奇妙な噂
投稿時点の季節的に合っていそうだけど、作中では春から夏への部分かな。
「学園七不思議?」
「そのような噂があるらしいのよね」
ある日の昼食時、リューはヴィクトリアと昼食を食べていたのだが、そんな話題が上がって来た。
この夢追い人育成学園で、最近七不思議とやらが噂になってきているそうなのだ。
「時期は割と数週間前からちらほらと噂になっていたそうだけど、最近本当にその七不思議にあったとかいう人も出てきて、有名になっているそうですわ」
「ふーん……誰かのいたずらとかは?」
こういう類は、誰かのいたずらがきっかけで、増長したり、即発されて加担したりする人が出て、より大袈裟になっている場合があるのだ。
「それはないそうですわね。なんでも皆が寝静まっている深夜、厳重に戸締りされている学園内で起こっている事のようですし」
「ん?あれ?」
【厳重に戸締りされているって…‥「それはつまり、こっそり侵入した人がいるってことですかね?」
ふと感じた疑問を、ハクロは途中から人の言葉に切り替えてヴィクトリアに尋ねた。
ずいぶん人の話す言葉もうまくなってきたが、やはりモンスターはモンスターの言語をしゃべるのが楽らしいそうなので、こうやって切り替えて話すのも珍しい。
…‥‥と言うかハクロ、お前顔青くなってないか?脚震えているし。
「元々誰かが学園にコソ泥に入ったのがきっかけとも噂されていますわね。本当にそのような事があったそうで、まぁその時はすぐさま逮捕はできたそうですけど、それ以来急に広まりつつある噂なのですわ」
コソ泥がきっかけで、学園内に潜む何かが目覚めたのではないだろうかと言うのがもっぱらの噂でもあるらしい。
その昼食時の会話を思い出しつつ、今日の授業をリューは受けていた。
今は座学の時間であるのだが、教室内でひそひそと、他の生徒たちもうわさ話をしていた。
どうやらこの七不思議、既に大多数の生徒たちが興味を抱いているようなのだ。
……そのせいなのか、勉学に支障をきたすほど気になるような人も出たためか、翌日、学内にとあるポスターが掲載された。
「『七不思議撲滅探索特別授業』…‥か」
「ずいぶんと思い切ったことを行うようですわね」
貼りだされたのは、この七不思議を潰すためにという事で、特別に真夜中の学内を解放するというもの。
希望者のみが参加可能であり、最も功績があった生徒には、特別に授業の課題一部減少という措置もなされるそうだ。
「面白そうですし、一緒に回ってみませんかねリュー?」
「ああ、面白そうなことだしハクロたちも……ん?あれ?ハクロどこ行った」
ふと振り返って同意を求めようとして見れば、そこにいたはずのハクロの姿がなかった。
【主殿、ハクロなら先ほど、編み物があるから先に寮へ戻っておくとか言っていたカナ】
【なんか顔青かったよー。震えてもいたよー】
「……もしかして」
ふと、そこでリューは気が付いた。
ハクロってもしかして、七不思議だとか怪談とかそう言った類に関して弱いのではなかろうかと。
その時、少しばかりのいたずら心がリューに芽生えたのであった……、
ハクロ、実はそういう類の話が大の苦手である。
ホーリアラクネ……癒しの力を持ち、そういう類には本来強いそうなのだが、怖がりなようだ。
普段は明るい彼女が、恐怖におびえる…‥‥




