序盤からハード
骸骨の走るイメージは、ブリッジの体勢で、手足がぐるんと前に曲がっており、骸骨は顎が地面の方へ行くようにくるっと回って、カタカタ言っているような…‥‥わかりにくいな。
「ぜぇっつ、ぜぇっ…‥もう追ってきていないよな?」
【ふ、振り切ったようですが…‥‥なんですかあの気持ち悪い動きの骸骨は…‥】
「まさかあれが一つ目の七不思議『高速でやってくる骸骨』ですの?」
行き成りの事で驚き、必死になってリューたちは何とか謎の骸骨から振り切っていた。
「みんな無事か?」
呼吸を落ち着け、皆の状態を確認する。
こういう慌てたときとか、定番だと誰か抜けていることもあるのだが‥‥‥
「大丈夫ですわ、少し疲れましたけど‥‥‥」
【ふみゆぅ~、もう帰りたいですよぉ】
【幼児退行しないほうがいいと思うカナ。そういう状態だとより恐怖を感じるカナ】
【骸骨すごかったねー】
どうやら大丈夫のようである。
いや、ハクロが精神的にやられているようだから大丈夫でもないのかな。
めっちゃ涙目になっているし、いつもの明るい彼女らしくなさすぎる。
「あの骸骨が何のかとかがあるけど…‥‥ハクロだけでも戻したほうが良いのかな」
「それはやめておいたほうが良いですわね。帰路にあの骸骨がまた出ないとも限りませんし」
ハクロの状態を見て、リューがハクロだけ寮へ戻そうと考えたが、ヴィクトリアはそれに意見を出してきた。
【帰らないならせめて!!】
と、すばやくハクロが動き、リューを抱きしめた。
むぎゅむぎゅ
「っつ!?」
背後の物凄い柔らかい感触に、思わずリューは赤面した。
背後から抱き付かれている形になっているのは、前から抱きしめたら窒息の危険性があることを、残った理性が判断したのであろう。
しかし、この状況だと逆にリューのメンタルがゴリゴリ削られる。
【リュー様をこのまま抱きしめさせてくださいよぉぉぉぉ!!ピポは小さいし、ヴィクトリアさんは微妙だし、ファイは大きすぎますもぉぉん!!】
「今何か絶対に失礼な事を言わなかったですか!?」
モンスター語でのハクロの叫びは魔物使いではないヴィクトリアにはわからないのだが、ニュアンスで理解したようである。
と言うか、いつもの清楚な美人のハクロが、今は号泣しまくりってなんかすごい人間らしさと言うか、臆病すぎるなぁ…‥‥それ以前に、これ以上むぎゅむぎゅ抱きしめないでくれないかな?
柔らかいものが当たるのと同時に、なんか骨がやばいんですけど。めきぃって悲鳴が上がりそうなんだけど。
…‥‥なんとかリューはハクロの蜘蛛の背中の部分に乗ってしがみつくことで、妥協してもらえた。
いや抱っこされた状態もあったけどさ、背後からの物体が強烈だったのと、また何かに驚いた拍子でバックベアと言うんだっけ?抱きしめ殺しされたくないからね。
「とりあえず、一旦七不思議探索を打ち切って外へ出たほうがいいかもな」
「先ほどの骸骨もそうですし、そうしたほうが『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』っつ!?」
突然に悲鳴に、リューたちは驚く。
「今の悲鳴は!」
「多分生徒の誰かの声ですわ!!」
慌てて悲鳴が聞こえた部屋へと向かうと、そこは学園の音楽室。
歌とか楽器の扱いも夢追い人となった時に役に立つことがあるらしいので、音楽の授業があり、其のために音楽室も設置されているのだ。
そして、音楽室という事は…‥‥
ポロロ~~~ン♪ ポロロロロロロン♪ ジャァァァン♪
「ぎゃぁぁぁ!!」
「ぐえぇぇぇぇ!!」
「『勝手に真夜中に鳴り響く下手なピアノ』‥‥‥確かにへたくそな音楽が聞こえるけど何で悲鳴が!?」
七不思議の一つがある室内にリューたちが飛び込むと、そこには‥‥‥
「た、助けてくれぇぇぇ!!」
「体が勝手にぃぃぃ!!」
そこにいたのは、学園の生徒が数名ほどで、それぞれ室内の楽器を手に持って、
バァァァン!! ジャァァン!! ガッシャン!!
「‥‥‥ピアノのバックコーラスで、なんか戦わされている!?」
「シンバルにトランペットの打ち合いで戦闘って、どういう状況になっているんですの!?」
‥‥‥どうやら七不思議には訂正があるようだ。
『勝手に真夜中に鳴り響く下手なピアノ』ではなく、『真夜中に(以下省略)の演奏に合わせて、音楽室内の楽器を持って体を操られて戦わされる』のようであった。
【あ、これならあんまり怖くありませんね】
あからさまに、安心したような声でほっとハクロが息をついた。
この意味不明なカオスな状況は、どうやら彼女の恐怖心を減退させたようだった‥‥‥
「って、納得している場合じゃないじゃん!!ハクロは一旦皆の拘束!!ファイは氷魔法で楽器を氷漬けにして動かないように!!ピポは燃え盛って室内を一気に照らせ!!」
【了解です!!すいませんけど『フィンガーネット』!!】
【『氷漬け魔法』!!】
【『着火(火力『強』)』!!】
一応謝りながら、ハクロは勝手に動く生徒たちを糸で拘束して動きを止め、ファイは氷魔法で楽器を氷塊に閉じ込め、ピポは全身を一気にでかい炎で包んで、室内を一気に照らした。
それぞれの連携がうまいこといき、操られていた生徒たちは拘束されたが皆ほっとした状態となった。
「た、助かったぁぁぁ…‥」
「もう体を動かしたくねぇ」
「一体何がどうなってこの状況になったんだ?」
とりあえず、楽器等が再び動き出さないように厳重に固めて、リューたちはこの状況に至るまでの経緯を聞くことにした。
話によると、この生徒たちはまずは場所が分かりやすいようなこの音楽室へ向かったのだが、室内に入ったとたんにピアノが急に鳴って、そのまま操られるように手足の自由が利かなくなって、あの状況になったのだとか。
「人の体を操る時点でとんでもない危険性があるよな」
「と言うか、ピアノが急に鳴るのもおかしな話ですわ」
【物理的じゃなくて、遠隔操作でと言うようにも思えますね】
うーんと頭をうなるが、謎は深まるばかりである。
とにもかくにも、この生徒たちも合流して今はこの学園から脱出したほうが良さそうであ、
『ひんぎゃぁぁぁぁぁぁ!?』
『どぇぇぇぇっ!?』
…‥‥再び悲鳴が聞こえてきた。
序盤からここまでのカオスから考えると、どうやらこの七不思議は一筋縄ではいかないようだ。
とにもかくにも、再びリューたちはその悲鳴の主へ向けて、駆けるのであった。
自分たちだけが逃げるのも後味が悪いというのもあるが、放っておけないという良心もあるのが原因だが‥‥‥どうなっているんだろうかこの学園は?
とんでもない七不思議となりそうだけど、一体何がこの学園に起きているのだろうか?
そもそも、なぜこんな話が急に広まったのだろうか?
その謎が謎を呼び、事態はへんてこに進んでいく‥‥‥
次回に続く!!
なお、ハクロがリューを抱きしめた際に、すこしヴィクトリアが己の身体尾見たのは内緒。成長の可能性はまだまだある…‥‥はずである。




