真夜中の襲来
さてと、騒動開始用意……
SIDEリュー
……結局、夕方になってキャンプ地へ戻ると、メンバーの顔触れが少々変わっていた。
「え、エド……ぷっ」
「な、なんてことだい……くふっ」
「ぷ、ぷぷぷ・・・・」
「笑うなら笑え!!」
……リュー、エドゥアルドもといエド、ウルフリア、カタリーナのメンバーはそろっていた。
だが、そのエドの状態が悲惨と言うか、滑稽なというか。
【うっふぅ~ん、気に入ったですわぇご主人様ぁ】
彼は今、ようやく念願の従魔を手に入れたようである。
だが、その従魔が…‥‥
「ま、まさか希少種の‥‥ブフゥッツ!!」
「ふ、『フクワラーイノン』を、ごふぅっ!!」
「お、おかしすぎて、くふっつ!!」
彼の背後にいたのは、巨大なお面のようなモンスター。
ただのお面ならそれはそれでまだいい。だが、その顔が……物凄く笑える状態だったのである。
想像してほしい、福笑いで失敗して笑えるような顔ができた物を。
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『フクワラーイノン』
希少種であり、お面のような姿を持ちながら、その顔は見る人すべてを爆笑させて戦闘能力を奪うモンスター。このモンスターが従魔になるとなぜか幸運になるのだが、爆笑する顔故になかなか従魔にしようとも、捕まえようにも、笑ってしまってなかなかうまくいかなくなるのである。
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「も、もうだめ、あーっははっはっはっはっはっはははは!!」
「オイラも、ぶぐっふっふっふっふっふっほ!!」
「くふっ、おーっほっほっほっほっわははははははっ!!」
その顔を見ただけで爆笑してしまうモンスターゆえに、リューたちは皆笑ってしまう。
お腹が痛くなりそうだが、仕方がないことなのだ。
【‥‥‥えっと、笑える顔なんですよね?】
【主たち、爆笑しているけど……】
【ワフォン?】
【ミャメ―ッツ?】
……ハクロたちは爆笑していなかった。なぜなら『フクワラーイノン』の対象は「見る人すべて」という事であり、人ではなくモンスターである彼女達には効果がなかったのである。
顔を隠してもらい、皆が落ち着いて一息入れたところで、何をどうすれば従魔になったのかとリューたちが聞くと、エドは物凄い微妙な顔をして答えた。
「いやそれがさ、探索していたら転んでしまって、その転んだ地面にこのモンスター……名前は『福之助』にしたんだけどさ、こいつがいて、転んだその勢いでキスしちゃったんだよね……」
【ああ、我が主よ!!唇を奪われてはあなたの物に私はなりましょうよ!!うっふ~ん!!】
どうやら、ファーストキスを奪われた上に、そのまま惚れられて、押しかけ女房的なノリで契約させられたようである。
一応仮契約のつもりだったようだが、隙をつかれて転んだ時に膝をすりむいていたようで、福之助が自ら傷をつけて血を付け合い、本契約まで結ばれてしまったようだ。
詐欺のような気もするし、クーリングオフというか解約すればいいじゃないかと言いたいのだが、どうやら解約したくともその顔を見て爆笑をさせられてできないようである。
「ああもう!確かに従魔が欲しいとは言ったけど、この先一生笑って過ごす羽目になるんだよ!!」
物凄く涙を流し、そう言うけど……言葉だけ聞くとまともに聞こえるのはなぜだろうか。いいことのはずなのに、なにかが間違っているかのような気がする。
なお、キャンプ地へ戻ると他のグループメンバーたちも爆笑させられたので、福之助だけ顔中ぐるぐるの包帯をまかれて封じられた。
帰還したら解放するようだが、とりあえず今はこれで応急処置のようである。
この先の学校生活、爆笑の嵐がありそうだが……大丈夫だと思いたい。
何にせよ、本日は他の生徒たちも従魔を得た人がいるようで、なかなかの成功を収めているようである。
翌日のお昼頃にはここを経つようだが‥‥‥明日まで無事だと良いんだけどな。
「なーんか妙な胸騒ぎがするんだよなぁ」
【リュー様、フラグってやつですか?】
「そうではないと思いたい」
ハクロにツッコミを入れられたが、まぁ大丈夫だよね?
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SIDE????
……夜中、リューたちが寝静まるころに、森の中に複数人ほどの者たちがいた。
目立たぬように全身黒づくめであり、闇夜に紛れているかのような感じである。
「……なぁ、本当にやるのか?」
一人がリーダー格の人物へ向けて疑問の声を上げた。
「ああ、もちろんだ。可能性がある者ほど潰しておいたほうが良いだろう。特に、今回我々が来たのは将来的に脅威になるかもしれない魔王の可能性がある人物の息の根を止めることだからな」
「だけど、巻き添えを増やすのはどうかと……」
リーダー格の返答に対して、その一人は迷っているかのような声を上げるが…‥‥反論するのを止めた。
命令違反は彼らにとっては死を意味するので、まだ命が惜しい者は反論出来なくなったのである。
「そもそも国の命令であり、我々が直接手を下すわけではない。この『魔封印石』に仕込まれたものを解き放ち、ココが森であるのを活かして焼死させればいいのだからな」
リーダー格の人物はそう告げ、胸元から赤い石を取り出した。
「こちらも巻き添えにならないよな?それに、この森の奥地にはエルフの集落もあるし、下手すれば彼らと敵対することになるぞ」
「安心しろ、その前に我々はこちらの『転移石』で逃げることができるからな。敵対する可能性があっても、全てを炎に飲ませればいいだろう」
疑問の声を上げる者が居たが、リーダー格の人物は安心させるかのように今度は白い石を取り出しそう告げた。
深夜で皆が寝静まるその時、その集団は赤い石をたたき割る。
それと同時に、内部から何かが飛び出すのを見届けた後、その者たちはその場から姿を消すのであった。
残されたのは、飛び出してきたその存在。
荒ぶる炎をまき散らし、森を赤く染め上げ始めるのであった……
深い森の中で、解き放たれた赤き存在。
それは周囲を炎で赤く染め上げ、雄たけびを上げ始める。
その異変に気が付くのは……
次回に続く!
……シリアスもどきになるかも。