入学‥‥‥の前に
世のなかそう事はうまく運ばない
夢追い人育成学園がある都市キェバにたどり着いたリューたち。
道中で出会ったヴィクトリアとは一旦分かれ、学園での入学手続きを進めたのだが‥‥‥
「今晩の宿は野宿になったか」
【寮生活の予定でしたけどね‥‥‥】
夢追い人育成学園は基本的に寮暮らしとなる。
ただ、今年はどうも例年よりも入学希望者が多かったようであり、急きょ増築作業がされていたようだが、俺の入る予定だった部屋は、どうやら手違いで増築個所に入っていたようで、今晩中に作業は終わるとはいえ、一泊の外泊の必要性が出たのである。
その為、宿屋に行ってそこで宿泊をしようとしたのだが、どうやら一部貸し切り店が多くて宿泊できそうなところがなかったのである。
その為、今晩の宿は馬車の中という事になったのだが‥‥‥、ハクロは体格上馬車の中に入れないので外で寝てもらうことになるのだけれども、今は季節的に春先であり、昼間は暖かくても夜は少し冷える。
糸で衣服を重ねて防寒具を作れるようだけど、それでも風尾引きそうなので不安だ。
‥‥‥と言うわけで。
「ハクロの蜘蛛の部分の背中で俺も寝よう。こういう時は互にくっ付いていたほうが良いからね」
【リュー様が風邪をひきますよ!?】
ハクロの背中にスタンバった俺を見て、ハクロが淡淡と慌てる。
「まあいいじゃん。ハクロの全身が冷えずに互いの体温で温められるからね」
あと、ハクロの蜘蛛の部分の背中ってすごい気持ち良いんだよ。
硬そうに見えて、毛が生えているからさらさらふわふわ、感触がもにゅもにゅの柔らかさで、低反発ベッドのような居心地の良さがあるのだ。
‥‥‥今だからできるというのもあるけどね。
このまま成長すれば、俺の体も大きくなって寝にくいようになるだろう。
ならば、まだ小さい俺の身体で寝れるときは寝ようと密かに決めていたりするのである。
乗るのは良いけど、寝るのが出来なくなるからね。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ、良いではないかリュー様の言うとおりにすれば。儂はモンスターの言葉はわからぬが、表情から見ればハクロの嬢ちゃん、お主もまんざらではなかろう?」
【何を言っているんですかこの人がぁぁぁ!】
ポーッツ!!と湯気を出しているかのように顔を赤くして叫ぶハクロに、ポーンルドさんは愉快そうに笑いながらそう言った。
明日には寮に入れるので、御者であったポーンルドさんには帰ってもらうのだが‥‥‥下世話なおじいさんのような気がしてきた。
そしてピポよ、さっきから静かだなぁと思っていたらいつの間にお前そこで寝ているの?
【ピキ~‥‥‥スヤァ】
どうやらポケットの中がお気に召した模様。
とりあえず、今日はもう考えないで寝たほうが良さそうである。
一応、宿近くの空き地‥‥‥公共の駐車場とでも呼べる場所荷馬車を駐車して、その馬車の真横で俺達は寝ることにしたのであった。
街中とはいえ、100%安全ではないだろうし、寝ている隙に襲われないかって?
大丈夫だ、問題ない。
フラグではなく、周辺にきちんとハクロの糸を這って警戒を怠らないようにしているのだよ。
‥‥‥念のために、魔法を工夫して罠も仕掛け済み。
明日になって馬鹿たちが連れていたら笑い話だけど、流石にいないよね?
結局、ハクロの背中で一夜を過ごすのだが‥‥‥
低反発ベッドのような、やわらかい毛でふわふわとした触り心地。
ある意味究極の寝床でもあるかもね。移動できるし、話し相手にも‥‥‥
【従魔の扱い方を間違っていませんかね?】
「人によって扱いは違うだろうし、うちはうち、よそはよそだ」
【言い回し方雑ッピキー】