合同授業:後編
暑い日々が続くのは辛いな…‥‥熱中症には気を付けましょう。
ヴィクトリアとピポの模擬戦後、他の生徒たち同士での模擬戦が行われていった。
従魔に指示を出して交わすようにしたり、その指示を耳で聞いて次の行動を予測する者など、普段の授業では得られないような経験を、リューたちは得ていった。
時折、ボンブラスト先生がさりげないアピールをボルケーニン先生に送ったりもしたのだが、ストライクゾーンにない相手なせいか軽くあしらわれて、生徒たちは失笑を禁じえなかった。
【『フィンガーネット』からのぶん回しです!!】
「どわぁぁぁぁぁ!?」
ハクロと対戦をする生徒もいたが、瞬時に意図の網にとらわれてぶん回され、
【『氷拳発射』!】
「ぐっほぅ!?」
ファイと対戦した者は、魔法によってつくられた飛ぶ氷の拳にぶっ飛ばされたりなどと、他の従魔たちも善戦をしていたようであった。
ただまぁ、先ほどのヴィクトリアとの対戦を見て、ピポへの対策を練ったであろう者達もいたのだが、それはあくまで相手がヴィクトリアであって、彼女よりも実力が劣る者たちの攻撃は、簡単にピポはあしらってしまった。
…‥‥いや、それはそれでおかしいような。普通王女であるヴィクトリアは守られる立場なはずだと思うのに、その本人が強くて他の人が弱いってどうなのだろうか。
深く考えても意味が無いように思え、とりあえずリューは気にしないことにした。
時間が経過し、授業の終わりの時刻となった。
「そこまでだぞい!!」
ボンブラスト先生の声が響き、対戦を止めてそれぞれの講師のもとへ生徒たちは集合した。
「さてと、今秋の合同授業はこれにて終了となるぞい」
「互いに違う科目同士、それぞれでの対応や模擬戦での実践に近い状態での感覚もつかめたでしょうか?」
「「「「「はい!」」」」」
ボンブラスト先生とボルケーニン先生の言葉に、生徒一同声をそろえて返事をした。
今回の合同授業だが、なかなかいい刺激にはなったとリューは思う。
夢追い人となるための、ちょっと早い実践に近い戦闘を味わえるので、何処の部分が未熟だろうかなど、考えることができたからである。
……ただまぁ、ピポとヴィクトリアの対戦以外では、ほぼ圧勝であった。
うん、皆やっぱり強かったよ。普段見ているとそうは思えないけど、戦闘になると抑えている分が出るのかな?
「今回の合同授業において、皆は自分たちの足りない点や、何処が改善できるのかと言う点をよく理解できたはずだぞい!!この経験を活かし、この先の成長に役立てるのだぞい!!」
「経験を得たというだけで満足はしないでくださいね?日々精進しなければ、結局何も身に付かず、無駄な時間を過ごしたという事になってしまうのですよ」
むきぃっとポーズをとるボンブラスト先生に対して、穏やかな笑みを浮かべて諭すように話すボルケーニン先生。
ボンブラスト先生はどうやらさりげなくアピールを続けているつもりのようだが、ボルケーニン先生は明らかに教師同士としての義務であり、異性としては興味が無いように見える。
(((((不憫すぎるなボンブラスト先生‥‥)))))
思わず、生徒一同の心が一つになった瞬間であった。
ボンブラスト先生の恋心がボルケーニン先生へ伝わり、そして受諾されるときがあるのだろうか?
いいや、無いように思える……悲しいなぁ。
果たして先生の恋は実るのだろうか?
と言うか、他人よりもヴィクトリアからの好意を気が付かない自分の鈍感さにリューが気が付いたほうがいいと思うような気がする。
そろそろまたひとハプニングの予感……