合同授業:中編
前編、中編、後編とわけました。
【ピキピキ――――――――ッツ!!】
開始の合図と共に、ピポが自身の素早さを活かして先手必勝とばかりに懐へ潜り込もうとする。
一応模擬戦ゆえに手加減をしてもらうはずなのだが……ああ、あれ本気だな。
ヴィクトリアが手加減抜きとかで言うから、純粋なピポはそのまま真に受けたようだ。
フェアリースライムのピポはサイズ的に手のひらサイズの妖精のような姿であり、攻撃を当てにくいどころかスライム故に素早さも相当高く、あっという間にヴィクトリアに接近した。
だが、すばや過ぎる動き故に、その軌道は何処か単純なところがあったのだろう。
ヴィクトリアはその軌道を読み、横に交わした。
そして、攻撃の位置的に足で蹴り上げることを選んだのである(一応授業中はパンツルックで、きちんと短いズボンですのでスカートではありません)。
「せぇぇいやぁあ!!」
気迫の声と共に、ピポの目の前に繰り出される足。
しかし、ピポは当たる寸前に、己の特性を生かして手から小さな炎を出し、その反動で軌道をずらして紙一重のところで避けきった。
そのまま勢いで地面に足が付き、ずざざざざざざっとブレーキをかけた後、再び攻撃態勢へと移りだす。
【『爆裂体当たり』!!】
バァン!!っと、足裏で爆発を起こし、さきほどよりもより勢いを付けたピポがヴィクトリアに体当たりをかける。
ヴィクトリアがガードをするが、その勢いまでは完全に抑えきれないのか、後方へ押されていく。
それを好機と見たのか、ここで猛ラッシュをピポがかけはじめた。
【ピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキ!!】
ドドドドドドドっと、勢いよく連打するのだが…‥‥ここでピポの弱点が露見した。
「一撃一撃が軽いですわ!!」
【ピキッツ!?】
ばっとヴィクトリアは手を払い、ラッシュで押していたピポを下がらせた。
そう、ピポの弱点はその小さな体そのものである。
普段の攻撃などは、リューの魔法によってある程度質量や重量を増やしてもらったり軽くしてもらったりしているのだが、今回のこの模擬戦はその手助けがない。
故に、ピポ本来の重量で挑んでいるのだが、体格差と重さによって連続でその場で攻撃をすると、どうしても軽い一撃になってしまうのである。
一撃の体当たりそのものであれば、その勢いは強いので問題はない。
でも、その場で攻撃をし続けるという行為そのものが、ピポの弱点となってしまおうのである。
簡単に例えるならば、一撃だけにかけた体当たりを指一本で頬を押しているのだとすると、今の連続でその場の打撃攻撃は、手のひら全体で頬を押しているようなものだ。
一点集中ではなく、拡散になるようなものなので一撃が軽い……そのため、少し力を入れることによってピポを払いのけることができたのであった。
なお、本来のリューの魔法の手助けがある状態であれば、文句なしの攻撃となるのだがその感覚でやってしまったのだろう。
その手助けがない状態での特訓もしたほうが良いのだろうかと、リューが考えている合間にもどんどん勝負は泥沼化していった。
素早く出せる瞬間火力は高いが、連続での拳や蹴りが軽くなってしまうピポ。
ピポに攻撃が当たりにくいながらも、軽い攻撃故にさばききるヴィクトリア。
なかなか決着がつかないが、結局…‥‥
「そこまで!!両者引き分けぇぇぇ!!」
「えーーー!!」
【そんなぁぁぁ!!】
あまりにも泥沼となっていたので、ピポとヴィクトリアの戦闘は引き分けという判断を出され、ボルケーニン先生によって引き分けを強制的に言い渡され、試合を終了させられるのであった。
引き分けと言う結果が悔しかったのか、二人とも物凄く残念そうな顔で・・・・‥‥ちょっと可愛いかもと思えた。
ただ、また勝負を挑もうと互いにがっしりと手を取り合っていたけど、拳で語り合ったもの同士しかわからないような友情ができたようである。
……ヴィクトリアって一応王女だよねぇ?なんで拳で語り合う武闘家のような感じになっているのさ。まぁ、彼女らしくていいけどね。
王女=淑女というイメージを見事にブチ壊した瞬間でもあった。
いや、前からそんなイメージを彼女に抱かなかったって?
……まぁ、うん。ヴィクトリアだからさ。




