ブリテン到着
ゴーレムの種類ってどれだけあるんだろうか…‥‥
この世界では、スライムほどではないがそこそこの種類が存在するらしい。
SIDEリュー
合宿扱いとしてロックドンの治療(修理)のために、魔物使い科目の生徒たち一同まとめてブリテンへたどり着いた。
現地到着後、合宿の授業扱いなのだが、集合場所の説明があったのち、その集合時間までに戻ってくることを条件に、生徒たちにはこの都市での自由行動が許され、リューたちは適当に街中を歩いていた。
そして、その街並みは他の都市とは違う点がよく見られたのである。
「これはこれで面白そうな感じだな」
【あっちこっちで回ってますね】
【ゴーレム技術の応用で生み出されたのカナ】
【まわる~まわる~♪】
街中を見てみれば、あちこちの建物に複雑にかみあった歯車が設置されており、それぞれ勝手にぐるぐる回って動いているのである。
ただの飾りのようにも思われたが、どうやらそうではないらしい。
「先生からの生徒たちに配られた資料だと…‥‥どうもそれぞれ一応役割があるようだな」
【建物内部での粉末作製や、圧縮、ミキサーなど、様々な用途があるようですね】
正直言って、ただ建物の外部を回るだけの歯車が、内部でそのようにして動いているのかが気になるけど‥‥‥どこか見れそうな家があったら見てみようかな。
いろいろな店とかもあったので、品ぞろえを見てみれば流石に学園周辺の店とはまた違う商品が多い。
と言うか、ゴーレムで有名なだけあってね…‥‥
「義足、義手、義眼、義鼻‥‥‥面白いほど人体の代用品とかも売っているのかよ」
【あ、モンスター用の物もありますよ。ウルフ系統の入れ歯、オーガの義角とか】
【スキュラ用の義触手とかはないのカナ?】
【流石にないと思うよー。スライム用の器なんてあるけどね】
ゴーレムの技術をこんなところに応用しているようだけどさ、こういうのって組み合わせたら一体の人が出来そうなんだよなぁ。
そのあたりがどうなのか少し気になって店主に聞いてみたところ、そんなにうまいこといくようなものではないらしい。
「そりゃあんさん、同じような事を考えた人はいましたで。確かにこれらの部品を組み合わせて人そっくりのようなゴーレムを作れそうなのはわかっているんや」
「あ、やっぱり同じような事を考える人はいるのか」
「でもな、そううまいこといくもんではあらへん。部品は部品、所詮は単品でなおかつ規格に合う物でこそその働きをなすんや。単純に組み合わせただけですと、肝心のゴーレムの稼働用炉心やらコアとなる魔石の調達等で、できへんのよ」
なんでも、ゴーレムの基本的な構造で言うところの核と言うか、コアと言うべき魔石の問題があるそうだ。
魔石はモンスターの体内から取れる物だが、ゴーレム一台にある程度の性能を詰め込もうとすると、それなりに上質というか、それだけの機能を求めることができるものが必要とされるらしい。
で、人間のようなゴーレムをこの義手などの部品を組み合わせて作ったとしても、その魔石の規格にはどうも相当の物が要求されるようで、仮に適当な魔石を使ったとしても、ほとんど動かないのだとか。
「ゴーレムもモンスターとくくられるだけあって、生きた生物と似たような定義なんや。人が命を何もないところから生み出せるか?それこそ無理や。神の所業、領域と言える部分に、人は踏み出せへんのよ」
「でも、普通にメタルゴーレムとかこの都市で作り出されたりしていますよね?」
魔物使いの中には、従魔をなかなか得られない者がいるようで、そういう人が利用することがあるそうなのだが‥‥‥
「ああ、それは簡単や。近場にな、ロックゴーレムやらマッドゴーレムが勝手に湧いてくる場所があるんよ。そいつらを捕獲し、改造し、そして出荷する。元から有って、動いているものやからこそ、出来る荒業や。ただまぁ、完全にゼロから作るのはほぼ不可能に近いと言う話を、ワイはしたかったんや」
納得できるようなできないような説明をして、その店主はぐわはははっと笑った。
ま、今の話を要約すると、ゼロからゴーレムを作るのは無理でも、元から生きているゴーレムを改造して作り直すのは可能だという事なのだろう。
【ゴーレムはゴーレムで謎の多い生物ですよね】
【むしろそれって生物なのカナ?】
ファイのその疑問はもっともである。
謎が多いからこそ、面白そうなんだろうけど…‥‥まぁ、そのあたりは専門の人にしかたどり着けないような領域であろう。
せっかくなので、色々とおすすめ等も教えてくれた気前のいい店主さんのお礼に、記念として義手を1セット買わせてもらった。
別に片腕とかがないわけではないんだけど、こういうのって改造してガントレットみたいにしてみたいんだよね。某黒鉄の城風の攻撃ができるのが理想です。
【爆薬少々、主殿の魔法を制御して、あと少し耐久を上げればいけそうカナ?】
「え、ファイできるの?」
【専門外だけど、発射して山を砕くレベルまでならなんとかなるカナ?】
「それはやり過ぎだと思うけど‥‥‥というか山砕けるの!?」
何だろう、この従魔たちの中で一番の危険人物にファイがなったような気がする。
そう思いつつ、リューはハクロたちと共に集合時間まで街中を歩くのであった。
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SIDE???
‥‥‥リューたちが街中を歩いている頃、そう遠くないとある暗い部屋の中で、とある者の内部の歯車が少しだけ動いた。
感知しつつ、それでいてまだ動けるだけの動力がないのでそのわずかな変化しか見せることができなかったのだろう。
長い間動かず、いや、動いたことすらもなかった体をその者の意識は、初めて体の一部が動いた感覚を感じながらも、すぐにその活動を停止させた。
その者が少しだけ動いたことに気が付いた者はいない。
忘れさられ、その者がその場所にいることを知っている者すら、今の時代にはいないだろう。
何せその者は、はるか昔に魔王の一人が生み出し、失われた存在だと思われていたのだから‥‥‥
街中を歩き回り、観光しているような気もしなくはないリューたち。
一応合宿のような授業であるので、きちんと先生からの解説が入る。
だがしかし、その最中に‥‥‥
次回に続く!!
「おまけ」
街中の建物についている歯車の利用例
・粉砕機
・ミキサー
・扇風機
・攪拌
・マッサージチェア等、多種多様に利用されております。
「そんな利用方法があるのかよ」
【運動エネルギーは普通歯車とかで伝えると摩擦とかでいくらか無駄になるそうですけど、その無駄がほとんどなくなる技術があるそうですからね】
【むしろ、周囲に何もないようなのに、何を動力源として動いているのかが気になるカナ】
「【確かに】」




