決闘開始直前
ちょっと短め
SIDEリュー
‥‥‥決闘当日。
王城から離れ、首都のこの決闘のためだけに用意された決闘場の控室で、リューたちはここまでの最新情報を、調査したワゼから聞いていた。
『参加した貴族は76人のようデス。そのうち代理を73人、本人参加が2人、残り1人はどうやら昨日の夜遅く、不幸なことに最近この都市で出没するというサキュバスに襲われて現在意識不明の干からびた重体となったようですね』
「なんかほとんどが代理を出したとか言うけど‥‥‥金に任せてやったのかな?」
【というか、この都市にサキュバスが出るんですか!?】
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『サキュバス』
別名「淫魔」。その別名の通り、色欲にまみれた夢を見せたり、もしくは現実世界で情事を行い、相手が徹底的に干からびるまで絞りつくすという恐るべきモンスターである。
ただし、見境がないわけではなく、どうやら趣向にあった相手でないと絶対に出現せず、中にはそんな生活が嫌だと、むしろ清廉潔白を目指す代わり者が出たりするようである。
また、夢追い人達によって討伐対象とされるのを避けるため、娼館に努めるという者たちがいたりして、たまに屑のような者を再起不能にしたりして役に立っていたりする。
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『どうやら被害に遭った方は、元々相当色欲に溺れていたようで、そこに付け込まれた形のようデス。流石にそんな目に遭ってしまったというのは醜聞的に避けたいようで、黙秘しているようですが、全部ミニワゼたちで調査完了いたしました』
‥‥‥恐るべしミニワゼたちの諜報能力。
なお、好みがうるさいサキュバスだというけど、今回被害に遭った人は中年男性で、そこそこメタボな人なので、そのあたりが好みのものだとか。
リューが襲われる心配はないようなので、ほっとした一同。
「とにもかくにも、結論としては一貴族1戦、計75戦連続での戦闘になるってことか」
【一人当たり1分で全滅させれば75分、つまり1時間と15分で済みそうですけどね】
【腕がなるカナ。戦闘は好みではないが、モンスターとしての闘争本能がうずくカナ】
【関節ないけど、ボキボキッと音を鳴らす感じがするピキッツ!】
『従魔もありですし、普段はメイドとしてですが、ご主人様のためにこの身は盾にも大砲にもなりましょウ』
‥‥‥その言い方、少しおかしいような。
そうツッコミを入れようかとリューは考えたが、一応ワゼのギミックにもあるようなので、合っているかもしれないと考え直し、ツッコミを放棄するのであった。
というか、これで何度思ったかわからないけど、本当に機械魔王に会って話を聞きたかった。
まじでお前メイドに何を仕込んでいるんだよと。
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SIDE貴族用観客席
「いよいよ決闘開始か‥‥‥」
決闘場の観客席には、代理に任せて決闘を見る貴族や、決闘を挑んではいないがヴィクトリアの婚約者となろう人物の実力を測ってみようとする貴族達で埋まっていた。
「ぐふっぐふっぐふ、急な決闘とは言え、金に任せて本気で大丈夫そうなものを雇ったし、おそらくだ以上であるはずだぐひ」
「それに、連戦だから疲れがたまったところを狙えば何とかなるだろうしな」
「しかし、代理に頼まずに自ら出場する方たちがいたのは驚きですなぁ」
「それだけ本気という事なのだろう。代理には任せず、自ら勝利をつかむことで、国王陛下に印象付ける考えもあるのかもな」
決闘の予想議論が飛び交いつつ、その間にせっかくなのでどこが勝利できるかなどの賭けも同時に行われていた。
うまいこと勝てば、かなりの大金が入るので賭けにかける金額を大きくする者たちもいる。
そんな風に予想が飛び交う中、王族用の観客席ではヴィクトリアは手を合わせて願っていた。
リューの負けはなく、全戦全勝でいてほしいと心から思っているからだ。
そんな娘の様子を見て、隣に座っているアレン国王は、娘の恋心の微笑ましさに、頬をほころばせるのであった。
「‥‥‥そういえば、最近息子たちを見ていないなぁ」
ふと、影が薄いような国王の息子である王子たちを思い出したが、今はこの決闘を見ることに集中するのであった‥‥‥
‥‥‥いや本当にさ、アレン国王には息子の王子たちがいるんだけど、登場機会を逃しまくっているんだよね。
ついうっかりして、出るタイミングが無くなっちゃって、ただ今模索中でもある。
出したいけど、出せるタイミングが無くなった不遇な王子たちであった。