帰郷中
主人公不在回
SIDEザウター王国:王城
「……ただいま戻りましたわ、お父様」
「おお、帰って来たか!!」
王城の謁見室にて、夏休みなので一時帰還してきたヴィクトリアの姿を見て、アレン国王は笑みを浮かべた。
「どうだ夢追い人学園での生活は?ロイヤルード学園に変えようと思っていないか?」
「いえ、それはないですわ。今の学園生活こそがわたくしにあっていますもの」
アレン国王の問いかけに、ヴィクトリアはにっこりとほほ笑みながらそう返答した。
元々王族として通う予定だったロイヤルード学園ではなく、夢追い人育成学園の方にヴィクトリアを心配してはいたアレン国王であったが、密かに監視させている諜報の者からの報告や、こうして見せるヴィクトリア本人の笑みを見て、通わせてよかったと心からアレン国王は思えた。
それと同時に、実は密かに進めている計画もあるのだが…‥‥
「それはそうとヴィクトリアよ。学園で何かいい人でもできたか?」
くっくっくと面白そうに尋ねるアレン国王は尋ねた。
「い、いえ!!出来ていないですわ!……でも、気を許せそうな友人はできましたわね」
「ほぅ、でどのような奴だ?」
「オーラ辺境伯爵の子息だという、リューと言う方ですわ。道中で出会い、少し親睦を深めることが出来まして、楽しかったですわね」
一瞬全力で否定したかのようなヴィクトリアであったが、すぐに落ち着いてリューの事を話した。
その際に、ほんのわずかだけ頬が赤く染まったことを、アレン国王は見逃さなかった。
「なるほどなるほど。……ではここで父からのアドバイスをやろう」
「アドバイス?」
「ああ、友人と言う者の中には、表面しか見ていない者もいれば、きちんとその内面を見る者もいる。友人であるならば、今の前者か後者かよく考えるべきということだ」
「なるほど……心に覚えておきますわね。まぁ、リューは後者でしたけど……前者のような方とは嫌ですからね」
落ち着いて父親としての話をしたアレン国王に対して、ヴィクトリアは心にその言葉を刻んだ。
普段は結構いろいろなところへ行き、神出鬼没の国王としても有名らしいが、それでも一応尊敬できる父とヴィクトリアは思っている。
その言葉を受けた後、ヴィクトリアは部屋から退出し、自分の部屋で向かった。
後に残されたアレン国王は、ヴィクトリアの様子を見て去った後に口角を上げた。
「……計画通りか。いや、もしかしたらそれ以上かもしれないな」
そうつぶやき、手元に諜報員たちからの報告書をとって、それに目を通した。
内容は、先ほど話に出てきて、アレン国王自身も過去に出会ったリューについての事である。
黒目黒髪であり、異質な魔法を扱い、学園の方では面倒ごとを避けるためか隠し事もあるようだが、すでにリューの魔力量が常人離れしていることぐらいの情報なら入ってきていた。
また、初めて会った時には従魔はホーリアラクネぐらいしかいなかったのだが、現在はフェアリースライムにスピリット・スキュラと2体増えており、それぞれまた珍しいモンスターであった。
リュー自身の能力もあるようで、成績等を見ても高い方であり、素行も悪くはない。
国王が抱える国の立場から見れば、これだけの人材を手放したくはないというのが本音である。
その為、密かにアレン国王は娘である第2王女のヴィクトリアの事も考えて、二人をくっつけようかと画策しているのであった。
問題としては、リューは現在、卒業後は夢追い人となるのであって、身分的には平民のようなものであり、王族であるヴィクトリアとは身分が釣り合わないことである。
その事でとやかく言ってくるような馬鹿も出てくるかもしれない。
……だがしかし、これだけの人物がそこに収まるだろうか?いや、収まりきらないほどの能力があるだろう。
うまいこと行けば爵位を与えられて、そして釣り合わせることもできるかもしれない。
もしくは……
もう一つの可能性を考えて、国王は窓から空を見上げた。
先日、クラウディア森林で起きた森林火災。
その原因がモンスターによるものであり、そして人為的なことによるものだという事も判明していた。
その人為的な事だが、調べてみるとどうもある国が怪しいのだ。
……歴史の狭間に時折現れる、繁栄も滅びももたらすという魔王と言う存在を、絶対悪として嫌いきっている宗教国家。
一応鎌をかけてみたが、知らぬ存ぜぬの一点張りで、何も変わってはいない。
だがしかし、動きがどうしても隠しきれていないようで、諜報の者からある情報を得ていた。
いわく、昔その国にいたとある人物が魔王がこの世に生まれるという予言をしたという事を。
たかが予言、去れども予言という事で、その国はおびえているらしい。
そんな国が森林火災を……その時に森にいた者たちを焼き殺そうとでも考えていたのであれば、ある可能性が浮かび上がる。
「…‥‥もしかしたら、とんでもない大物と相手にしようとしているのではないだろうかなぁ」
思わずアレン国王はそうつぶやく。
条件的にも、時期的にも、そしてその能力的にも当てはまりそうな人物はいる。
その者と、もしかしたら国としてのしかるべき対応を取らねばならぬときがあるのではないだろうか。
そう予感をしつつも、アレン国王は椅子に腰かけて、その報告書を読むのであった……
さてと、果たしてアレン国王の行動は吉と出るか凶と出るか
なお、今回出てきた新たな国についてはまた別の機会に出るかな。
次回に続く!!




