昼寝中に
主人公不在回?
SIDE都市ブリテンの住民:その1
‥‥‥その日、ブリテンの中央にある公園の方で密かに人が集まっていた。
別に何か行事が行われているわけでもない。
誰かが呼び掛けて集まっているわけでもない。
ただ単に、自然とその光景を見た者たちが目を奪われ、そしてその光景の中心にいる者たちを起こさないようにそっと心遣いを持って見守っているだけなのだ。
(いい光景だな…‥)
(ああ、癒されるというか、目の保養になるなぁ)
(惜しむらくは、あの中に入れないという事ぐらいだが、見れるだけでも良い)
ひそひそと静かに話し合ったり、アイコンタクトで会話したりして、その光景を心に焼き付けようとみていた者たちは思っていた。
公園の中央、芝生の上でスヤスヤと寝ている者たちがいる。
一人は真っ黒な髪色を持つ少年で、魔法の属性が異質なものであるとはわかる。
そして、その少年が寝ている場所が、その少年の従魔と思わしきアラクネの蜘蛛の部分の背中であった。
顔立ちが整っており、その上半身の造形美は美しいうえに通常のアラクネとは違うようで、真っ白な清楚な雰囲気を持ちつつ、目をつむり穏やかな寝息を立てているようで、芝生の草がそのアラクネの周囲でまるで生き生きしているかのように輝いているかのように見えた。
また、一緒に寝ているようなものとすれば、芝生の上に大の字で寝ているピンク色の小さな少女と、サファイヤのような透き通るかのように輝く蒼いタコ足を持つスキュラのようなものである。
そのどちらもまた、その白いアラクネとは違った美しさを持っており、小さな少女は幼さを感じさせつつ、起きていれば活発そうな可愛さがあり、スキュラの方は妖艶な容姿であり、寝ているだけでもどこか色っぽかった。
それらの者たちが一か所に集まって昼寝をしている光景は何処か幻想的なものを感じさせ、なんとなく不可侵なような気がして、遠くから見守るようにと皆の心理が働きかけるのであった。
‥‥‥まぁ、単純に美女たちが寝ている光景という事で、襲おうとした輩もいたことはいたのだが、トラップが仕掛けられていたようで、あっという間に吊るされまくっているので不思議な光景もできたいたのであった。
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SIDE都市ブリテンの住民:その2
「‥‥‥いよしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!ついにできたぞ!!」
ちょどその頃、ブリテンのとある工房に手そう叫ぶ老人がいた。
その老人、このブリテンではそこそこ名の通った職人でもあり、都市の住民たちの信頼も厚かった。
‥‥‥ただし、とある企みを彼は隠していたが。
「ぐふふふふ、ついに、ついに、ついに巨大ゴーレムが完成したのだぁぁぁ!!」
意気揚々とその操縦席へ乗り込み、正常に稼働するかどうかを確認する老人。
そう、この老人は巨大ゴーレムを作ることを企んでいたのだ。
いや、別に世界征服だとか、力で圧倒的権力を得るとかいう目的は別に持っていない。
‥‥‥単純に、彼は巨大な造形物と言う物にあこがれを抱いており、昔からたまに見る夢の中では、今まさに完成した巨大ゴーレムのような、ロボットとも夢の中では言われていたものを作りたいと純粋に思っていただけなのだ。
そして今、長年コツコツと貯金し、材料を購入し、設計を何度も改良し、試作品を作ってその改善点を見つけ出し、地道な努力を積み重ねた集大成ともいえるゴーレムを、彼は作り出したのである。
全長55メートル、推定重量は280トンクラスであり、あえて歩行できるように二足の足を付けた巨大ゴーレムで、武装は特にないのだがそれでも彼は満足していた。
「さてと‥‥‥いよいよ我が生涯をかけた夢が叶うときがきたのだ」
深呼呼吸をして、目をつむり、これまでここまでかけた様々な苦労を思い出し、感慨にふける老人、
この巨大ゴーレムを起動して周囲にどのような迷惑が掛かるのかは、もはやどうでもいい。
今はただ、己が生涯をかけてかなえたかった夢を、達成することだけでもはや彼は生きているとも言えるだろう。
カッと目を見開き、起動のスイッチを老人は押した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥
巨大ゴーレム内部の歯車も大量にあり、全てが一斉に動き出すのでその音がとても大きく周囲に響き渡り、老人の工房周辺では、その振動が伝わり、地面が揺れ出す。
「ぐふふふふふふふ‥‥‥巨大ゴーレム、発進!!」
盛大に叫び、操縦席のレバーを動かす老人。
ドッカァァァァン!!
工房が吹き飛び、そこからゴーレムが立ち上がる姿を、周囲の人々は見て驚愕し、叫び始めるのであった‥‥‥
ただ単に、巨大な人型のゴーレムです。手が飛んだりビームを発射するほどではありません。
目的のために、つい周囲を考えなくなってしまうほど熱くなっているのでしょうかね‥‥‥‥




