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なぜこうも巻き込まれるのか

小説とかで、主人公って色々な目に遭うことが多いですけど、それだけ濃い人生を送れるのは何処かうらやましくも思える。

悲劇は嫌だけどね。

SIDEリュー



「‥‥‥で、ワゼ。結局どうなった?」

『昨晩、襲撃もしくは密かに暗殺をしようとした方たちはご主人様が就寝後も出まして、現在のところ全員捕縛しており、地下牢獄へ放り込まれていマス』


 決闘の翌日、リューは起床して頭がはっきりしてきたところで、ワゼに尋ねていた。



 どうやら昨日の決闘で、結果を快く思わなかったというか、表立って反論できずに不満を抱え込んでいた方々はいたようであり、その単純な思考で暗殺者などを差し向けてきたようである。



 睡眠中なら無防備だと思っていたのだろうけど‥‥‥あいにくながら、こちらにはワゼがいた。



 彼女の場合、メイドゴーレムなのでほとんど睡眠を必要とせず、一晩中活動が可能なのである。


 内蔵型子機でもあるミニワゼたちもフル稼働させて王城中を見張っていたそうだが、案の定昨晩不審者が大量に捕縛できたそうなのであった。



 なので、侵入者という事もあって王城の地下牢へ放り込み、現在どこから送られてきたのか尋問されているのだとか。


 そもそも、決闘場で敗北した者にはペナルティが与えられるのだが、それを我慢すればまだ家は持つかもしれなかったのに、その我慢が出来なかったがゆえに、滅びの道をたどったとするならば‥‥‥同情はしないけど、もっと根性を付けろよと言いたくなった。


『とはいえ、不審者どもが捕縛したとはいえ、口を割ったとしても関わった者たちは皆切り捨てられるでショウ。保身のための、トカゲのしっぽ切りのような物デス』


 やれやれと言った感じに肩をすくめるワゼ。


 まぁ、そもそもそうやって保身を作っていなければ、暗殺者とかを仕向けたりはしないかもしれないが…‥‥意味はないだろう。


 なぜなら、その仕向けた家がいくら首を振ってごまかしたとしてもだな…‥


『ま、きちんと記録し、調査済みデス。証拠品も素早く押収して国王陛下に先ほど献上しに行きましタ』

「アレン国王はどうした?」

『受け取った後、物凄いニヤニヤと腹黒い笑みを浮かべて、やらかしてくださった家にどのような処分を下すのか考えていましたネ。知らぬ存ぜぬをしようとも、不正などの証拠をついでに渡したので、なんにせよご主人様に害をなそうとしたところは因果応報で悲惨な目に合うでショウ』


 にやりとワゼが笑みを浮かべ、アレン国王の反応を細かく説明してくれた。


 腹黒王と、情報収集女王とも言えるメイド‥‥‥敵には絶対に回したくない二人である。




 なお、捕縛した者たちで切り捨てられたことが分かっている者たちで、完全に心の底から王家の方に忠誠を誓う者たちならばアレン国王は引き込む気らしい。


 王城にまで侵入で来ていたという事はそこそこ優秀なはずだし、むしろ切り捨ててもらったことで逆に利用できた方が、万が一にでもその切り捨てた家に向かわせたときの相手の反応が面白そうなのだとか。


 切り捨てたはずの相手に、逆襲される恐怖の顔…‥‥性格悪いような、なんとなくわからないでもないような。


 有能な人材であれば、元が敵であれ味方に引き込めるのであれば引き込んでしまえという事なのだろう。


 見習うべきことかもしれないし、学べたという事で良いのかな?





『それはそうと、今日はもうさっさとオーラ辺境伯爵領地の方へ里帰りするために向かったほうが良いかもしれませン』

「というと?」

『実はですね‥‥‥』


 そのワゼの話すことに、リューは思いっきり嫌な顔をしつつ、アレン国王に念のために報告するように命じたのであった。


「念のために、アレン国王にちょっと頼んでやってもらおうかな?」

【決闘で国王だけが得していましたからね‥‥‥少々動いてもらってもいいでしょう】

【予測できるのであれば、未然に被害を防ぐが減らすのが良いピキッツ!!】







 王城から出て、まだ城に滞在するらしいヴィクトリアに別れを告げつつ、城下街へと降りたリューたち。


 このまま首都の外へ出て、適当な馬車に乗るか、リューの魔法で移動してオーラ辺境伯爵領地へ里帰りをする予定だったのだが…‥‥分かっていたとはいえ、物凄い面倒な人物に出くわしてしまったのであった。



「おい!!そこのお前!!その美しい奴らを全部よこさないかぁ?」


 ニヤニヤと、殴りたいような顔を浮かべるちょっと小太り気味の同世代らしい男子。


 来ている服はそこそこ値が張りそうなものだが、脂肪によって腹が張り詰めピッチピチである。



 どうやら昨晩、ヴィクトリアとの会話に出てきた‥‥‥



「おい!!このボーンブリッド・フォン・ザウター様の事が聞こえないのか!!この国の第3王子で、次期国王に就くのに最もふさわしい者だぞ!!」



 その話題の中の大馬鹿問題児王子と出くわしてしまったのであった。


 城下街でいきなり何をしてくれていようかこの馬鹿野郎が‥‥‥。





 ふと、人ごみの中をよく目を凝らせば、混じっている中にお忍び変装中のアレン国王を発見。



 城を出る前にワゼの情報に入って来たのが、あの馬鹿王子。


 面倒な事が多いようなので、念のために国王陛下にこっそりついてきてもらったのだが‥‥‥今まさに馬鹿をやらかしているのは紛れもない息子の一人だと分かると、目の奥に怒りの炎が見えるどす黒い笑みを浮かべていた。



「ほぅ、これはこれは第3王子殿でしたか。全く知らなかったとはいえ、いきなり民衆に対して上から目線の怒声を飛ばすなど、たいそうご立派な教育を受けているのでしょうか?」

【ぷっ】


 リューのわざとらしい言葉遣いに、ハクロたちは笑いをこらえていたが、少し漏れたようだ。



「なにぃっつ!?このボーンブリット様を知らなかったのか下々の者は!!まぁ、仕方がないか!!俺様は下々の者が届くことのない高みにいるのだし、こうやって来ること自体はないからなぁ!!」


 何処をどう勘違いしたのか、なぜかご機嫌になったボーンブリット。


 そのポジティブさはある意味すごい。いや、馬鹿だからか?




「あらあらどうしたのかしらぁん?ボーンブリット様ぁぁ~?」


 と、なにやらものすっごい気色悪い甘い声が聞こえたと思ったら、人ごみをかき分けて誰かがやって来た。



【ヴッ!?なんですかこの臭い!?】

【ピギッツ!?】

【なんという悪臭カナ‥‥‥】

『ノーズ機能シャットアウト』


 同時に物凄い甘ったるいような臭いが届いてきて、ハクロたちはリューの後ろの方に素早く後ずさりした。


 どうやら人にはただ甘いと感じさせる臭いのようだが‥‥‥モンスターであるハクロたちにはとんでもない悪臭を感じさせるようだ。



 その臭いを振りまいて出てきたのは、これまたごってごてな宝石をちりばめた服を着た、化粧が濃さそうな女性であった。



「いや、この下賤な民にどうやら俺様の事が分かっていなかったようでな。ついでにあの美しい女ども…‥‥いや、モンスターのようだが、抱いてやってもいいのだぞと交渉してやっていたのだよ。しかし今日もいい香りをしているなぁ、愛しのベルモアよ」

「あらあらぁん?そうなの?でもでもでも、あなたにはこの私がいるじゃなぁ~い!!」


 ベルモアとか言う女はそう言いながら、思いっきりボーンブリットに抱き付いた。


 よく見れば、豊満な胸を押しつけられてデレデレしているボーンブリットであったが‥‥‥



『あれ詰め物ですネ。とはいえ、肉体関係を結んでいるようだし、あくまで感触を楽しむだけの人なのでしょウ』


 ワゼのその言葉から、どうやらあのボーンブリットは胸の大小を気にせず、感触だけを楽しむような変態らしいという事が判明した。


‥‥‥あの腹黒アレン国王の息子らしいけど、本当に似ても似つかない哀れさを感じさせられる。


『ついでに言うならば、この香りはどうやら「淫吸香」のようデス』

【あ、話しには聞いたことがあるカナ。異性を誘惑するお香のようで、確か異性なら甘い香り、同性なら猛烈な悪臭を感じさせるというやつだったカナ?】


 要は魅了のお香みたいなものらしい。


 ただし、人によっては耐性があり、甘い香りがしても魅了されないそうだ。それに、その相手のことを少しでも好いていないと効果がないので、あの王子はその女をマジで好きになっているようである。


 なお、元々の使い道はモンスターの攻撃を避けるために忌避剤として使用されていたそうだ。


 ただし、同性相手には激臭となるので結果として娼館などの、それも臭いをシャットアウトできる個室でしか使われなくなあったようだが‥‥‥




 周囲を見てみれば、余りの匂いのひどさに女性たちが鼻をつまんでおり、男性の方は少々甘ったるそう位だがケロッとしていた。


 どうやらこの場であの臭いベルモアを好いているのはボーンブリットしかいないようだ。



「ねぇ~んボーンブリット様ぁぁ。あんな女たちを欲しがらずとも、私だけを見ていればいいんですよ」

「‥‥うむ!!確かに俺様にはベルモアがいたからな!!そこの下賤な民よ!!やっぱりお前が引き連れているその女たちはいらん!!というわけでさらばだ!!」


 ベルモアの言葉に、デレデレしながらそうボーンブリットは告げ、共にどこかへ去ったのであった。



‥‥‥ううむ、なんというか茶番劇だったな。




 王子が去ったのを見て、城下町はすぐに通常営業へと戻った。


 一応、リューは変装していた国王の下へ行き、とりあえず適当な飲食店で話をすることにした。






「‥‥‥どうでしたか、国王陛下の息子は?」

「なんかもう、喜劇でむしろ笑えたなあの愚息は!!」


 怒りたかったのだろうけど、怒れるほどでもなくむしろ何しに出てきたんだと言いたくなるような茶番劇に爆笑したようである。


「見事に魅了されているようだけど、あのベルモアとかいう女のおかげで逆に他の女性たちに被害は出ていないようでしたね」

『ちなみに、どうやらまだ補習授業期間中で本当はこの場所へ来れないはずでしたが、無理やり抜け出したようデス。おそらく学園の方から陛下に連絡が行くと思われマス』

「ふむ…‥‥王城に戻ってくるだが、一歩も入れずに門前払いをしておこう。どうするかはあの愚息次第だが‥‥‥」

「多分、適当な宿屋に入って夏休みが終わるまでそこで過ごす可能性がありますね」


【あの悪臭が染みついていくんでしょうね‥‥‥その宿屋の人が哀れです】

【ピキ―ッツ、あれはひどい臭いだったよー】

【強すぎる薬は毒みたいなものカナ。まぁ、どのような薬かが分かったならば‥‥‥もうすでに解毒剤及び完全消臭薬も作れたカナ】


 まだあの臭いが残っているのか、苦い顔をしながらもファイが対処できる薬品を作ったようである。


 スプレーみたいに振りかけて、皆から臭いを落とし、念のために国王に消臭薬と対処用の解毒薬などをその場でリューたちは献上した。


『国王陛下、あの手の輩はいずれ自爆するらしいと99%の確率で出ています。矯正は不可能そうですし、もうさっさと切り捨ててはどうでしょうカ?』

「ああ、言われなくてもそうするつもりだ。卒業と同時に‥‥‥いや、これ以上何かやらかしたら即刻王籍から除籍及び平民落ちにしてやろう。以前から考えていたが、やはりそうしたほうが良いと改めて思ったからな」

「ある意味、あの喜劇のような茶番を創り上げる人を無くすのは持ったいなさそうですけどね」


 リューのその言葉に、皆爆笑した。


 アレン国王の息子の事を皮肉っているとはいえ、不敬にもならないのはもはやあの王子は切り捨てられることが決定しているからであろう。




 そして改めて別れを言い、リューたちは夏休みの残りをオーラ辺境伯爵領で過ごすために向かうのであった‥‥‥

‥‥‥ちょっと出た第3王子。

因みにまた出る可能性もあるのだが…‥‥まぁ、短編でも出してみるべきか、それとも閑話に出すべきか。

悩みどころがあれども、笑いのネタには使えそうである。

次回に続く!!



「出番がないな!?」by第1王子

「一体いつ我々は出られるのだろうか?」by第2王子

‥‥‥機会があれば、多分この二人も出せるはずである。決して完璧人間にし過ぎて面白みがないから出さないというわけではない。



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