七不思議の収束
腹くだして撃沈中
食中毒とかではなく、スイカの食べ過ぎかなぁ…‥‥
【…‥‥ふぅ、これで良いですかね】
ハクロがパンパンと手を払い、どさっと地面にそれを下ろした。
「な…‥‥なんて強さだったナリ‥‥‥」
糸で全身ぐるぐる巻きの、攻撃の余波で巻き添えに遭い、体中が腫れあがってパンパンのエメラ。
そして、彼が従えていた従魔ギガントスラッグのナメィラは全身が解体され、一体一体小さななめくじにされた後に、ファイの魔法によって氷漬けし、冷凍保存されていた。
数体ほどは砕け散ってはいるが‥‥‥‥溶けた後が大変そうである。
「一応さ、まだよく聞けてなかったけど七不思議の元凶だっけなこのおっさん」
「ここまで腫れあがっていると話しにくそうですけど‥‥‥何がどうしてこうなったのですの?」
【戦闘中、ついうっかり薬品をこぼしてかかったようカナ】
「お前の仕業かよ!!」
とりあえず、元凶と言うか何か企みがあったようだが、この状態ではまともに会話ができないであろう。
聞き出せないほどの制裁に関する説教は置いておいて、今優先すべきこととしてはこの地下空洞からの脱出であった。
「さて、どうやって出ようかね?」
「ハクロの糸で上に登れませんの?」
【無理ですよ。あの上の天井、ギガントスラッグの特殊な粘液と言う話ですし、地上に出ようとしたら底をぶち抜かなければいけません】
【まぁ、無理にやらなくても穴を掘っていくのも良いカナ。道具ないけど】
皆で議論しつつ、脱出方法を探る。
と、其の時であった。
‥‥‥ゴゴゴゴゴゴゴ
「ん?」
「また何か動き出す音が‥‥‥」
ここに落ちる前に響いていた音、それに近いものがなってきて‥‥‥
「壁にひびが入ってきているぞ!!」
誰かの叫びで見てみれば、壁に大きなひびが入ってきて崩れそうになっていた。
「そっか、さっきの戦闘でこの場所が崩れてきているのか!?」
「そもそもここは位置的に校舎の真下。その重みで耐えきれなくなっているんですわ!!」
つまり、上の校舎の重みがこの空洞全体にかかり、先ほどギガントスラッグをぶち倒したのでその天井の粘液が弱まり、その上先ほどの戦闘で周囲の壁も崩壊してきたようである。
‥‥‥簡単に言えば、崩落の危機となっていたようであった。
「急いで脱出しないと本当にやばいぞこれ!?」
「何とか脱出方法を考えないと!!」
あわわわと皆は慌てふためき、思いついたものを手あたり次第やっていく。
【そうだ!!リュー様の魔法で何かいいものありませんか!】
ここでふと、ハクロがリューに提案した。
リューの使える魔法は力魔法‥‥‥他の属性とは違う異質な魔法故に、なにかいいものがないかとハクロは思いついたのである。
「そんなことを言われても…‥」
自分が扱える魔法で、なおかつこの状況に合う物を考え、ふとリューは一つの魔法にたどり着いた。
「そうじゃん、重さで落ちてくるならば…‥『重力操作』!!」
校舎の重みでこの空洞が崩れるのであれば、その重さを無くしてしまえばいい。
重力を0にしてしまえば、その重さはかからないと考えたのである。
‥‥‥まぁ、正確には無重力でも質量は変わらないそうで、押す際にはその分の力がきちんと入るようだが、この魔法はそのあたりを無視できるので、まさに魔法のような力と言えよう。
魔法を発動させると、周囲の重力の状態がどういうものかリューにはすぐに手に取るように分かった。
そしてそこから校舎全体を軽くなるように操作すれば‥‥‥
ゴゴゴゴゴゴォォ‥‥‥
すぐに音が小さくなり重さが無くなったのだと理解できた。
何とか助かったようで、皆ほっと息を吐いた。
「そうだ、ついでに俺達の方は無重力状態にして、上の方に向かおうか。天井部分はギガントスラッグの特殊粘液らしいから、その横の壁から掘り進めて上に出れば問題ないだろうしね」
ついでとばかりに思いついたその方法をリューは提案し、皆賛成したのであった。
こうして、無事にその案は成功し朝日が昇るころにリューたちは地上へと帰還できたのであった‥‥‥
やっと夜が明け、地上へ戻ってくることができたようです。
さてと、事後処理及び捕えたやつへの拷問ゴホン、尋問もしないとね。