ですけどネ』
【見た目的に、多分『サキュバス・フラット』カナ?】
見た目というか、何処をとは言わないが、その部分を見ながらワゼとファイは言った。
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『サキュバス・フラット』
別名「淫魔モドキ」。サキュバスの亜種なのに、何処か残念感漂うモンスターである。
習性や本能などはサキュバスとほとんど変わらないとはいえ、体形がほぼスレンダーというか、モデル体型なのが多いのが特徴であり、数がほとんどおらず、極稀にしか出現しない。
能力などは、一応亜種ゆえかサキュバスよりも高いのだが、それでも通常種に負けることが多い。主に、胸部で。
進化さえすれば負けない物を手に入れられるそうだが、進化種の確認例は幻であり、その場合幻獣種となる。
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…‥‥説明文ひでぇ。
ワゼから渡された、モンスターの種族に関する図鑑を読み、リューはそう思った。
ほとんど残念というか、哀れみの混じったような説明しかない。というか、毎回こういうモンスターの説明文とかってあるけど、書いているの誰だよ。
【…‥‥ぬぐぐぐ、まさか干渉されて引きずり出されるとは思っていなかったのだよ】
と、どうやらサキュバス・フラットは目を覚ましたようである。
というか、引きずり出すって?
『夢というのは、脳内の電気信号によって記憶をいじって得られるものであり、モンスターでありながらも、サキュバス系統はその実体があやふやな存在だそうで、自らの体を変質させて侵入できるようなのデス。そして、その状態で干渉するというのがサキュバス系の淫夢のからくりだったようデス。そこで、対処法として少々電極をつなぎまして、追い出すように電流をご主人様が感じないほど微弱に流し、出てきたところをあらかじめ起こしていた皆さんに捕えてもらったのデス』
「その方法って、俺の頭とかに影響ないよな?」
『むしろ、電気治療的モドキのような物なので肩こりとかがほぐれているかト』
「あ、本当だ。なんかスッキリしているな」
というか、偉い科学的な様な、そうでないような説明だなワゼ。
ワゼの説明に納得しつつ、捕らえられたサキュバス・フラットの方にリューは向いた。
「で、どうする?というかそもそもなんで俺の夢の中へ干渉してきたんだ?」
【そうですよ!!リュー様にあんなことやそんなことなどをしようと考えていたのですか?】
【ピキッツ、よくわからないけど、いけないことをしようとしていたのはわかるよ!】
【一応、主殿はこれでも婚約者のいる身カナ。その婚前の貞操を狙おうなどと、笑止千万カナ】
『いろいろと道具を持っていたようですが、すべて押収しましたし、言い逃れはできませんヨ?】
皆の視線が集中し、リューを除くハクロたちの雰囲気に圧倒されたのだろうか。
【ひっつ!!いや、その、別にそこまでとは考えていないのだよ!!というかめっちゃ怖いのだよ―――――――――!!】
物凄い勢いで涙を逃し、土下座するサキュバス・フラット。
そのあまりにも必死な姿勢に、リューたちはあっけにとられたその時であった。
グギュルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥグゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
物凄い大きなおなかの音が響いた。
「‥‥‥今のって」
【ッツ…‥‥】
その音の主らしい、サキュバス・フラットの方を見てみれば、茹蛸のごとく、褐色な肌なのに物凄く赤くなっていた。
「もしかして‥‥‥物凄くお腹が空いているのか?」
【は、ふぁひぃぃ‥‥‥】
恥ずかしいのか、リューの問いかけに物凄い涙目で真っ赤になりながらそのサキュバス・フラットは返事した。
…‥‥どうしよう、本当にサキュバスって付く割りには、物凄く残念感が漂うのだが。
とにもかくにも、どことなく憐憫を誘うので、ワゼにまだ夜中だったので夜食を用意してもらいつつ、彼女の話をリューたちは聞くことにしたのであった。
秋の夜長というが、もうすぐ冬だしどうなのだろうか?まぁ、問答無用でたたきだすというのも、なんか可哀想になったしね。
ちなみに、夜中に寮の食堂が開いているわけもないので、ピポの能力で保存していた保存食を、ワゼが調理したのである。
【たまに忘れられるよね、この能力はピキッツ】
『制限はあれども、加工食品とかにすれば制限内に収められますからネ。その能力もつけてほしかったですヨ』
「いやワゼ、お前の内臓武器とかはどうなんだよ。あれ明かに、見た目の体積以上に内蔵していると思うんだが‥‥‥」