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さてさて引きずってきて…‥‥

七不思議は、定番なのと異世界ならではとおかしいものをミックスしております。

‥‥‥その日の真夜中、『七不思議撲滅探索特別授業』に参加する者たちの集合場所である運動場には、そこそこの数の生徒たちの姿があった。


「思った以上にたくさんいるな」

「免除去れる奴があるのも魅力的なんでしょうし、こういった真夜中の探検のようなものにロマンを抱く人もいるかもしれないですわね」


 リューのつぶやきに、一緒に参加することにしたヴィクトリアがそう予想を立てた。


 七不思議だが、やはり怖いもの見たさと言う物があるのだろう。


 そして定番とでもいうべきか、七不思議と言う割にはどうやら6つまでしか確認されていないようだ。


――――――――――――――――――――――――――――――

1:高速でやってくる骸骨

2:勝手に真夜中に鳴り響く下手なピアノ

3:屋上で踊り狂う謎の影

4:さまよう血濡れ大剣

5:牙が生えた巨大な本

6:アッパーをかましてくるガントレット


――――――――――――――――――――――――――――――


「2番目おかしいような…‥‥」

「そこは突っ込んではいけないという事のようですわね」


 と言うか、他もおかしいようなものが混じっているのだが…‥‥そこはやはり突っ込むべきではないものなのだろうか?


【リュー様ぁぁぁ、どうかやめましょうよこの七不思議とかいうやつの散策を。ええ、今すぐ部屋に戻ってそのまま朝まで何事もない方が良いですってば!!】

【諦める方が良いカナ、ハクロ。主殿の命令には従魔である私たちは聞かねばいけない…‥‥と言うか、ここまできて逃れられると思っているのカナ?】


 涙目のハクロに対して、半分ニヤニヤとしているファイはそのタコ足の吸盤で、ハクロを吸着し、まとわりついて逃げないようにしていた。


‥‥‥若干構図に問題があるのだが、まぁいいだろう。


【良くないですってば!?】



 とにもかくにも、こんな面白そコホン、怖がっているハクロをなだめたほうが良さそうだ。


「いいじゃんハクロ。こういうのもたまにあったほうが刺激になるって」

【刺激が強すぎますよ!!心臓止まるかもしれないじゃないですかぁぁぁ!!】


 リューの言葉に、超涙目で必死に訴えるハクロ。


 普段は明るく元気な彼女がここまでおびえるのは珍しいこともであり、どこか嗜虐心のようなものがそそられそうでちょっと違った意味で自分が怖い。



【夜の探検♪面白そうッピキ!】


 怖がり捲っているハクロとは対象的にピポはワクワクしているようである。


 自身を薄い炎で覆って光源としているようだけど、遠目で見たら人魂に見えそうかも。






 とにもかくにも、参加者全員が集まったところで、『七不思議撲滅探索特別授業』が開催され、真夜中の学園内への扉が開いたのであった。









【うううぅっ、暗いよぉ、怖いですよぉ】

「‥‥‥ハクロってさぁ、なんでそんなに怖がりなんだ?」


 校内に入って数分後、ふとリューは未だに諦め悪く震えているハクロに尋ねた。


 モンスターがそういうのを怖がるのはどこか変に思えたからだ。


【だって私、リュー様の従魔になる前に大量のお化けに襲われそうになって必死に逃げたことがありますから‥‥‥】

「【【え?】】」


 思いがけないその言葉に、疑問の声をリューたちは上げた。








 彼女の説明によると、従魔になる前にある森ですんでいた時、そこにいたモンスターとトラブルになたことがあったという。


【リッチキング・オブ・レジェンドと、痛々しい自称で名乗っていたただの『リッチ』の亜種のようでしたが、そいつがもう本当にめんどくさかったというべきか、執着していたというか】



――――――――――――――――――――――――

『リッチ』

なにかしらの要因でゾンビではなく、死霊術と呼ばれる魔法を扱えるようになったモンスターとして蘇った元人間。多くのゴーストやアンデッドを従えることができ、光属性の魔法や癒しの力を弱点とする。

見た目は死んだばかりであれば生きた人間と変わらないのだが、骸骨の状態や腐った状態で蘇ることもある。


――――――――――――――――――――――――――


【どうやらそのリッチ、元々無類の女好きの馬鹿でしたが、ある時娼館に入り浸っていたところ、背中からぐさりと刺されて死んだそうです。そして、処分のために‥‥‥】

「当時ハクロが住んでいた森に、偶然遺棄されたというわけか」

【はい。で、なぜかリッチとして、それも力の強いというか性欲が非常に強く残った状態で、亜種として蘇ったようで、私にしつこく襲い掛かろうとしていたんですよ…‥‥】



 当時の事をもい出してか、ぶるっと震えるハクロ。


 その襲い掛かられている最中に、大量の霊をそのリッチが呼び出し、それに一晩中追いかけられたのだとか。



【流石にあれはトラウマになりまして‥‥‥パニックになって、気が付いたらあたりを薙ぎ払って、リッチを葬り去っていました】

「何をしたの!?」


 覚えがなかったので、周囲を見渡した時に大木の一本にハクロの糸が括りつけられているのを見たらしい。


 どうやらパニックになり過ぎて大木を引き抜き、癒しの力全開の糸を何重にも巻き付けて聖剣、いや聖なる大木のモーニングスターとでもいうべきものを作って振り回したのだと推測できた。



 癒しの力はリッチには効果は抜群であり、成仏させたようである。


 と言うか、ハクロ自体がそのリッチの弱点でもあったようなものなのに、それでも襲い掛かって来たという事は…‥‥それだけ業の深い性欲があったのだろう。



【で、解決して平和になりましたけど…‥‥その大量の霊召喚がトラウマになって、怖いものが苦手になったんですよぉぉぉぉぉ】


 涙目で語るハクロに対して、話を聞いたリューたちはものすごい罪悪感を覚えた。


 と言うか、校内に突入する前にもっと早く教えてほしかったような気もする。



「あー‥‥‥なんかごめんハクロ。それじゃぁ、一足先に寮室へ戻っていいぞ」


 流石にこのままでいくと可哀想になったので、リューは帰還を命じた。


【了解です!!ではさっさと出口に‥‥‥】



 くるっと体の向きを変え、ハクロが後ろを向くとピタッと止まった。


「ん?どうしたハクロ?」

【‥‥‥‥あ、あれ】


 リューが尋ねると、ハクロが震える手で指し示した方向には…‥‥




【ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!!】



 ‥‥‥何か、物凄い奇声を上げて、駆け寄ってくる骸骨があった。


 その体勢はブリッジで、頭だけは回頭して正面を向いている。


「「【【【‥‥‥なんかでたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?】】】」」



 数泊遅れて、状況を飲み込んだ後、リューたちは悲鳴を上げた。


 そして、全員一斉に慌ててその骸骨から逃げ出すのであった…‥‥


 




一つ目の七不思議が早速登場である。

果たして、この七不思議には一体何が背後にあるのだろうか…‥‥

次回に続く!!


‥‥‥七不思議なのに6つしか出ていない理由?七つ全部知るとやばいことが起こるというのは異世界でも共通のようです。

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