ブリテンの歴史授業
‥‥‥何気に、この話で貴重な授業内容になるかも。
ブリテンに到着した翌日、昨日の自由行動も終わり、今日はまともな合宿先の授業という事で、特別にブリテンのとある広場を借りて青空での授業が始まった。
「ロックドンの治療もとい修理は今日を含めて3日ほどで完全になるそうだぞい!!そのため、明日、明後日はこの都市に滞在し、明々後日にはこの都市を去ることになる予定だぞい!」
とまぁ、まずはそのお知らせから始まって、このブリテンに関しての話となった。
「まず、この都市ブリテンはこのザウター王国の領地だが、実は大昔には魔王の中の、とある人物が住んでいた屋敷跡を利用して建築されたのだぞい!!」
「とある魔王と言うと、どんな魔王なんですか?」
生徒の一人が手を揚げて質問した。
「数ある魔王の中でも技術力が超一流の、今では失われた技術を持っていたという『機械魔王ヴュリュヴャミビュ』と言う人物だぞい。ついでに言うなれば、彼の種族はドワーフだったそうだぞい」
ドワーフと言うと、鍛冶が得意なイメージがあるが、この世界では大体そのイメージであっているそうであるらしい。ただし、酒好きらしいけど個人によって物凄い好みの差があるのだとか。
その機械魔王と呼ばれた人物は、魔王となっている分更に優れた技術を持っていたそうなのである。
と言うか、名前すっごい呼びにくいなこの人。
今では失われた技術としては、このブリテンの特徴にもあるゴーレムの高性能な部分だったとか。
なんでも、たった一体だけで兵士100人分に相当する戦力だったとも、一息で嵐を引き起こしただのととんでもない兵器レベルのものを生み出してもいたそうである。
ただまぁ、本人は野心とかを抱いてはおらず、魔王となってからは国民のためにその技術を生かして、農作業にゴーレムを従事させたりしていたそうだ。
だがしかし、そう言った技術力を狙う野心家はどこにでもいるもので、時々狙って襲撃を仕掛けてきたり、友好を結ぶふりして技術を奪おうとする輩の対応には追われていたらしい。
魔王は基本的に善か悪か。そのどちらかになるそうだが、最初の頃は民のためを思って善の、皆を導く良い魔王だったそうだ。
けれども、そのような輩たちの対応に疲れ果て、最終的には国をいくつか滅ぼし、自身の技術を二度と悪用されないように死の間際に全てを持っていった悲劇の魔王の一人としても有名なのだとか。
‥‥‥悲劇の魔王の一人という事は、他にも似たような魔王がいるのだろうか。
とにもかくにも、その機械魔王はその後、自分の身の回りを完全にゴーレムで固め、一生を他人と関わることなく、その死と同時にその魔王が創り出したものは全て自爆して、その技術は失われたとされるらしい。
「その爆発によって、一時的にこの地方は更地になったそうだが、不思議なことにと言うか、爆発で地面がえぐり取られることなくまっ平に整地された状態だったそうだぞい。その後人々が移り住みやすい環境となって、続々と集まって今のこの都市が形成されたというのが、ブリテンの歴史だといわれているぞい」
なるほどと納得しつつ、ブリテンの歴史って魔物使い科目の授業としているのだろうかと言う疑問が少しあった。
「歴史を学ぶ疑問を持っているだろうけど、それは魔物使いにとっては必要な情報なのだぞい。その地域の過去を学ぶことによって、そこから出現するモンスターの種類や傾向を予測することも可能になったりするので、学んで損はないのだぞい!」
皆が疑問に思ったであろうことを、ボンブラスト先生は説明をして、ちょっと力づくな力説を言った。
「先生!ひとつ質問良いでしょうか?」
「なんだぞい?」
生徒の一人が手を揚げて、ボンブラスト先生に尋ねた。
「本当にその機械魔王の技術とかは失われたのでしょうか?この都市を見る限り、ゴーレムの技術は結構発展しているようですが」
「ああ、失われた技術と言うのはどうも人型ゴーレムに関しての物とからしいぞい。今この街で作られるゴーレムとかは、自然のマッドゴーレムなどを改造しているものが多いが、かの機械魔王は完全なる無からゴーレムを生成し、その上超高性能だったそうだぞい」
それだけの技術が失われたのは残念なことだけれども、この都市ではその技術に追いつこうと、切磋琢磨しているような職人たちもいるようである。
「過去に縋りつかず、その過去を知ってこそ未来への目標としてするその向上心、それこそが夢追い人にとっても大切な心でもあるのだぞい」
ロックドンの治療目的が本来の先生の目的だったのだろうけど、そのついでに授業として夢追い人としてのありようの一つを教えるボンブラスト先生のその考え。
その思いは、皆にわりとまともな先生だったんだなと、思わせるのであった。
「あ、先生もう一ついいでしょうか?」
「なんだぞい?」
「その機械魔王の技術って失われたとか言いますけど、この都市ってその機械魔王の住んでいた場所の跡に作られたんですよね?だったら地面を掘ったら地下室とかがあって、そこに技術の塊のようなものがあったりしないのでしょうか?」
「あー…‥‥その可能性は無きにしも非ずらしいぞい。ただ、この辺りの地層は固いゆえに、中々発掘作業ができず、しかももう失われたものであると皆が考え、あちこちに既に建造物ができ、現状発掘できない状態なのだぞい」
まぁ、もう機械魔王の手によってすべて処分された後であろうから何も残っていないと考えられるらしい。
「ちょっとそのすごい技術とか見たかったけど、残念だな」
【自爆してすべて消し去ったようですからね。やり過ぎなような気もしますけど、後世に問題を残したくないとでも考えたのでしょう】
【便利なものは、野心ある者にとって害を与える様に利用されることもあるからカナ。もうないらしいけど、やっぱり私もそういうものは見てみたかったカナ】
【スライム入りのゴーレムとかもあったそうだし、それはそれで見て見たかったよー】
「【【いやそれはどうなのだろうか?】】」
ピポのその言葉に皆でツッコミを入れつつ、この後はまた自由行動となった。
「せっかくだし、お昼をどこかで食べてから昼寝でもしたいな」
【ちょうど良さそうな場所がありますよ。この都市には公園もあるので、そこの広場で昼寝をしましょう】
【ぽかぽか陽気でのお昼寝も良いカナ。個人的には湖の底で漂ってのもいいが…‥】
【いやそれ、ファイじゃないとみんな溺れちゃうって!】
わきあいあいと話しつつ、リューたちは移動し始めるのであった‥‥‥
【昼寝場所は公園の広場で良いですよね?】
「ああ、でも一応安全のためにトラップでも仕掛けようかな」
【街中でそんなことやって大丈夫カナ?】
【死傷者はでない(はずの)優しいものにするのだピキッツ!】
【いまさりげなく不安になるような言葉が混じっていたカナ!?】