開催前のそれぞれの企み
今回は主人公不在回です。
SIDEシュタイ平原
・・・・・・深夜、夜空には大きな月が昇り、その月明かりの下、数人の影が動いていた。
「‥‥‥おお、段々建物が建てられてきているな」
「なんでも4大学園の合同で学園祭を行うためにやっているそうだが‥‥‥その分、これを隠しやすいからいいじゃないか」
平原にちまちまと、真夜中には建設は止まっているが、それでもだんだんできている建物にそれぞれは驚きつつ、自分たちの計画に利用できそうだと笑みを浮かべる。
「しかし、よく本国からかなり早く『魔封印石』が届いたな…‥‥よっぽど早く事を済ませたいのだろうか?」
「以前にも、使用したことがあったようだけど、その時は確か割とあっさり討伐されてしまったらしいからね。その教訓を生かして、この際やるときにはきちんと出し惜しみをしない方針になっているようよ。だからこそ、このモンスターが封じられた魔封印石を出してきたのでしょうけど…‥‥」
そう言いながら、その者たちは送られてきたその小さな石の塊を見る。
見るからに不気味な色合いであり、中にモンスターが封じられているせいか、鼓動が伝わってくるようで…‥‥まるで生きた石のようにも思えるのである。
「開封のタイミングは学園祭の最中…‥‥それも、もっとも今回魔王と疑わしきターゲットが接近した時に出来るのがベストなんだが…‥‥」
「ちょっとした魔道具で遠隔操作で割れる様にしようか。相当な騒ぎになるだろうから、その最中に魔道具を回収してしまえば、あとは証拠品もほぼ残らないだろうな」
そう一人が言いながら、その場に魔封印石と呼ばれるものを置き、人目に付かないように埋めて行き、いつでも遠隔操作で発動できるように仕掛けを施していく。
月明りのその行動は誰にも見られず、仕掛けを終えた後、彼らは散会した。
学園祭の、その起爆のタイミングまで隠れ潜むために…‥‥
――――――
SIDEワゼ
『ふむ…‥‥これまた厄介なものを持ち込んでいるようですネ』
明け方ごろ、学園の寮室内にて、ワゼはミニワゼたちからの情報を収集し、整理していた。
本来なら深夜に行う予定だったのだが、しばし情報が届くのを待つためにタイミングを彼女はずらしたのである。
まぁ、明け方ごろまで待っている間、密かに学園に入り込もうとしていた不審者などを駆除する仕事があったので別に暇ではなかったが。
夏休みの時に、リューがヴィクトリアと婚約を結んだことを、今もなお心よく想わない輩はいるようで、そのせいか嫌がらせのように間者のような輩を送り込んでいる者たちがいるのだが‥‥‥アレン国王との提携で、逆に利用して手駒にしたり、弱みをつかんだりとむしろ来てもらった方が利益が大きいのであった。
毒を以て毒を制し、そしてその毒を更に強化して送り返したり、解毒剤を作ったりしているようなものであろう。
そんな中、届きたての新鮮ほやほやなある情報を入手したワゼは考え込んだ。
『魔封印石…‥‥中にあるのはあのモンスターですカ……』
放っておけば被害が出るようなものでもあるが、逆にリューに力を付けるいい機会でもあろう。
だがしかし、知っておいて犠牲者が出るのも嫌なので、どうしたら何事も丸く収まるのか彼女は考える。
ついでに、被害を出そうとしてきた者たちにもそれなりの報復の用意もしておく。
『カプサイシン濃縮液でも用意しましょうカ。浸透性を高めて、より長続きもするよう二・・・・・・』
敵が何かをやらかして来ようとするのであれば、最大限利益を大きく、被害を最小限に。
それがワゼのモットーでもあった。
『おっと、そろそろご主人様たちが起きる頃ですシ、食堂の方でまたお手伝いをしましょうかネ』
気が付けば朝方を過ぎて、もうそろそろ早朝である。
考えながらも、己の仕える主のために動くワゼであった…‥‥
――――――
SIDE王城
「4大学園の合同で行う大学園祭が楽しみだなぁ」
ニヤニヤと、アレン国王はその知らせを聞いたときからある計画を練っていた。
己の息子がやらかし、投獄せざるを得ないこともあったのでストレスがたまっていたのだが、このような楽しそうなイベントはそのうっぷん晴らしにちょうどいいのである。
だがしかし、国王としての仕事も多くあり、行く予定は何とか出来たのだが、滞在する時間が短く、不満である。
そこで、アレン国王は宰相のカクスケの目を欺いて、滞在時間制限を超えて学園祭を楽しむ方法を計画し、その開催の時期を楽しみに待つことにした。
『ミ―ッ、ミミッツ、ミッ』
「ふむ?ワゼ殿から連絡か?」
ふと、机の上で書類の整理をしてくれていたミニワゼ7号が発した言葉を理解し、アレン国王はその連絡を受けることにした。
・・・・・・実は婚約話が決定した時に、密かにワゼはアレン国王と提携を結ぶ密約を交わしていた。
ワゼとしてはこの王城周辺の城下街の情報や、周辺諸国との問題関連が集まりやすい王城での情報収集を望み、アレン国王としてはこっそり城を抜け出す際の入れ知恵などを求めていた。
両者の利害が一致し、こうしてたまにミニワゼがその密約の懸け橋として、アレン国王の下に1体やってくるときがあるのだ。
ミニワゼはワゼ本体との連絡も可能であり、電話のような役割も付いていたようでこうして何かあった際にはすぐにやり取りが可能になっていたのであった。
『ミ―、ミミミッ、ツ、ミツ、ッミッ、ツッミッ、ツッミツ』
「‥‥‥なるほど、そうする輩と、やはりあの国の奴らが仕掛けようとしているのか」
ミニワゼを介してのワゼの情報に、アレン国王は考える。
ちなみに、ミニワゼの言語はアレン国王には分かっているつもりだが、周囲にはわからないようになっているそうである。
なんでも、機密保持などに使用が可能なようであり、自然に理解できるようにと、意図的に情報開示を避けるように機能を切り替えているようであった。
「だったら、遠慮せずにガンガンやれ。リュー殿の方はそちらの判断に任せるから、何かあっても国王から許可をもらったとすればいい。だがしかし、絶対に死人を出すようなことはやめてくれ」
『ミミミッツ・・・・・・ミッ』
アレン国王はそう命令し、ワゼの方でも受諾したようで、通信が切れた。
「ふぅ・・・・・・さてと、この機会にせっかくだからそろそろ馬鹿をやらかしてくれるような国を黙らせるようなこともしてくれると気が楽なんだがなぁ」
息を吐き、そう溜息を吐くアレン国王。
それでも、嫌な事を払しょくし、いかにして学園祭をどう楽しむのかを考え始めようと気持ちを切り替えるのであった。
なおこの日、宰相カクスケが悪寒を感じて、なんとなく胃薬の量を増やしたのは言うまでもない。
「‥‥‥なぜだろうか。私の余命が余り無いように思えてきたぞ?」
次回、いよいよ大学園祭が開催される。
4つの学園が合同で主催し、その規模は大きなものであろう。
だがしかし、水面下では様々な思惑が交差しているのであった。
次回に続く!!
・・・・・・敵の手は利用しつくし、自分たちに最大限利益があるように密かに動くメイド。
そして、国王の行動に、そろそろ胃潰瘍か胃がん辺りでぶっ倒れそうな宰相。
考えてみたら様々な人が多く出てきたな‥‥‥設定とかまた出してまとめておこうかな。
読者の方々にも、そろそろあれは誰だっけ?というような人がいそうですしね。