性能調査/苦労人負担増加
今回は少し二重のサブタイトルです
SIDEリュー
‥‥ブリテンから学園に帰還して数日。
ワゼを新た兄従魔に加え、ボンブラスト先生にゴーレムの場合での本契約方法を尋ね、実践してきちんと契約を結ぶことができたのだが‥‥‥
「‥‥‥機械魔王の作品と言う話し、マジだったのかぞい」
「ツッコミどころが多い彼女ですけど、本当のようです」
唖然としているボンブラスト先生に、リューはなんとなくその先生の胃に負担をかけているようで、申し訳なくなった。
『ふぅ、これで寮中が完全にピッカピカになったデス』
その目線の先には、汗はかいてないけど拭うような動作をして、学園の男子寮をもう以前はどんなんだっけと忘れさせるぐらい、物凄くきれいに掃除し終えたワゼの姿があった。
ゴーレムの部類にワゼは入るそうだが、内蔵していた箒からレールガンを出せたり、目からビーム、腕からドリルやミサイル、船のアンカーのようなものまで、様々な武器を内蔵しておきながら、戦闘面よりもメイドとしてつくられた故か家事の方に3分の2ほど能力を振っているそうである。
‥‥‥某宇宙戦艦の艦首のような攻撃までできるのに、なんでそんなことを言えるのだろうか。機械魔王に一度常識と言う物を議論しあいたい。
【それってリュー様が言えることでしょうかね?】
【魔力とかが思いっきり人外じみているからカナ】
【いわゆる棚に上げてということ?】
「類は友を呼ぶと言う言葉がありますわね。それじゃないですか?」
ハクロたちの言葉に言い返せないリュー。
と言うか、男子寮なのにちゃっかりヴィクトリアがいるのだが…‥‥まぁ、合宿の最中の話を聞きたいからと、押しかけてきたのである。
ハクロが少しだけじっと見ていたが…‥‥なんだろう、この微妙なハクロとヴィクトリアの不仲間。
とにもかくにも、戦闘よりも家事の方がいいそうなので、物は試しにまずは自室の掃除をリューはワゼに命じてみたところ、ものの数分でピッカピカにされていた。
で、この際に性能テストという事で男子寮全体の掃除をやってもらったところ、新築同然、いやそれ以上に綺麗に掃除されてしまった。
ワゼの掃除能力恐るべし。
ただまぁ、実はこの掃除は彼女一人でやったわけではない。
『ミッ!ミッ!』
『ふむふむ、配管の掃除も終えましたネ。では1番機から3番機はついでにさびや汚れがつかないようにコーティング作業もやっておいたほうがいいでしょウ』
『ミッ!』
ワゼの言葉に、敬礼してその場へ急行する小さなワゼたち。
「‥‥‥そのうえ、あんな小さな機体も内蔵しているとは」
【TSMM:10‥‥‥その「10」は「10番機」と言う意味であったのでしょうけど、まさか統括している方だと誰が想像できたのでしょうか】
苦笑するリューの言葉に、ハクロもうんうんと同意するかのようにうなずいた。
そう、実はワゼには、ワゼを小さくデフォルメしたかのような、『TSMM:ミニシリーズ』、通称「ミニワゼ」と呼ばれる子機のようなモノたちまで内蔵していたのである。ナンバーが1から9までいるし、これで後一体いればサッカーチームもできそうである。性能はワゼの10分の1らしいけど‥‥‥‥本当にそうなのかな。
明らかに他の内臓武器とかの量から考えて、ワゼの体積量では内蔵しきれないはずだが‥‥‥四次○ポケットのような機能があるのだろうか。
とにもかくにも、ミニワゼたちを統括して、一緒になって掃除しているからこそ、フローリングの床板の隙間から、配管の奥深くの汚れまで徹底的に綺麗にすることができるようであった。
でもさ、配管掃除の時だけミニワゼの衣装が赤い奴になるのって、絶対ワゼを作った機械魔王って前世持ちだろう。緑色も混じっているしね。
なんにせよ、この後調子に乗って女子寮も、学園そのものもまとめてピカピカに掃除されたのであった。
‥‥これでもまだ、午前中だぞ。ものの半日ですべて綺麗にするってどれだけなんだろうか。
ワゼの驚きの性能を見せつけられつつ、もし家事能力がすべて兵器の方へ向けられていたらと考えると、どこか戦慄を感じるリューであった。
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SIDEアレン国王
「‥‥‥なるほど、とんでもないもんを発掘したなぁ」
「機械魔王の遺産‥‥‥これが他の厄介な者たちにバレたら、それこそ目を物凄く付けられそうですよ」
報告を読み、笑うアレン国王に対して、宰相のカクスケはものすごく深い溜息を吐いた。
先日のブリテンでの騒ぎの記録があったついでに、リューについての動向も実は国王は探っていた。
その中で、機械魔王の遺産らしいゴーレムを従魔にしたという報告を受けて、驚きつつ笑ったのである。
機械魔王の失われた技術の結晶を手に入れたような事例でもあり、その能力は色々と凄まじいらしい。
報告の中には、ブリテンでの騒ぎを起こした巨大ゴーレムの破壊には、実はそれが関わっているのではないかと言う物までがあった。
「ある意味とんでもないものを従魔に出来るとは、流石と言うかとんでもない奴だな」
その才能に驚きつつも、冷静に分析するアレン国王。
しかし、機械魔王の最高傑作を手に入れたのはいいことなのだろうけど、それを利用しようと企む者たちが出る可能性もあった。
そもそもリューの従魔は、癒しの力を持つ物凄く珍しいホーリアラクネと同じぐらい珍しいフェアリースライム。そのうえ、その場の条件が整えば災害レベルのモンスターとほぼ同等に戦えるほどのスピリット・スキュラがいるのだ。
これらの従魔がいる時点で、相当な戦力と言うか、見る人が見ればなりふり構わず手に入れたくなるような者たちだが、そこに今回の機械魔王の作成したゴーレムが加わるのである。
「強大な戦力がそろえば、それを利用して他国に宣戦布告し、あわよくばその利益を得ようとする馬鹿がいるからな…‥‥まぁ、堂々とやるにしろ、こっそり行うにしろ、どっちに転んでも結末は変わらないがな」
ニヤリと腹黒い笑みを浮かべるアレン国王に対して、宰相カクスケはその馬鹿たちの方が哀れになった。
行動を起こそうとする馬鹿が出たのであれば、将来的に国に害になるような行動を起こす者も自動的に含まれるので一網打尽にすることができるのだが…‥‥捕える際に、確実に国王が前線へ出て、自らギッタギッタのメッタメタにするのが目に見えているからである。
有能であり、きちんとした政治を行えるとはいえ、一応この国の国王。
無茶苦茶な行動を起こして、動けなくなるような重症になっても、亡くなっても困るのである。
それなのに、自ら積極的に動く国王を見て、城内ではいつ、誰が国王の安否の不安で禿げるのか賭け事さえ起きているのである。
ちなみに、一番最初にやばくなりそうなカクスケであると全会一致であった。
「国王陛下‥‥余り無茶はしないでくださいね?」
「大丈夫だ、問題ありまくりだ!!」
「全然大丈夫じゃないですよねそれ!?」
国王の言葉に、ツッコミを入れるカクスケ。
果たして、彼の頭頂部の富は退職するその時まで持つのだろうか‥‥‥‥
‥‥‥カクスケの頭頂部の賭け。
【不毛地帯になるまで】:城内調査
「1ヶ月以内」:4%
「3ヶ月以内」:6%
「7ヶ月以内」:10%
「1年以内」:80%
「結論」:ほとんど希望がないに等しい




