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日常に戻・・・・・れ?

ちょっとした日常回?

SIDEリュー


‥‥‥大学園祭も過ぎ去り、季節は冬に移り替わろうとしていた。


 この時期になると冷えてくるので、皆布団から出にくい状況になるらしく、学園の近くに寮があるのだが、それでも遅刻する人が多くなってきた。


 そして、もう一つこの時期になると目立つことと言えば…‥‥



「あ~~~~暖かいなぁ~~~」

「冬に一匹は欲しくなるぞぉぉ」

「いてよかった、本当に従魔がいてよかった…‥‥」



「おおおおおい!従魔で暖をとるのもいいが、授業に集中するのだぞぉぉぃ!!」


 ボンブラスト先生の声が響き渡るが、馬耳東風というべきか、皆聞いていなかった。



 魔物使いの授業なのだが、今日は外でやるので寒い。


 そして、魔物使いには従魔がおり、その中には暖が取れるものがいるのだ。


 ウルフやバードなど、毛がもこもこした従魔にくっつくものがいれば、火を噴いたりする従魔で焚き火をとったりと、皆それぞれ熱を求めるのである。




 そして、それはリューたちも例外ではない。


【ピキ―ッツ!!ピポピポファイヤァァァァァァァ!!】


 ゴウッと燃え盛り、活発に動くピポを中心に、皆で囲んでいた。


「あ~‥‥こういう時に、炎を扱える従魔がいるのは良いなぁ」

【冬服や防寒具などもありますけど、やっぱり古来から寒い時には熱源となる火が大事ですよねぇ】

【水中ならば特に気にもしないけど、やっぱり地上に出ていると寒いカナ】

『私の場合はゴーレムですのでそこまで暑さ寒さに関する感覚は緩いのですが、暖まれるのはやはり良いですネ』


 全員もこもこな毛皮もなく、衣服によって対応しているだけである。


 その為、やはりピポのような物理的に暖かい存在は欠かせないのだ。



‥‥‥冬眠とかありそうなものだが、するのはどうやらベアー系統のモンスターぐらいだそうで、野生で生きていたハクロやファイはどう対応していたのか聞くと、羽をかき集めてダウン120%以上の超暖かい衣服を作って着用したり、温度が変わりにくい水中に潜って逃れていたそうである。




 そういうわけで、現状皆従魔たちに温めてもらっている状態で授業が進みにくいのであった。



「何とか話を聞くのだぞい!!」


 ボンブラスト先生がかんかんであるが、授業を聞かないことよりも皆が暖まっている方に嫉妬しているような気がする。


 ついでに、最近ボンブラスト先生の想い人であったアマゾネスのボルケーニン先生が、何と遂に理想のダンディなおじさまとやらを見つけて交際を開始したそうである。


 その事に関しての怒りも籠っているのかもしれない‥‥‥なんか哀れである。



「こうなれば…‥‥今日の授業を変更するぞい!!」

「といいますと、どのようなものにですか?」


 怒ってそう言いだしたボンブラスト先生に、生徒の一人がそう尋ねた。



「一日中ランニング授業だぞい!!走れば寒さも吹き飛ぶし、運動して足腰を従魔と共に鍛えられるのだぞい!!」


…‥‥それは魔物使いの授業というより、体育の授業ではなかろうか?


「ついでに、グラウンド50周とするぞい!!従魔の背に乗るのは禁止だぞい!!」

「「「「「ご、50周!?」」」」」



 流石に横暴すぎると皆で抗議したが‥‥‥‥怒りに燃える先生には効かなかった。


「文句があるのならば、達成してから好きなだけ言うがいいぞい!!その代わり、今から120分以内に出来なければ強制的に補習授業を休日に組み込むのだぞい!!しっかり測定するからズルもできんぞい!!」


 そう宣言され、嫌々ながらもリューたち含め魔物津秋科目を受けている生徒たちは走り始めた。


 120分以内に50周…‥‥だいぶ横暴だが、やらなければ休日が補習授業になって無くなってしまう。


 全速力で皆は駆けだし、そして10周ほどでダウンする人が続出し始めた。



 魔物使いは基本的に従魔に指示を出す立場。


 ある程度の護身術とかも習うとはいえ、やはり体力面で厳しいところがあるのだ。いや、それでも一応一般人よりはまだあるほう‥‥‥なのかな。


 特に、日常的に従魔の背に乗って移動している人ほど、辛くなる傾向にあるようであった。



「とはいえ、魔法まで禁止にされていなかったのがよかったな‥‥‥」


 従魔の背に乗るのは禁止されているが、魔法の使用までは禁止されていない。


 その事に気が付いた者たちは、各々が何とか使える魔法とかで走ることにサポートして体力を持たせようと努力する。


 そしてリューも同様に、魔法でなんとかごまかしていた。



 『重力弾(グラビティパレット)』で、重くする効果からわざと軽くする効果に変えて自分に放ち、軽い体で風のように駆け抜けているのである。


 とはいえ、走る際に踏み込みで軽すぎると走りにくくなったので、地に足を付けた瞬間は元の体重になるように工夫も忘れない。


 魔力も十分余裕があるのでこのまま完走できそうである。



【この程度ならば楽ですよ】


 リューを背中に乗せれれないのが不満そうだが、それでもかなりの速さで走れるハクロ。


 蜘蛛の下半身はだてではなく、しかも体力的に余裕があるので平気なようだ。



【跳ねて~♪ピキッツ♪跳ねる~♪】


 ピポは歌を歌いながら、人型の見た目とはいえ、フェアリースライム(・・・・)のスライムの特徴か、走るよりも跳ねながら移動するのが楽と判断して進んでいた。


 スキップしているように見えるけど、脚力はあるので跳ね過ぎないように調整しているという繊細な部分もあるようだ。




【魔法はありだから、この移動方法も楽カナ】


 タコ足ゆえに走りにくそうだが、そこは魔法で補うファイ。


 自分の進む道だけ凍らせて、スケートのように滑って移動していた。


 足の吸盤で停止したりなど出来るから、止まれないなんてことは無さそうである。


 これはズルなような気もするが、魔法は禁止されていないのでありだろう。しかし、時たま5回転ジャンプを決めるのはなぜだ?


【気分カナ。たまに10回転もできるカナ?】


 …‥‥フィギュアスケートとかやっていたら、とんでもない選手になっていそうである。というか、どうやってやるのか後で教えて欲しいな。




『音もなく駆け抜け、疾風のように走り抜けるのもメイドの嗜みデス』


 ワゼの場合、メイド服のロングスカートで足が見えないけど、明らかに移動方法がおかしい。


 ほぼ足を音すら立てず、足跡すら残していない移動方法って…‥‥まさか中で浮いていないよね?UFOのようになっているのか?


 というか、まずそれは「走る」というのだろうか?








 ツッコミどころがありつつも、なんとかリューたちは完走しきった。


 流石に魔法ありでもかなり体力を消費したので息切れはする。


 そして、その横でちょっと熱くなったから汗を拭いているハクロたちを見て、彼女達が息切れしていないことに気が付き、改めて彼女たちモンスターの持つ基礎体力の高さに驚いた。


 考えてみれば、見た目が人に近くとも、中身はだいぶ違うだろうからね…‥‥まぁ、約2名魔法や謎の方法で移動して、走っていると言えるのか怪しかったけどな。



「しかし疲れたなぁ…‥‥やっぱり魔法ありでも結構きついな」

【主殿、水を飲むカナ?魔法で氷入りの冷たい水を出せるカナ】

『ただ水分を補給するだけではいけませんヨ。汗で塩分などがでていますから、その足りなくなった成分の補給用の粉末ジュースがありますから、これを溶かしましょウ』


 用意してくれた飲み物は、走って発生した熱を冷ますかのように程よく冷えており、何を材料にしているかわからないが、甘みもあって飲みやすかった。


「なかなかおいしいなこの飲み物」

『材料は果物や野菜などを混ぜたものですからネ。飲みやすいように甘さをメインにしましタ。…‥‥失敗作は拷問用にならないか、少々その手の機関に交渉していますけどネ』


 ちょっと待て、拷問用って何?


『流石に私でも、未知なる新しい物を創り出すには計算ではわからない物がありますので‥‥‥犠牲も出ましたが、何とかいいものが出来て良かったデス』


 そうにこやかに笑ってワゼは言ったが、その犠牲の部分を尋ねるべきかどうかリューたちは迷った。


 だがしかし、聞いてもろくなことになりそうがないので、尋ねないことにしたのであった…‥‥




―――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEワゼ



…‥‥その日の深夜、皆が寝静まるころ、密かにワゼは学園内を歩き回っていた。


『ミ―ッツ!ミッツ!』

『3号、また不審人物を捕獲したのですカ』

『ミッツ!』

『では、とりあえず王城の地下牢へ護送してくださイ。証拠は多いほうが良いですし、ついでに実験材料にもなってくれる大事な人ですからネ』


 同様に学園内を見回っているミニワゼの一台がかけてきた通信に、ワゼはそう指示を出した。



‥‥‥この間のマンイータープラントとの一件から、密かに学園内へ侵入し、そのまま寮へも侵入しようとする不審者たちがいることにワゼは気がついていた。


 おそらく、件の自称神聖なる国から仕向けられた間者とかであり、この国に潜入していたはずの間者の報告などが途絶えたことで不審に思い、送って来たのであろう。


 

 だがしかし、そのすべてを主に知られぬようにワゼは捕縛していき、その件に関しては国王の方でもきちんと把握して連携をとっていた。



 他国への方法入国や、その他怪しい工作などを行っている可能性もあり、その講義の材料に利用するのである。


 けれども、その神聖国は全く受け付けず、苦しい言い訳をしながらものらりくらりとかわしていた。



‥‥‥でも、その言い訳もそろそろ尽きてくるころであろう。


 徐々に追い詰めて行き、そして潰していく。


 それに耐えきれなくなった神聖国は、数少ない自国の魔封印石を利用して騒ぎを起こし、何とか目を背けようとするのだが…‥‥ワゼの方で回収し、騒ぎを起こさないようにして事前にその危険な芽を潰しているのである。



 ワゼに狙われたその神聖国は、まだ気が付いていないだろうが、実は徐々に経済面からも、農業面からも、多方向から攻められているのだが…‥‥‥気が付き、逃れようと馬鹿をやらかすのは必然である。


 そこに注意しつつ、いかに主の方へ被害がいかぬようにとワゼが考えているその時であった。



『ン?』


 ふと、なにか妙な気配をワゼは感知した。


 ゴーレムであり、眠る必要性の無い己には効かないが…‥‥精神的な魔法というか、そういった類の物を。


 自身に向けられたものでもなく、どうやら学園外の方でなにかが起きたようだが…‥‥よくわからない。



『特殊な魔法…‥‥にしては、魔力反応などが薄いですネ』


 

 妙な反応だが、それでもどことなく気になったワゼ。


 似たような反応を、過去のデータなどから探し求め…‥‥ある答えに彼女はたどり着いた。



 夢見る深夜の時間帯に感じたその反応。


 似たような例としては、往生がある首都の方で聞いたことがある。



『ですが…‥‥確定するには妙ですネ?』



 その反応の正体を結論付けたが、そうだと言い切るにはどこかおかしな点に彼女は気が付いた。


 データ通りでもなく、かと言って全く違うわけでもない。



『‥‥‥この場合、亜種?それとも上位種?はたまたは…‥‥』


 そうつぶやきながらも、奇妙なその反応に対して結論は出ず、結局ワゼは念のために経過観察を見て、自身の主に害を及ぼすか否かで判断することに決めたのであった。



深夜に働くワゼが感知した奇妙な反応。

予想はつくが、それにしてはおかしい挙動にワゼは観察を行うことにする。

突如として現れたが、まるで惹き寄せられたかのようなその反応は一体‥‥‥

次回に続く!!


…‥‥ちなみに、ファイがやっていたスケート移動方法は、氷の魔法が扱える者たちがよく使用していたりもする。

【これがなかなか便利で、勢いが付けば壁すら垂直に登れるカナ】

「でも、ファイの場合その吸盤で張り付いて登れそうだが?」

【それはそれ、これはこれカナ】

「あと、氷の上を滑るなら、靴をはかないとしもやけになりそうなんだが…‥‥」

【表面を粘液で多い、さらさらにしてコーティングしているから大丈夫カナ】

「そういえば、乾燥から守るためのコーティングでもあったよね‥‥‥」


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