事件とでもいうのだろうか
つい先日、ちょっとやらかして気分がブルーです。
紛らわせるために書いているけど、やっぱりやらかしてしまうと、本当につらいんだよなぁ‥‥‥
SIDEリュー
休日、ここ最近冬に入りそうなこの頃の冷え込みで、朝起きるのがおっくうになっているせいか、人影がまばらな寮の食堂で朝食をとっているとき、ふとある噂をリューたちは聞いた。
「なんじゃその変な話は?」
「どうも、そんな噂が流れているみたいなんだよな‥‥‥」
「ん?なんか同じような噂話が多いな」
【どうやら結構広まっている話のようですね】
あちこちの卓上で、朝食をとりながら噂を話し合っている人たちが見られる。
どうやら皆、同じ噂話で盛り上がっているようなのだ。
その噂の名前は『集団土下座懺悔事件』。
ある日の朝、突如としてある人の家の前に大人数が土下座して、その罪の告白を行うというものらしい。
土下座する人は、それなりの悪事を隠してやっていて、自覚があったようだがなぜか突然その悪事の告白を、その行った相手に対して全部吐き出してしまうのだとか。
【それって事件なのでしょうか?良い事のような気がするのですが?】
『それがそうでもないようですネ』
その噂話を聞いていると、ワゼがそのよくない面を話し始めた。
普通、悪事を暴露してくれるのはまだいい。
だがしかし、その暴露をする人の立場が問題だったりするのだ。
『例えば、どこかの大商人だったりして賄賂の事実を暴露したり、どこかの大貴族で汚職をすべてさらけ出したりもしますが…‥‥良い事のように聞こえて、ちょっと面倒ごとを引き起こすのデス』
商人の方では、その者が務めていた商会での悪事をばらしたはいいが、その商会に属していた人でも、まともな人がいたりして、風評被害を受けたりする。
貴族の方では、治めていた土地での汚職話から、同じように風評被害で他の貴族たちも疑われたりと面倒なことになっているのだ。
『確かに嘘はいけないことデス。ですが、世の中には暗黙の了解というものや、悪しきところで統括る人がいるからこそ、馬鹿をやらかされる前に始末をしてくれるなど、ちょっときれいごとでは済まないようなこともあるのです』
光があれば闇もある。
確かに悪事はいけないことだが、それでもバランスをとるためには必要な事もあるのだ。
面倒であり、正義感が高い人にとってはいいことなのだろうけど、国とかにも当然後ろめたいことがいくつもあるし、全て正直にされて無事に過ごせる人なんてあまり世の中にはいない。
一生を正直者で過ごす人はいるだろうけど、やはり人は何処か隠してしまう事もあってこそ、周囲のバランスを保つのである。
その領分をわきまえてこそ、完全にダメな悪事に対しては制裁が下るが、必要に駆られてという事で無罪になることもある。
善悪あれども、そのどちらも欠けては世の中が成り立たず、ややこしくて難しい問題なのである。
『で、その為経済的に混乱したりして、市場価格が値上がったりなどと、面倒ごとが起きてしまうのデス』
必要悪…‥‥とは言いたくもないが、世の中完全にきれいごとでは済ませることができない例もある。
例えば戦争なんかが極端な例だろうし、しいて言えば会社のように他社との競争でのし上がったりする際に、きれいごとでは済まないようなことがあったりするだろうし…‥‥結局は、難しい問題で解決しないのである。
その為、ある程度の領分というか暗黙の了解はあるのだが…‥‥それをぶち破るかのように「集団土下座事件」というのが起きているのだとか。
「しかし、どうしてそういう事件が起きたのだろうか?」
【集団暗示とか、催眠とかでもかかって正直に暴露したくなったのでしょうかね?】
謎ではあるが、どうしようもない。
というか、どうする気もない。
リューたちは今は一介の学生に過ぎず、某猫ロボの古い歌にあった奇妙奇天烈、摩訶不思議な出来事に関して調べる義務もない。
噂は噂であり、下手に首を突っ込まないほうが良いであろう‥‥‥‥そう判断して、リューたちはその噂に関してそれ以上話すのはやめたのであった。
…‥‥翌日。
「「「「すいませんでした!!」」」」
ものの見事に、寮のリューの部屋の前で土下座する者たちが数多くいた。
「‥‥‥えっと、何だこの状況?」
部屋から出ると、そこに待ち構えていたかのように大勢の人たちが土下座の姿勢で固まっており、その光景にリューたちは唖然とした。
「すいませんハクロさん!貴女がよく糸を放出して取り忘れていた分を、こっそり服屋などに売却し、小遣いにしていました!!」
「ごめんなさいごめんなさいピポちゃん!!君のその愛らしい姿を木を彫って人形にして残し、大量に売りさばいていたのです!!」
「ファイさん申し訳ありません!!おなかの調子が良くない時に、親切心で胃腸薬をもらいましたが、スキュラ製の薬品という事で薬屋などに高額で売却してしまいました!!」
「ワゼさん失礼でしたが、貴女の料理のレシピを勝手にメモって、他の方たちに売り渡していたのです!!」
それぞれが一斉に、己のやったことを告白し、懺悔してきた。
…‥‥どうやら、件の「集団土下座」とやらが今回俺たちに当たってきたようである。
というか、俺に関しての懺悔がないのはどういうことだよ。主よりも、従魔たちの方へ懺悔することが多いのって何だよ。
【えっと‥‥‥糸の回収は後で服を作るためにやっていましたけど、取り忘れ分が換金されていたのですか‥‥‥】
【ピキッ・・・・・・んー、ちょっとその木彫りのピポが下手過ぎて、そっちの方が謝るべきなような】
【あれ?それ普通の胃腸薬カナ。手持ちになかったので、市販されていた物を渡しただけだったのだが…‥‥】
『いや、別にレシピのメモぐらいは良いデス。ですが、売り渡したというところはだめですね…‥‥後で、その売却分をすべて持ってきてくだサイ』
さりげなくこちらはこちらで毒舌も混じっているが、彼女達にとっても驚く懺悔のようだ。
まさかの集団土下座がこの場で行われたことにリューたちは驚く。
そして、その日のうちに学園中に広まり、何かしらのやましいことがあるらしい人たちは、自分がそうならないように警戒するのであった。
…‥‥にしても、なんでまたいきなり集団土下座懺悔が起きたんだろうか?既にこの学園に、その元凶が侵入しちゃったのだろうか?
――――――――
SIDE???
‥‥‥その集団土下座が起きているその光景を見ているものがいた。
【‥‥‥やべっ、どうしようこの状態なのだよ】
冷や汗をかきつつ、誰にも気が付かれることなくその者はそうつぶやいた。
この土下座が起きる原因を作り出してしまった元凶でもあるのだが、その者はそうするつもりはなかった。
いや本当に、こうやって罪を告白し、土下座させるような行為など矯正させるわけでもなく、本当は別の目的があったのである。
やりたくはないけど、自身の修正というべきか、その種族として縛られていることに関して、重要な事をやらざるをえなかったのだ。
だがしかし、なぜかことごとくその目的を果たせず、しかもその目的のために起こした行為が土下座&懺悔という、摩訶不思議な状態に引き起こしてしまったのである。
【ああもう、どうしようどうしようどうしよう!!体では分かっているのに、何でこうも皆が土下座と懺悔をしてしまうのだよ!!自然と求めてしまうのに、その目的を果たせずになんでこうなってしまうのだよーーーーー!!】
頭を抱え込み、そう叫ぶが、誰もその者に気が付かない。
自身の本能では分かっているはずなのに、理性で拒否してしまい、そしてなぜか土下座と懺悔をさせてしまう。
己の種族の特性と、その結果のジレンマにその者は悩む。
【…‥‥待てよ?そういえばあの懺悔の中心にいながらも、全く誰にも言われていないものがいるけど‥‥‥あの人なら、もしかしたらうまくいくかもしれないのだよ!!】
ふと気が付き、その土下座と懺悔の中にいながらも、全く誰にも懺悔されていない人物に彼女は気が付く。
そして、その人物を取り巻く状況などを把握し、もしかしたらの可能性をかける。
【実行は今晩!!これでうまいこと行かなかったら、もう消滅してしまうのだよ!!】
本能が求め、それでいて目的が果たせないがゆえに、その者の体はすでに消えかけていた。
その為、誰にも気が付かれないがゆえに感じる孤独を無くしたかったのである。
そのターゲットを絞り、最後の賭けとしてその者は準備のために、一旦その場から姿を消すのであった…‥‥
【でも、本能でわかっていても…‥‥やはり嫌なものは嫌なのだよ】
その種族ゆえに、彼女自身が求めなくとも自然と求めてしまうその行為。
せめてその苦痛を和らげるために、色々なものを用意しに行くのであった‥‥‥
この集団土下座懺悔は一体何が原因なのだろうか?
というか、本当に何をやらかしているんだろうか土下座してきた者たち…‥‥
他にも独白はあったようだが、内容がちょっと健全ではないので書かなかった。
次回に続く!!
‥‥‥ちなみに後日、ハクロは専用の糸保管用の袋を。ピポはモデルになりつつも指導を。ファイは手元に市販薬と自家製の薬品の両方を所持。ワゼはレシピを正式に料理本として出すのであった。
「懺悔した人たちには?」
【儲けた分は、しっかり回収しましたよ】
【下手くそなのは、きちんと修正したっピキッツ】
【薬品の人は、私のじゃなくて市販薬の方でやってしまったので、ちょっと詐称で連れていかれたカナ】
『しっかり制裁して、今後二度と不埒な真似もしないように調きコホン、話し合いましタ』
‥‥‥あれぇ?後半ちょっとおかしくないか?特にワゼ、お前何を言いかけた。