苦労人は増えていく
短めかな?
主人公不在回。
SIDE学園長ドーラ・フォン・モーン
「……なるほど、今回の授業で『魔物使い』の科目を受けている生徒たちの80%は新たな従魔を手に入れましたかぁ」
「そうでございましたぞい!!おかげでより一層授業を深めることができるのですが…‥‥なんというか、問題もできちゃったのだぞい」
学園長室にて、今回の授業で増えた生徒たちの従魔の報告をボンブラスト教師はしていたのだが、報告を受けていた学園長ドーラは、その中にある問題について頭を抱えた。
「森の炎上、人為的なものに寄る可能性があるそうですがぁ、まだよくわかっていないのか?」
「いまだに原因不明ですぞい。ただ、何者かがサラマンダーを解き放った証拠と思わるようなものなら見つけたのだぞい!!」
そう言いながら、ボンブラストが取りだしたのは、ひび割れて黒焦げになった結晶のような石。
見る者が見れば、すぐにその石が何かということは理解できた。
「これは……まさか『魔封印石』ですか!?」
「そうみたいだぞい。おそらくは、あのサラマンダーの輸送に利用されたものだと思われるのだぞい」
何かなのか理解できた学園長は驚きで目を見開き、まじまじとその石を見た。
『魔封印石』……それは、極稀にしか出土しないと言われる、モンスターを封じ込めた石。
製法も、だれが何の目的で利用したのかも不明だが、ただ分かっているのは内部に封じられたモンスターは皆、暴れるだけで会話もできない災害危険指定種、もしくはそれ以上のモンスターだという事である。
一説によると、大昔にいたある魔王が創り出したものだそうで、皆の安全のために危険なモンスターを封印するために作られた石だとされているのだ。
「『魔封印石』は出土した場合、国に届け出する義務があるはずです。その国でも同様の処置がとられているはずであり、その後にどこか安全な場所に封じ込めるはず」
危険なモンスターを封じ込めた石だが、割れればすぐにでも中に封じられたモンスターが出てしまう。
なので、国に届け出をして、とある機関によって特別な保存場所に輸送されて、そこで再封印されて世のなかに出ないようにされるのであり、そうやすやすと使用されるはずはないのだ。
「……となればぁ、おそらくですが、とんでもない面倒ごとに巻き込まれたようにしか思いませんね」
「どこかの組織とか、もしくは国家ぐるみの犯罪手段が利用した可能性があるのだぞい。それも、明確な殺意を持って……」
判明したその事実に、ボンブラストも学園長も頭を悩ませる。
この報告は下手するとどこかの国が絡んでいる可能性もあり、国際問題にまで行きそうなのだ。
そうなれば当然火種もあるのだが…‥‥
「まず、あの国王陛下が黙って居なさそうですよぅ」
「意気揚々と、何処のどいつがやったのかと自ら動いていきそうだぞい」
……この国の国王アレン。その人物をこの二人はよく理解していた。
実は、かつて同級生でもあり、その破天荒さと言うか、暴れっぷりと言うか、制御不能な自由人のアレン国王がどの様な人物か、二人とも心の底から理解しているのだ。
「とりあえず、出来るだけ控えめにかつ深刻さが良く理解してもらえるように報告したほうが良さそうですねぇ」
「ああ、もうあの国王に我々の弱みを知られているのもいたいのだぞい…‥‥」
遠い目をしながら、二人は長い長い溜息を吐いたのであった……
「あ、学園長もう一つ報告があるのだぞい」
「……できれば後にしていただけませんかねぇ。なんかもう読めたというか、心配事を増やしたくはないというか」
「今回の従魔が増えた生徒の中には、スピリット・スキュラを従魔にした者がいるのだぞい」
「後にしてほしかったねぇ!!と言うか、スピリット・スキュラぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
一休みをする間もなく、報告されたそのことに学園長は絶叫するのであった……
……苦労人、ボンブラスト先生追加。
授業の進め方も考えなくてはいけないし、何か問題ごとに巻き込まれたというある意味貧乏くじを引いたかのような先生であった。




